しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス|動画配信情報・感想・評価・解説

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス
2016年製作/116分/カナダ・アイルランド合作 予告動画を検索

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音楽
製作

「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」をサクっと解説

ライター/東一葉

かなり雑食ではありますが、月に5〜6本は映画を観ています。ズンと心にのしかかってくるような作品が好きです。

作品概要

実在した芸術家をモデルにした映画を何本も観てきた。

20年間揺るぎなかった「バスキア」の順位を超えてしまったかもしれない。

カナダの海のある田舎町を舞台に行き場のない女と男が本当の夫婦になる姿を描いた作品だ。

カナダを代表する画家となる妻役を演じたのはウッディアレン監督の「ブルージャスミン」での演技が高い評価を得たサリー・ホーキンス。

気難しい夫は独自の観点を持ち若き頃から実力派として高い評価を得ながらも、出演作にこだわりを感じさせるイーサン・ホークが演じた。

静かな風景に鮮やかな絵が浮かび上がるように2人の人生に色彩が帯びていく。

そんなラブストーリーを魅せてくれた。

あらすじ

若年性リウマチを患い、差別を受けながらも絵を描くことだけを生きがいに生きているモード(サリー・ホーキンス)は叔母の家で肩身の狭い思いをしながら生活していた。

モードは行きつけの商店で魚の行商をしているエベレット(イーサン・ホーク)が家政婦を探していることを知る。

自立のためその求人の紙切れを片手にエベレットを訪ねるが、足を引きずり手も不自由なモードは追い返されてしまう。

しかし、エベレットは同僚から応募してきた家政婦を雇うよう助言を受け、モードを雇うことにする。

偏屈で寂しさも思いやりも素直に伝えられないエベレットとモードは、日々ぶつかってばかりだった。

絵を描くことにすぐ没頭してしまうモードが、自分を支えようとしていることに気が付きながら孤独の殻から抜け出せないエベレット。

それでも歩みよろうと愛の絵を描き続けるモードの想い。

美しすぎるラブストーリーの先に2人の美しすぎる心が見えてくる。

モードの描く世界

緑の葉と赤い葉をつけた木が隣り合って、その前の草花咲き乱れる草原でこちらを見つめる猫。

部屋の壁にはチューリップと鳥の絵が描かれている。

窓にも、ドアにも、鏡にも、4メートル四方の小さな夫婦の家はモードの世界そのものだ。

何に掻き立てられて絵を描くのかと友人に尋ねられたモードは、「窓が好き。鳥が横切ったり、蜂が来たり。毎日違うわ。命が溢れてる。命の輝きがひとつのフレームに、そこにあるの。」と答える。

モードが愛おしかったのは狡さのない命。

だからこそ、モードの描く世界はどこまでも無垢なのだ。

鳥も蜂も花も無限な愛おしさの象徴だから、それらに美しい色彩をまとわせて尊んでいたのだろう。

幼少期からリウマチ関節炎に悩まされていたモードは障害者への偏見が強かった時代背景もあり、不遇な子供時代を送っていた。

それでも、モードが人の優しさに気づくことができるのは自然との対話があったから。

その世界が彼女の絵そのものなのだ。

イーサン・ホークにしか演じられないエベレット

人付き合いの苦手な男、愛し方を知らない男、愛され方も知らない男。

それでも、垣間見える優しさがある。

こんな男を演じられるのはイーサン・ホークしかいないだろう。

「家事をやらなきゃ追い出すぞ」と言いながらも、妻のことを尊敬し、妻の痛みを感じることができる夫。

孤児院で育ったエベレットは素直に優しさや感謝を表現できない。

それでも、モードは彼の優しさに気がついている。

モードは兄を欲深い人間だと言う。

しかし、エベレットの事を「大事な事を分かっている人」と言う。

モードとエベレットが2人の距離を縮めたり遠ざけたりする2階での場面がなんとも言えない。

その時のイーサン・ホーク演じる夫の息遣いが切なくてたまらない。

私の知る限り、エベレット役ができるのはイーサン・ホークしかいないのではないかと思うほどだ。

この映画は彼の魅力と実力を堪能できる作品となっている。

はじめから分かっていた2人

お互いにお互いを必要としていることに初めから気がついていたように思える。

男からしたらモードの気の強いながらの愚痴っぽさには辟易とするだろうし、女からしたらエベレットの攻撃的な意地の悪さは耐え難い。

それでも2人が離れなかったのは、お互いの優しさに気がついていたというよりもお互いが必要で一緒にいれば幸せだということに気がついていたのだと思える。

一緒に暮らし始めた当初はモードはエベレットの意地悪さにうんざりしていた。

でも、暮らしの中で文句を言いながらも創作活動の為に網戸をつけてくれたり、未完成の絵を無理矢理買おうとするお客から守ってくれたり、エベレットの凍りついた心が溶けていくさまが自身への愛情に転化していくのを身を持って感じていく。

モードも字の書けないエベレットに変わって、魚売りの伝票を書くと言い出す。

そして自分がこの家の主人だと言い張るエベレットの前に立とうとは決してしない。

それは彼がいかに孤独に生きてきたかを知っているから。

それは初めから分かっていた事柄のように、2人が出会ったのは偶然のようでいて必然のように感じる。

家出

モードの描く絵は次第に話題になり、家にテレビの取材が入ったり、絵を自宅で販売していると聞きつけた人々が連日のようにやってくる。

それにより落ち着かない生活を余儀なくされたエベレットは機嫌を損ね、酷い言葉をモードに投げつける。

車を降り、近所の家に身を寄せる。

家政婦としてモードが働き始めてから初めて別々に夜を過ごした2人は寂しそうだ。

そしてモードを迎えに行ったエベレットはやっと本心を言うのだ。

「俺から去らないでくれ」って、ずっと思っていた気持ちをやっとやっと言ってくれた。

思わず、「やっと言えたね。良かったね、エベレット」と思ってしまった。

モードはこの頃にはもう分かっていたはずだ。

エベレットにとって自分が必要な存在であることを。

誰かの存在を感じながら過ごす日々は煩わしこともあっても、それでも1人気ままに過ごす寂しさよりもずっと豊かだと思わせてくれる。

その象徴がエベレットが思いを伝えられたこの場面に凝縮している。

ベンチに2人座って、エベレットの言葉に「私はあなたと暮らすのが幸せ」と返したモード。

やっと心が言葉という音になってに響いた瞬間だ。

思いやり

2人には思いやりが溢れている。

絵を描く事に没頭するモードがふと窓の外を見ると、そこには家の周りを片付けたり廃品の整理をしているエベレットの姿がある。

その輪郭を窓越しに指でなぞってみるモード。

モードへの愛情を認められずに彼女を直視できないエベレット。

その距離感の間にある思いやりがたまらなくいじらしい。

しかも若くない中年の愛だから、なおさら厄介で可愛らしくもある。

結婚式の日、家の2階で2人がダンスをする場面がある。

一組のソックスに自分たちを例えて抱き合いながら踊っているシーンなのだが、モードがエベレットの足につま先立ちして踊っているのだ。

こんな素敵なダンスシーン、他の映画では観れない。

信頼と必要性と思いやりと距離感と。夫婦に大切なものをこの夫婦はしっかり持っているのだ。

まとめ

モードを蔑ろにしていた叔母さんが、モードに「一族で幸せになったのはあなただけだ」と言う。

偏屈で人付き合いが下手な旦那と一緒になって断熱材もない隙間風が入るような小さな小屋で贅沢もせずに暮らしているモードに向かって言った。

誰かを想って、想っている相手と暮らして、大好きな絵を描いている。

幸せが贅沢な暮らしなどではない事はわかっているが、欲が出てしまうものだ。

そんな欲のない、働くことを厭わない、そんな人生がいかに美しいかを認識させてくれる。

なかなか出会うことのできない大人の恋愛映画の傑作だと思う。

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