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キャスト・スタッフ
「レプリカズ」をサクっと解説
ライター/ジョセフ
作品概要
「レプリカズ」は2019年の5月17日に劇場公開されている、ジェフリー・ナックマノフ監督によるSFアドベンチャーです。
ディザスター・ムービーとして話題となった、「デイ・アフター・トゥモロー」の脚本家がメガホンを取っています。
宇宙からやって来た自立型ロボットが活躍する「トランスフォーマー」や、恐るべき二重スパイの正体に迫る「ソルト」など。
数多くの名監督とタッグを組んできた名うての映画プロデューサー、ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラが製作の総指揮を執りました。
数多くのヒット作に恵まれた人気俳優、キアヌ・リーヴスもスタッフのひとりとして製作陣に加わっています。
クローン人間に囲まれて暮らし続けるひとりの科学者と、彼の技術に目を付けた研究所との攻防を描いた作品です。
あらすじ
カリブ海に浮かぶアメリカ領・プエルトリコに造られた施設で、ウィリアム・フォスターは極秘の研究を続けていました。
人間の脳の中の意識をコンピューターに移し換える実験は、試行錯誤を繰り返してもなかなか成功までには至りません。
激務に追われていたウィリアムですが、珍しく長期休暇を取得できたために、家族を連れてピクニックに出掛けることにします。
妻のモナに長男・マット、長女のソフィーと末っ子のゾーイを加えて5人となった一向が向かったのは湖の畔です。
生憎の天気で視界は良くないためにウィリアムは咄嗟にハンドルを切り損ねて、車ごと湖の底に転落してしまいます。
ただひとり生き残ったウィリアムは4体の遺体となってしまった愛する家族を目の前にして、禁断の行為へと手を染めていくのでした。
生身の肉体を駆使した俳優たちの魅力
類いまれな才能に恵まれながらも不可解な一面も持ち合わせている主人公、ウィリアム・フォスターをキアヌ・リーヴスが演じていきます。
映画前半での頭脳明晰で落ち着いた佇まいから、後半パートにかけての倫理観を逸脱して暴走していく豹変ぶりは必見です。
目的のためには手段を選ぶことのないウィリアムの上司、ジョーンズ役を怪演しているジョン・オーティスもインパクトがありました。
家族との日常と平和を守り抜くためにクローン研究を続けるウィリアム、金と名誉のためにその研究成果を狙うジョーンズ。
ふたりの対極的なキャラクターがぶつかり合う対決シーンも用意されていて、それぞれの個性を存分に発揮して体現しています。
ウィリアムの協力者でありながら微妙な立場に立たされることになる、同僚のエド・ホイットルに扮しているトーマス・ミドルディッチも適役です。
作り物を愛する人たち
象牙の女性像に恋に落ちてしまったキプロス島の王・ピグマリオン、人造人間に裏切られる科学者・フランケンシュタイン。
古今東西の神話や物語を思い出してみると、自分が命を与えた存在を愛すことが出来るのかは長きに渡って答えのない問いになっています。
自宅の電化製品や職場に置いてある機械を、知らず知らずのうちに「好き」と「嫌い」に分類してしまったことはありませんか?
本作のウィリアムがクローンやロボットに愛そうと努力するのも、あながち異常な心理状態とは言えないのかもしれません。
映画の後半ではクローンと化して甦った妻が、自分自身の出生の秘密について気がついてしまう場面も用意されています。
人間同士だった頃は、すれ違いばかりだった夫婦が、人間とクローンに分かれた後に初めてお互いと向き合っていくのが何とも皮肉です。
家族の愛を再生
突然の交通事故によって主人公の心の奥底に生じた喪失感を、果たしてクローン人間との共同生活によって埋められるかが大きなテーマになっています。
事故に遭って亡くなったウィリアムの妻子が4人いるのに対して、クローン転送用のポットは3台しかありません。
4人の死者のうちの誰かひとりを諦めることを迫られた際に、くじ引きを行ってあっさりと1番下のゾーイを諦めてしまうウィリアムの冷淡さには呆気にとられてしまいました。
無事に完成した3体の家族クローンのメモリーを改ざんして、ゾーイに関するこれまでの思い出の一切を消却していく過程が面白かったです。
夫婦や家族同士の繋がりは遺伝子や細胞ではなく、共に過ごした時間と記憶によって保たれていることを痛感させられました。
パソコンやスマートフォンの再インストールのように、人間の心まで初期化できるのか注目しながら鑑賞してみて下さい。
非日常の研究機関と日常の家庭を行き来する
無機質な研究施設の内部で黙々と作業に励む、ウィリアム・フォスターの無表情な横顔が映し出されていきます。
慌ただしい毎日の中でも家庭で3人の子供たちと過ごす時間が、ウィリアムにとっては何よりもの心のオアシスとなっていることが伝わってきました。
その一方では自宅に職場の同僚を招いてまで仕事を持ち込んでくる夫への、不満を募らせていく妻・モナの鬱屈とした表情も印象深かったです。
夫婦間でのコミュニケーション不足と、勤務時間中は精密機械顔負けながらも、プライベートでは大雑把なウィリアムの性格が思わぬ悲劇を巻き起こしてしまいます。
冷血なボディに熱い血潮を注ぎ込む
予想外の事故によって変わり果てた妻と3人の子供たちの遺体を目の当たりにしながらも、ウィリアムは慌てふためくことはありません。
世間一般の常識や道徳を飛び越えて家族のクローン製造を即決する、ウィリアムの冷静さにはゾッとしてしまいました。
妻子の不在を疑われないように職場や学校への連絡、果てはSNSの発信さえ本人に成り代わって対応するほどの臨機応変さがあります。
誰しもが本人の姿形よりも、メールの文面やソーシャルメディアのコメント内容に気をとられている今の時代らしいです。
すっかり周りの人たちを信用させたウィリアムでしたが、ひとりだけ疑惑の眼差しを向ける厄介な上司がいます。
狂気の研究の果てに泥仕合
政府の極秘研究プロジェクトのリーダーにしてウィリアムの前に敵として立ちはだかる、ジョーンズの貪欲さには圧倒されました。
その計算高さとマッド・サイエンティストぶりは、かつての部下であるウィリアムにも決して負けてはいません。
最先端技術を軍事産業に導入しようとするジョーンズには、現実の世界各国の指導者への痛烈な皮肉が込められています。
遂には自分自身の記憶や人格でさえコンピューターに記録してしまうウィリアムには、鬼気迫るものがありました。
本物のウィリアム対本物のジョーンズ、クローン・ウィリアム対クローン・ジョーンズで繰り広げられるバトル・ロワイアルが圧巻です。
こんな人におすすめ
科学技術の進歩が決して踏み込んではいけない領域について考えさせられる、衝撃的なクライマックスでした。
死んだ人間の脳をデータベース化して移植するという本作品の設定は、まだまだB級映画の題材であり想像の域を出ません。
その一方でクローン技術は既に現実のものとなっていて、実用化に当たっては大きな議論が巻き起こっています。
テクノロジーの発達と倫理観のせめぎ合いというテーマでは、まさにタイムリーな作品に仕上がっていました。
医療開発関連の企業に務めている方や、神経科学の研究に携わっている皆さんは是非この1本をご覧になって下さい。
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