悲しみに、こんにちは|動画配信情報・感想・評価・解説

悲しみに、こんにちは
2017年製作/100分/スペイン 予告動画を検索
父と母とバルセロナで暮らしていたフリダだったが、父と母ともに難病でこの世を去ってしまう。寄る辺のなかったフリダに声をかけてくれたのが、叔父のエステバと妻・マルガだ。都会育ちのフリダは、彼らが暮らす田舎の自給自足の生活に戸惑うことばかりだったが、家族のように迎えいれてくれるエステバたちによって、少しずつフリダの心も開いていくのだった。

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キャスト・スタッフ

監督
脚本
原作
-
出演
音楽
製作

「悲しみに、こんにちは」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「悲しみに、こんにちは」は2018年の2月11日に劇場公開されている、カルラ・シモン監督によるヒューマンドラマです。

1986年生まれでスペイン・バルセロナ出身の新進気鋭の映画作家が、本作品で鮮烈な監督デビューを果たしています。

ロンドンの映画学校へ留学して創作を学んだ後に、自身の幼い頃の体験をもとにしてオリジナルのシナリオを書き上げました。

第67回のベルリン国際映画祭では新人監督賞に輝き、スペイン映画芸術アカデミーからもゴヤ賞を授与された作品です。

1993年の夏を迎えたカタルーニャ地方を舞台にして、両親を失った6歳の少女の悲しみと成長に迫っていきます。

あらすじ

バルセロナで家族と暮らしていたフリダでしたが、間もなく父と母ともに難病に侵されてこの世を去ってしまいます。

母親のネウスが入院中は祖父母が面倒を見てくれていましたが、ふたりとも高齢なために何時までも甘えている訳にはいきません。

そんな寄る辺のなかったフリダに声を掛けて快く引き取ってくれたのは、叔父のエステバとその妻・マルガです。

ふたりは娘のアナと3人でバルセロナから遠く離れたカタルーニャにある田舎町で、自給自足の暮らしを送っていました。

都会育ちで甘やかされたフリダにとっては戸惑うことばかりでしたが、徐々に新しい土地での生活にも馴染んでいきます。

実の家族のように迎えいれてくれたエステバたちによって、頑なに閉ざされていたフリダの心も少しずつ開いていくのでした。

小さな身体に大いなる可能性を抱いた女優さん

過酷な運命にも明るさを失うことなく立ち向かっていくヒロイン、フリダを演じているのはライア・アルティガスです。

亡き父や母への未練を延々と語ることもなく、孤児としての恵まれない境遇を必要以上に訴えかけてくることもありません。

子役とは思えないほどの繊細な演技力と、小さな身体に秘められている生命力や強靭な意志を宿した瞳に引き込まれました。

寡黙ながらも心優しき叔父・エステバに扮している、ダヒド・ヴェルダグエルもしっかりと存在感を発揮しています。

多発性硬化症の若者がトライアスロンへ挑む、マルセル・バレーナ監督「100メートル」での熱演が記憶に新しいです。

本作でも気難しい姪っ子に対して真正面から向き合っていき、実の娘・アナと分け隔てなく愛情を注ぐ度量の大きな父に成りきっていました。

ありのままに生きる

バルセロナで生まれ育ったフリダにとっては、見るもの触れるもの全てが初めての体験なのは当然のことですね。

四六時中停電に見舞われたり地中海性気候ならではの厳しい暑さに悩まされたりと、決して快適な暮らしとは言えません。

その一方では物質的に過剰供給気味な都会にはない、自給自足の生活ならではの素朴な楽しみや喜びがあります。

自分たちで手塩にかけて育てた野菜や小麦をふんだんに使用して作る、テーブルに並んだ料理の数々が素敵です。

お隣の気さくな酪農家からいつもお裾分けしてもらっている、産みたての卵も実に健康的で美味しそうでした。

都会であれ田舎であれ自分の居場所を見つけることが何よりもの幸せだと、噛み締めることが出来るでしょう。

美しく歴史ある町

ストーリーの舞台に設定されているスペイン東部・カタルーニャ地方の、緑色豊かな風景や歴史ある街並みが美しいです。

フリダがお世話になる叔父さんたちが住んでいる家の近くには、マリア像がひっそりと佇んでいて神秘的でした。

今は亡き母親が大好きだった銘柄のタバコをフリダがお供えするシーンには、日本のお地蔵さまを思い浮かべてしまいますね。

カタルーニャ語と呼ばれている独自の言語や、地元の人たちの風習やその奥深い伝統にも触れることが出来ます。

町外れには紀元前にこの地を支配していたローマ帝国の所縁の遺跡や、8世紀に伝わったイスラム教の名残もあって面白いです。

この映画の時代設定は1993年になっているために、独立運動や共和国宣言はそれほど盛り上がっていません。

世界各国から注目を集めることになる20年ほど前の穏やかなカタルーニャへ、フリダを連れて出掛けてみませんか。

孤独を受け流す少女

若干6歳にして父親と母親との死別を経験して独りになったフリダでしたが、何処か冷めた眼差しを浮かべていました。

まだ思春期に突入する前の微妙に揺れ動いていく心と、独特な倦怠感が繊細なタッチから描き出されています。

叔母でもあり義理の母親となったマルガに、心を開くことが出来ずに反抗ばかりを繰り返してしまう様子がいじらしいです。

ひとつ屋根の下で暮らすこととなった従姉妹のアナにも、ちょとした意地悪をしてしまうところも憎めません。

叔父夫婦とアナとのあいだに4人目の家族としてすんなりと溶け込んでいけないフリダですが、もうひとつ気がかりなことを抱えています。

周りの白い目と戦う

近づき過ぎずることなく、離れ過ぎることのない程よい距離感を保ったカメラアングルからは、我が子の成長を見守っているようや親心が涌いていきます。

公園で遊んで見ず知らずの少女とも臆することなく直ぐに打ち解けていき、ふたりだけだ遊んでいる場面が微笑ましかったです。

はしゃぎ過ぎたフリダが膝を擦りむいて少し流血した途端に、和やかなムードはぶち壊しになってしまいます。

一緒に遊んでいた女の子の年若い母親が駆け寄ってきて、フリダに対して浴びせる心ない言葉には胸が痛みました。

個人の自由と他者への寛容性を尊重しているイメージが強い、スペイン社会の負の一面を垣間見てしまうはずです。

身体は健康でも心は寂しく

血液検査の結果は陰性でひとまず健康面の方は安心なフリダでしたが、まだまた叔母一家との距離感は埋まりません。

遂にはエステバとマルガが寝静まった真夜中過ぎに、突発的に家出を思いついてしまうシーンがビックリでした。

物置小屋から引っ張り出してきたリュックサックの中に詰め込むのは、缶詰めやペットボトルの水などの食料品ではありません。

バルセロナ時代から肌身離さずに持っているお気に入りのお人形を、そっと中に忍ばせる様子が可愛らしかったです。

オープニングショットで映し出されていた祖父母の家で引っ越しの荷物を段ボールに詰め込むシーンとの対比になっていますので、注意深く見比べてみてください。

決行の寸前にアナから投げ掛けられた思わぬひと言によって、フリダの家出騒ぎはひとまず落ち着いていきます。

こんな人におすすめ

全編を通して大人びた表情を崩すことのなかったフリダが、初めて年相応に感情を爆発させるクライマックスにはホロリとさせられます。

過去の悲しみから解き放たれた6歳の少女が踏み出していく小さな一歩を、多くの人が応援したくなるはずです。

手持ちのカメラで捉えた人物が背景へと溶け込んでいく映像には、ドキュメンタリーを思わせるようなものがありました。

両親を病気で亡くしたヒロインの目線ではなく、突如として新しい家族を養うことになった大人たちの方に感情移入してしまうかもしれません。

「死ぬまでにしたい10のこと」でお馴染みのイザベル・コイシェ監督や、「ソリチュード:孤独のかけら」のハイメ・ロサレス監督などカタロニア作家に興味ある方は是非ともご覧ください。

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