運び屋|動画配信情報・感想・評価・解説

運び屋
2018年製作/116分/アメリカ 予告動画を検索

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製作

「運び屋」をサクっと解説

ライター/東一葉

かなり雑食ではありますが、月に5〜6本は映画を観ています。ズンと心にのしかかってくるような作品が好きです。

作品概要

「運び屋」は、2004年の「ミリオンダラー・ベイビー」、2008年の「グラン・トリノ」に続くクリント・イーストウッド監督兼主演の作品だ。

すっかり歳を重ねたイーストウッドの魅力が詰まった今作で、大地のような大樹のような存在感を私たちに魅せつけてくる。

そして、最期に行き着く一人の男の哀愁が愛おしい。

引退をほのめかしていたイーストウッドがニューヨーク・タイムズの記事を原案に映画化を決めた今作は、犯罪映画ではあるが家族を題材にした素敵な作品だ。

あらすじ

デイリリーを育てる園芸家であったアール(クリント・イーストウッド)は園芸界では名の知れた存在だった。

しかしその一方で、家族との時間をおろそかにし、娘には10年以上も口を聞いてもらえない。

時代の流れでデイリリーを育てていた農園が倒産し、農地も自宅も差し押さえられてしまったアールは家族の元に帰ることもできずにいた。

そんな状況のアールはひょんなことから荷物運びの仕事を頼まれる。

トラックに荷物を載せ、長く伸びるハイウェイをひた走る。

それで手に入った報酬は驚くような額だった。

アールはその仕事を数回繰り返す中で自分が運んでいるのが麻薬であることを知る。

それでも、農場と自宅を取り戻したり、火事のせいで経営できないカフェを営む友人の為の資金作りでアールは麻薬の運び屋を辞めることができなくなっていた。

しかし、捜査の手がアールの運転する黒いトラックに伸びようとしている。

アールはこの「運び屋」業により、何を失い、何を得るのか。

クリント・イーストウッドの演技

主演のクリント・イーストウッドの魅力に尽きるのだが、腰が曲がって、顔も皺だらけ、歩き方も老人そのもののイーストウッドにダーティハリーの面影はない。

しかし残像がある。

そこがいい。

クリント・イーストウッド演じるアールがハイウェイをトラックで走りながら歌を口ずさむ。

チョコレートをかじりながら、ハンバーガーを食べながら。

麻薬を運んでいても、恐れるものなど何もないという貫禄。

麻薬を運んでいる最中に警察犬を連れた警察官に呼び止められたアールは即座に手に塗り薬を塗って、警察犬の鼻を撫でてその場を凌ぐことに成功する。

またアールを監視しているメキシコ人たちが職務質問された際には、自分の引越しの手伝いをしてもらうんだと言い、麻薬の入ったトランクからポップコーンの缶を取り出し、警察官に持たせる。

このように、警察官の目を誤魔化しながら麻薬の運搬に成功していく。

その中で、はじめは敵対していた監視役のメキシコ人にも慕われていく。

また麻薬取締官であるコリン・ベイツ(ブラッドリー・クーパー)の心も掴んでしまう。

その老齢者から放たれる重みのある言葉の数々がアールを取り巻く人の心を少しだけ開ける手伝いをする。

それは観客の心にまで響く言葉の数々だ。

クリント・イーストウッドの抜け感

老人から感じる孤独感と戦うクリント・イーストウッドがたまらない。

かといって強情に意地を張っている風ではなく、抜け感が可愛らしくみえる。

麻薬組織でアールの監視役をしているメキシコ人フリオ(イグリシオ・セリッチオ)に、アールは「ここをやめるべきだ」と言う。

「本当に好きな事を見つけて、それをやるべきだ。」とアドバイスをするが、フリオは耳を傾けようとはしない。

人生を楽しめと言われても、所詮は落ちぶれて麻薬の運び屋になったお気楽な老人の言葉だ。

それでも突き刺さるものがあるのは、好きな事を見つけることが難しい世知辛さが痛いほど分かるから。

そんな世知辛い事はともかく、胸に手を当ててごらんと言われているような気がするのだ。

考えるのではなく、感じてごらんと。

音楽

是非エンディングの音楽を最後まで聞いてほしい。

エンディング曲「Don’t let the old man in」の歌詞を一字一句聞き逃してはいけない。

この曲を手掛けたのは、アカデミー・オブ・カントリーミュージック賞を受賞したこともあるトビー・キースだ。

歌詞がすごい。

「老いを迎え入れるな もう少し生きたいから 老いに身をゆだねるな」

こんなにも老いについて語られた歌詞を他に聴いたことがない。

エンディングロールで流れる曲を最後まで聴いて、そして映画が完成することを初めて実感した映画でもあった。

一言一句聴いて、映画が、イーストウッドが伝えようとしたことを五感すべてをフル活用して感じてほしい。

犯罪映画

今作は魅力的な犯罪者が捕まるか捕まらないのかを楽しむ犯罪エンターテイメント映画である。

運ぶのは大量の麻薬であり、大罪である。

罪の意識があるのかないのか、何度となく繰り返されるアールのハイウェイのドライブシーンはあまりにも爽快でロードムービーを観ているようだ。

それでも罪は罪であり、最後にはしっかりと逮捕される。

そして逮捕されて、安心してしまった。

映画の終盤、組織を抜けられなくなっていた状況を観ると、早く辞めさせてあげてほしいと思ってしまったからだ。

本職の園芸も失い、家族からも突き放された行き場のない老人が犯罪に手を染めていく。

それが60代の初老でなく80代後半の老人なのだから労りの気持ちが芽生えてしまう。

そこに至ったのは自業自得なのだが、時代がアールがありのままで好きな事をしながら楽しむことを許さない。

結果として、犯罪に手を染めたのならば、アールの悪行をただの愚行であるとは思えないのだ。

アールが犯罪を犯さずに生きていけたような世界をきっと誰もが願っている。

家族の許し

今作が、犯罪映画であると同時に人間ドラマとしても楽しむことができるのは、家族との関係の再生というテーマがあるからだ。

アールは外面だけはよく、他人のため労力と財力を使うことを厭わない。

いつしか家族との間に修復不可能な亀裂が入ってしまったのは、当たり前の結果かもしれない。

自分の居場所を作りたくて稼ごうとしていのだが、病に倒れ末期と診断された妻からアールは最高の言葉をもらう。

「家族のところに戻るのにお金は必要じゃないのよ」と言われたアールは我に返ったようだった。

男としてロマンを求めてきて、もう失ったと思っていた居場所はずっと同じ場所にあって、遠ざけていたのは自分のほうだった事にやっと気がつくのだ。

それは遅くはないはずだ。

それに気が付かずに、居場所に戻れない人もいる。

妻との関係、娘との関係を修復できてすぐに逮捕されたアールは、お気楽に歌を歌いながら麻薬を運んでいるときよりもある意味では幸せそうに見える。

捕まってパトカーで搬送される姿からは、大事なものを持っている人間にしか出せない悲壮感が溢れていたからだ。

裁判シーンで娘やずっと味方をしてくれてきた孫娘がこれから罪を償おうとするアールの居場所であり続けてくれていることがこの映画の答えに近いものだと思う。

まとめ

彼の遺言なのではないかとこの作品を評する人が多い。

でも遺言としては私は認めない。

87歳にしてこの映画の主演監督を成し遂げたクリント・イーストウッド。

まだ撮ってもらいたいし、この次の姿を観たい。

長い映画人としての歴史を持つクリント・イーストウッドが主人公に投影されているような、そんな作品がもっとあってほしい。

彼の映画を初期の西部劇、ダーティハリー、そして晩年に続く主演兼監督作品。

数々の名作を観ていくのは、まさに1人の映画人の歴史であって、ある時から主人公の言葉とクリント・イーストウッド本人の言葉に境を感じない不思議な感覚に襲われる。

そんなクリント・イーストウッドだけを観る1週間を、過ごしてみるのもいいかもしれない。

みんなのレビュー

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  • 佐伯保
    2020/10/04

    90歳の家族から見放された老人が、ひょんな事から麻薬の運び屋をすることになって…。運び屋をする老人がとにかくマイペースで面白い。クリント・イーストウッドが年齢を重ねていい味を出している。家族との事、人生の事についても考えさせられる作品。

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