愛しのアイリーン|動画配信情報・感想・評価・解説

愛しのアイリーン
2018年製作/137分/日本 予告動画を検索
42歳になる岩男は女性との交際経験がなかった。失恋、家庭の諍い、全てが嫌になった岩男は、何もかもを放り出して行方を眩ませる。国際結婚を斡旋するサービスに登録し、フィリピンへ向かった岩男は、18歳のアイリーンを妻に迎える。そして花嫁を連れて帰国する岩男だったが…。

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キャスト・スタッフ

監督
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原作
出演
音楽
製作

「愛しのアイリーン」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「愛しのアイリーン」は、2018年の9月14日に劇場公開された吉田圭輔監督によるサスペンスドラマです。

元になっているのは新井英樹が1995年から1996年にかけて「ビッグコミックスピリッツ」に連載されていて、 太田出版から全2巻の新装版で刊行されたマンガです。

「さんかく」などのほのぼのとしたラブストーリーから「ヒメアノール」などの驚愕のサイコスリラーまで、 幅広いジャンルを手掛ける鬼才がメガホンを取りました。

伊勢谷友介から河合青葉までの実力派俳優に、田中要次や品川徹等ベテラン勢も顔ぶれ豊かです。

少子高齢化や地域格差など今の時代の農村における切実な問題が、ブラックユーモアたっぷりとしたタッチから描かれています。

あらすじ

田舎のパチンコ店で働いている宍戸岩男は、42歳になりますが異性とのお付き合いの経験がありません。

職場での失恋、母親・ツルとの些細な諍い、認知症の父親。

全てが嫌になった岩男は、ある日突然に何もかもを放り出して行方を眩ませてしまいました。

なけなしの貯金を叩いて、国際結婚を斡旋する会社に登録してフィリピンへのお見合いツアーへと繰り出していきます。

岩男が選んだ相手は、貧しい家族を抱える若干18歳のアイリーン・ゴンザレスです。

花嫁を伴って実家に戻ると、父は既に他界していて葬儀が行われています。

昔気質な参列者たちは、異国の女性に生理的な嫌悪感を隠すことができません。

更には猟銃を構えたツルの出現によって、岩男の波乱に満ちた新婚生活は幕を開けていくのでした。

安田顕と木野花が巻き起こす嫁姑戦争

母との常軌を逸した関係を貫く息子を、 安田顕が迫真の演技で表現していきます。

人気演劇ユニット「TEAM NACS」のメンバーとして活躍しつつ、2016年には「俳優 亀岡拓次」で映画主演を果たしました。

息子を精神的にコントロールしていく母親に扮した、 木野花の怪演は見逃せません。

1948年生まれの青森県出身で1974年には劇団「青い鳥」を旗揚げしつつ、数多くの日本映画やテレビドラマで母親役を演じているのが有名です。

積み上げてきた良妻賢母のイメージをひっくり返してしまうほどの、 異様な鬼姑ぶりには圧倒されます。

雪が降りしきる中を猟銃を握りしめて、 ターゲットを何処までも追いつめていく表情には鬼気迫るものがありました。

フィリピンからやって来たシンデレラガールに注目

全編を通して鬱屈としたムードと寒々しい雪景色が覆い尽くす中でも、アイリーン・ゴンザレスの純真無垢さが僅かな救いを感じます。

演じているのはフィリピンの映画で活躍している若手の女優さんナッツ・シトイで、雪山の中で義母役の木野花を背負って歩く体当たりの演技は必見です。

吉田監督がフィリピンにまで足を運んで現地で即興のオーディションを開催して、数多くの候補者の中からヒロインの座を勝ち取りました。

この映画の中で描かれている「花嫁探しツアー」と、ヒロインを探すために行われたオーディションに不思議な共通点を感じてしまうのは意地悪な見方なのでしょうか。

日本映画への進出にも意欲を示していて、ドラマや舞台でもその姿が見られるようになるかもしれません。

あなたとは違う人生をスクリーンの中で体験

主人公・宍戸岩男とその母のツルだけでなく、この物語に登場するキャラクターの数多くが自分自身で破滅型の道のりへと転落していきます。

行きずりの相手との関係を重ねていくシングルマザー、アイリーンをフィリピンパブに送り込むことを目論む反社会的勢力の構成員。

アイリーンと同じく遠く離れた故郷に置いてきた家族を養うのためにフィリピンパブで働く同僚の女性。

世の中の真っ当な生き方からはみ出した人たちを描くことにかけては、吉田恵輔の右に出る者はいません。

自分勝手で欲望の赴くままに突き進んでいく、破天荒ながらも何処か哀し気なその後ろ姿が心に残りました。

映画を見ているうちに、自分とは全く違った他の誰かの人生を疑似体験できるはずです。

ガラスの家に住む母と子

40才を過ぎた息子・岩男に対する、ツルの溺愛ぶりにはあきれ果ててしまいました。

ツルの夫であり岩男にとっては父親に当たる源造も、セリフこそ少ないものの不吉な物語の幕開けに一役買っています。

3人がひとつ屋根の下で暮らしている田舎の一軒家が、ガラス戸の仕切りで区切られているのが印象深かったです。

真夜中の秘密ごとでさえすっかり筒抜けで、親子の間にはプライバシーも何もあったものではありません。

そんな息苦しさに違和感を抱きながらも、実家を飛び出すことが出来ない岩男の優柔不断さが何ともじれったいです。

素性の知れない年若い花嫁・アイリーンへの、 執拗ないびりのシーンには胸が痛みました。

愛情と差別的な感情が入り混じった母親の複雑な気持ちには、誰しもが心の奥底に抱いている闇なのかもしれません。

田舎ならではの閉塞感と結束

鹿之谷村という思い付きでつけられたような名前の田舎町は、日本全国を隈なく探せば2~3箇所くらいは見つかりそうです。

地元にはこれといった観光スポットも歴史的な名所もないようで、観光客の姿も見当たりません。

岩男が黙々と働いているパチンコ屋の店内や座席からは、諦めにも似た気だるい雰囲気も伝わってきました。

町の外れにはフィリピンパブが1軒だけポツンと佇んでいて、その一角だけが夜になるとネオンの明りに包まれていき異次元への出入口のような気がしてます。

赤の他人の結婚を異様なまでに心配してお見合い話まで持ち込んでくるお節介焼きの知人ばかりなのは、地方ならではのお隣さん同士の強い結び付きがあるからなのでしょう。

よそ者への排他的な感情にはストーリーの舞台となるこの場所だけでなく、今の社会全体に漂っている閉塞感にも繋がるものがありました。

結婚までもが取引されるブラックマーケット

元来の奥手な性格とコミュニケーション能力の欠如からか、岩男が渇望している「愛しの人」は一向に現れません。

遂には家族や仕事を放り出したまま、なけなしの貯金を全額下ろして海の向こうへと渡ってしまう脈絡の無さには驚かされました。

バブル当時のあの熱狂を実体験した方であれば、1990年代前後に世界中からひんしゅくを買ったを日本人の節操のなさを思い出してしまうはずです。

不動産から美術品、更には結婚相手までもを経済力に物を言わせて手に入れてしまう傲慢さについて考えさせられます。

18歳にして値段をつけられて、本人の意志とは裏腹に異国の地へと嫁がされていく少女たちの姿が痛切です。

本作品のヒロイン・アイリーンが病気の父親と貧しい兄弟姉妹を抱えていたという設定も、何とも後味が悪いです。

こんな人におすすめ

極限状況下で夫婦愛と親子愛が芽生えてお互いへのわだかまりが溶けていく、深沢七郎の「楢山節考」を彷彿とさせるような雪と山の大自然に包まれたクライマックスが圧巻でした。

家族や配偶者などの身近な人との関係性について思い悩んでいる方は、是非ともこの1本を鑑賞して下さい。

2011年の東日本大震災以降やたらと使われるようになった「絆」という押しつけがましい言葉よりも、あえて繋がらない自由を選択することや緩やかな繋がりについても考えさせられるはずです。

他者とのコミュニケーションや職場や学校での人間関係の行き詰まりを改善するための、意外なキーワードも隠されています。

幅広い世代の学生さんや社会人にお勧めな映画です。

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