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キャスト・スタッフ
「シグナル」をサクっと解説
ライター/ジョセフ
作品概要
「シグナル」はウイリアム・ユーバンク監督によって、2015年の5月15日に劇場公開されているSFアドベンチャーです。
監督の兄弟に当たるカーライル・ユーバンクと脚本家のデビッド・フリガリオが、共同執筆でオリジナルシナリオを書き下ろしました。
国際宇宙ステーションに取り残された飛行士が決死の帰還を試みる「地球、最後の男」や、落ちぶれた用心棒が身の潔白を証明するために奔走していく「ライジング・サン 裏切りの代償」など。
映像クリエイターから撮影監督まで幅広い創作活動を続けている、1982年生まれでロサンゼルスの出身の映画作家が長編第2弾を発表しました。
2014年1月開催のサンダンス映画祭でワールドプレミア上映された後に、日本でもファントム・フィルム社の配給で単館上映されています。
お気楽なキャンパスライフを送っていた大学生3人組が、ある日突然に未知の世界へと迷いこんでいく衝撃作です。
あらすじ
ニック、ジョナ、ヘイリーの3人はマサチューセッツ州ケンブリッジに本部を置く私立工科大学に通っていました。
ヘイリーのカリフォルニア工科大学への編入が決まったために、ニックとジョナは彼女を車で送り届けることにします。
道中ではもうひとつの目的があり、以前から大学のサーバーに不正アクセスしていた「ノーマッド」と接触することです。
IPアドレスからネバダ州にノーマッドの拠点があることを突き止めた一向は、廃虚のような建造物に差し掛かります。
その場で鉢合わせをした防護服をフル装備した一団によって拉致されてしまい、連れていかれた先は物々しい警備システムに囲まれた施設です。
ひとりだけ隔離されたニックは自身の身体の異変に気づきながらも、他のふたりと合流して脱出を目指すのでした。
未知の領域に挑む俳優たち
主人公のニックを演じているのは1989年生まれでオーストラリア出身の俳優さん、ブレントン・スウェイツです。
映画の序盤でこそ松葉づえをついて不自由な思いをさせられていますが、後半以降にはあっと驚くほどの大変身が用意されています。
美しさの中にも打たれ強さを秘めたヒロイン、ヘイリー役に扮しているオリヴィア・クックも魅力あふれる女優でした。
黒ぶちのメガネをかけてチェックのシャツを身に纏った、如何にもコンピューター・マニアのジョナ役にはボー・ナップがぴったりです。
3人の行く手に大きな壁として立ちはだかる、デイモンの役のローレンス・フィッシュバーンが威圧感たっぷりです。
出生作となった「マトリックス」シリーズの、伝説のハッカー・モーフィアスの得体の知れなさを彷彿とさせるものがあります。
男2女1の旅の行方
かつては陸上選手として華々しい成績を収めたニックですが、いま現在では身体的なハンディキャップを抱えています。
自暴自棄になっていくニックに対しても臆することなく向き合いつつ、真正面から厳しい言葉をぶつけるヘイリーが清々しかったです。
時には険悪なムードに陥ってしまうふたりの間に、お調子者のジョナが加わることによって男女3人でも程よいバランスを保っていました。
マサチューセッツからカリフォルニアへと向かう車内ではヘイリーがハンドルを握って、ニックは助手席に後部座席にはジョナが乗り込みます。
車窓を流れていく長閑な風景や街並みと共に、お互いの将来について熱く語り合う若者たちが微笑ましかったです。
ガソリンスタンドやサービスエリアでの休憩時間に、少しずつ縮まっていくニックとヘイリーの距離感に注目して下さい。
何時までも続くかに思えていたふたりの青年とひとりの女性の心地よい関係にも、やがては終わりが訪れるようで切なくなりますね。
平凡な大学生たちが一線を越える時
面白半分から始めたハッキング犯人捜索によって、取り返しのつかない事態へと巻き込まれてしまう展開にはIT時代が反映されていました。
「学びのテーマパーク」とも讃えられているマサチューセッツ工科大学への入学を果たしながらも、その好奇心が正しい方向へ向かわなかったのが悔やまれます。
謎めいたハッカーが使うユーザーネーム「ノーマッド」と、その名前が意味するものの奥深さにも引き込まれていくはずです。
大胆不敵な発想と鋭い洞察力が火花を散らしてぶつかり合う頭脳戦の中にも、言葉遊びやユーモアも含まれていました。
政府による密約や人体実験をはじめとする、過去にも幾度となく取り沙汰されてきた疑惑が掘り返されていきます。
研究所内部だけでは止まることなく、町全体を覆いつくすほどの巨大な極秘実験エリアには驚かされることでしょう。
日常から非日常へと投げ込まれる
UFOキャッチャーに興じる男の子と、景品を除き込む主人公・ニックとのほのぼのとしたやり取りがオープニングを飾ります。
陸上アスリートとしての前途有望な道のりを絶たれて、死んだように生きている姿はガラスケースの中の縫いぐるみのようでした。
街角の寂れたゲームセンターで暇潰しをする大学生にとっては、未確認飛行物体などはゲームの世界の出来事でしかありません。
たまたまこのお店を通りかかったニックの人生が、ガラスの囲いから外へと撮み出されるかのように変わっていきます。
店内のやたらと騒がしく鳴り響いている、ピコピコピューンといった電子音からも不吉なムードが高まっていました。
無機質な牢獄を貫く厚い絆
映画冒頭でのカリフォルニア州を横断するハイウェイの解放感から一転して、全面がオフホワイトに統一された研究施設が寒々しいです。
通風ダクトを利用したジョナとの取り留めのない会話、無菌室の防弾ガラス越しに交錯させるヘイリーとの視線。
バラバラに引き離されてもそう簡単には途切れることのない、3人の厚い信頼関係には心温まるものがあります。
綿密に計画を練り上げて幾度となく脱走を試みながらも、ニックたちの前を神出鬼没に阻むデイモンが不気味です。
建物の中であろうと外であろうとヘルメットを外すことなく、何かを隠すような素振りを見せているのも気になりました。
高い機密性が保たれた防護スーツのネームプレートに刻まれている「DAMON」のスペルを並べ替えてみると、謎を解く鍵を手に入れることが出来ます。
機械化された体に宿る魂
俄に超人的な半サイボーグと化したニックの大立ち回りと、ヘイリーと手を繋いでの決死の脱出劇がスリリングです。
非人道的な実験の犠牲となった挙げ句に肉体改造まで施されてしまったジョナの、逆襲の一手も痛快無比でした。
最終決戦の真っ只中においてニックが初めて打ち明けた、愛するヘイリーへの気持ちにはホロリとさせられます。
持てる知恵と勇気の全てを振り絞って、ふたりの掛け替えのない親友を守り抜いたジョナの姿も胸に焼き付きました。
こんな人におすすめ
壮絶なバトルを繰り広げた末に生き残ったふたりと、彼らの目の前に無限大に広がっていく新天地が圧巻でした。
大御所フィリップ・K・ディックの代表作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」や、新星マックス・バリーの「機械男」等。
肉体と機械の境界線にスポットライトを当てたSF小説に詳しい読書家の皆さんは、是非ともこの1本をご覧下さい。
みんなのレビュー
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