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キャスト・スタッフ
「ザ・エージェント」をサクっと解説
ライター/ジョセフ
作品概要
「ザ・エージェント」はキャメロン・クロウ監督によって、1997年の5月17日に劇場公開されています。
青春ストーリーから業界ものまで幅広く取り上げている、実力派の映画作家がメガホンを取りました。
1996年度のアカデミー賞では作品賞から編集賞まで5部門にノミネートされた他、ヨーロピアン・フィルム・アカデミーからもインターナショナル作品賞が贈られています。
遣り手のスポーツ・エージェントが業界全体のシステムを根本的に改革するために、孤軍奮闘していく社会派ドラマです。
あらすじ
ジェリー・マグワイアは全米一のスポーツ・エージェント会社「SMI」の中でも、名うての代理人として活躍していました。
現役選手とエージェントとの片寄ったパワーバランスを改善するために、ある時にマスコミに向けて提出したのは1冊に纏めた意見書です。
クライアントの数を減らすこと、膨れ上がっていく一方な契約金の額を見直すこと、怪我をした選手や引退後の生活にまで責任を持つこと。
一躍時の人となったジェリーでしたが、意見書の内容が自社の方針に逆らったものと上層部からは判断されて解雇されてしまいます。
取り巻き連中も手のひらを返したかのように同僚たちは冷たくなってしまい、彼の呼び掛けに賛同してくれたのは経理部門で働くドロシー・ボイドしかいません。
小さなエージェント会社を立ち上げて再出発したふたりの行く手には、数多くの試練が待ち受けているのでした。
名エージェントを熱演
業界でも評判のエージェントに相応しく、トム・クルーズがジェリー・マグワイア役を自信たっぷりと演じていきます。
生き馬の目を抜くこの世界でも最後の最後まで自分流を守り抜き、義理人情にも厚い人柄が魅力あふれていました。
ジェリーとは厚い絆で結ばれているロッド・ティドウェルの役には、キューバ・グッディング・Jr.が扮しています。
今作での華麗なアメフトシーンとフィールド外での人間ドラマによって、1996年度アカデミー賞助演男優賞を獲得しているのも納得ですね。
ジェリーにとっては単なる同僚からビジネスパートナーとなっていくヒロイン、ドロシー・ボイド役はレニー・ゼルウィガーです。
初登場シーンこそ子育てと仕事に追われている所帯染みた風貌でしたが、中盤以降は見違えるように変貌を遂げていました。
表面的にはシングルマザーとしての良識を保ちながらも、内面的にひとりの女性として揺れ動く模様を巧みに表現しています。
スポーツ界に潜む怪物たち
一見すると華やかなスポーツ界の舞台裏に隠されている、知られざる金満主義についてスポットライトを当てていきます。
映画冒頭でジェリーの勤め先として登場するのが、33人のエージェントで1600人ものプロスポーツ選手を管理するSMIです。
ひとりで70人もの担当して1日200本の電話連絡をこなすという、ジェリーのエネルギッシュな働きぶりには驚かされますね。
利益至上主義を掲げて目的のためには手段を選ぶことなく、がんじがらめな契約によって選手やその家族を破滅に追い込んでしまうことも珍しくありません。
本来でえればエージェントサイドであるジェリーが、選手ファーストの立場へと心変わりをしていくきっかけに注目して下さい。
大手エージェント会社に見切りをつけて独立をすることとなったジェリーですが、その船出は実に前途多難です。
次から次へと降りかかってくる妨害工作や誹謗中傷には、大手アイドル事務所から独立したあの3人組と重ね合わせてしまうかもしれません。
仄かなジェリーのロマンス
出張先から本社へと戻る飛行機の中でジェリーが偶然にも鉢合わせしたのが、普段は社内で言葉を交わすことがないシングルマザーのドロシー・ボイドです。
婚約者のアヴェリー・ビショップとの結婚を間近に控えながらも、少しずつドロシーにも想いを寄せていきます。
スタイル抜群で高級ブランドが似合い花があるアヴェリーと比べてみると、ドロシーはどちらかと言えば引っ込み思案なタイプです。
全てを損得勘定で合理的に判断するアヴェリー、社会的な成功や名声よりも掛け替えのないものを持っているドロシー。
まるっきり正反対なふたりの女性に翻弄されていくジェリーが、果たしてどちらを選択するのか見届けて下さい。
一流から小さな流れへと
13歳にしてNBAプレーヤー候補となったインディアナの少年、裁判で女性がボクシングに参加する権利を勝ち取ったシアトルの16歳。
オープニングではアメリカ国内で10代の頃から頭角を現し始めている、期待のスポーツ選手たちが紹介されていきます。
「彼らはフライパンの中のポップコーンだ。」という、主人公ジェリー・マグワイアのセリフが胸にグッと迫りました。
思うままに弾ける者もいれば萎んで消え失せていく者もいて、それぞれの明暗がくっきりと分かれていくのがほろ苦かったです。
出来る限り多くのアスリートの才能を開花させるために、「SMI」ことスポーツ・マネージメント・インターナショナルに別れを告げるジェリーが勇ましく映ります。
彼の無謀とも言えるようなチャレンジにも賛同してくれたる、ドロシー・ボイドのような存在もいて心強いです。
本当に欲しかったもの
35歳にして無職の身で世間に放り出されることとなったジェリーですが、アスリートとのより良好的な関係を築き上げていくための取り組みが斬新でした。
積み上げてきたキャリアと約束された将来を捨ててまで、ジェリーが欲しかったものについて考えさせられます。
アメフト・リーグの中でも中堅どころでしかない、ロッド・ティドウェルのために、奔走するジェリーがストイックです。
かつては共に戦っていたボブ・シュガーに、花形選手のフランク・クッシュマンの契約を横取りされてもへこたれることはありません。
契約書やスポンサーのランクだけが全てだったジェリーが、人間的に変わっていく瞬間を鮮やかに捉えていました。
孤独に心が折れそうな時にはこの言葉を
せっかく楽しみにしていた新婚生活も上手くいかずに、ロッドとの友情にもヒビが入っていくジェリーの後ろ姿が寂しげでした。
孤独感に打ちのめされそうになるジェリーの心を辛うじて支えていたのが、師匠であるディッキー・フォックスの言葉です。
「成功への鍵は人間同士の関係である」という彼のアドバイスは、人生における様々なシチュエーションで役立ちます。
もう一度初心へと帰っていくジェリーの謙虚さと、彼の人柄に惹かれてバラバラになっていた仲間たちが集まってくる再会シーンが感動的です。
こんな人におすすめ
プレーオフ出場をかけた大一番で、フィールドを縦横無尽に駆け回っていくロッドの姿は涙なしには見ることは出来ません。
試合後のヒーローインタビューで興奮の余りに打ち明けた、最高のエージェントへの感謝の気持ちにはホロリとさせられました。
新しい仕事と家族を手に入れたジェリーが、休日に少年野球の試合を見に行くシーンで本作品は幕を閉じていきます。
性懲りもなくメジャーリーガーの卵を探しているジェリーと、彼を優しく見守っている新妻の姿が微笑ましかったです。
身体を動かすことやスポーツ観戦が好きな皆さんばかりではなく、起業を考えている方たちも是非ともこの1本をご覧になってください。
みんなのレビュー
「ザ・エージェント」を
布教しちゃってください!
トム・クルーズ主演のスポーツエージェントの世界を描いたヒューマンドラマ。良心に従って行動することの大切さ・難しさを考えさせてくれる映画です。見事オスカーに輝いたキューバ・グッディング・Jr の演技も必見。