終わった人|動画配信情報・感想・評価・解説

終わった人
2018年製作/125分/日本 予告動画を検索

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「終わった人」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「終わった人」は、2018年の6月9日に中田秀夫監督によって劇場公開されています。

「リング」や「仄暗い水の底から」を始めとするホラー映画から、「ホワイリリー」などのラブストーリーまで。

幅広いジャンルでの創作活動を続けてきたベテラン監督が、初めてとなるコメディードラマにチャレンジしました。

原作は人気の脚本家・内館牧子によって2018年の3月に講談社文庫から刊行した、社会派のベストセラー小説が原作です。

テレビ番組の構成作家や劇団の演出を手掛けている、根本ノンジが書き下ろしたオリジナルのシナリオによって映像化されています。

あらすじ

田代壮介は日本国内でも屈指の有名な国立大学を優秀な成績で卒業して、一流の銀行に入行しました。

エリート街道をまっしぐらに突き進んでいましたが、50歳を超えたある日突然に上層部から転籍を命じられてしまいます。

そのまま出向先のシステム会社で専務としての職務を全うしていき、定年退職を迎えたのは63歳になった時です。

妻の千種は美容師として充実感に満ち溢れていて、壮介は家に帰ってもやることがありません。

このままただ単に年齢を重ねていく無為徒食の暮らしぶりに、俄かに焦りを感じてしまいます。

習い事を始めて出会った絵本作家志望の女性との仄かな恋や、IT企業の顧問としてのセカンドキャリアによって少しずつ壮介の日常は変わっていくのでした。

老いてなお輝く俳優さん

主人公の壮介には、ベテラン俳優として多くのテレビドラマや映画に出演し続けてきた舘ひろしのイメージがピッタリとはまっていました。

30年以上に渡って多くの人から愛されてきた「あぶない刑事」シリーズが先頃終了してしまった、役者さんとしての境遇にも重なるものがあります。

壮介がジムやカルチャースクールに憑りつかれていくシーンには、明石知幸監督の傑作「免許がない!」で人気のアクション俳優が教習所で巻き起こす騒動を懐かしく思い出してしまうかもしれません。

本作品の中でもホラー映画の印象が強い中田監督と、意外にも息の合ったコンビネーションを披露していて面白かったです。

暴走気味な俳優に、時折ブレーキをかける監督の姿が伝わってきました。

熟年主婦のありのままの暮らしを映し出す

小津安二郎監督の代名詞とも言える「お茶漬けの味」から、成瀨巳喜男監督の懐かしの名作「妻よ薔薇のように」まで。

古き良き昭和のモノクロ映画を思わせるような、のんびりとしたムードが全編を通して漂っていて癒されるでしょう。

市井に生きるごく普通の夫婦のありきたりな暮らしぶりを見つめた、中田監督の優しさ溢れる眼差しも良かったです。

如何にして有り余る時間を活用するのか

仕事一筋に突っ走ってきた壮介が如何にして仕事以外の生き甲斐を見つけて、第2の人生と向き合っていくのか引き込まれていきます。

実際に今現在のところリタイアして自由気ままな生活を送っている方であれば、壮介の居場所のなさや物足りない気持ちに共感できるのではないでしょうか。

映画監督もこれまで手掛けていた作品のクランクアップと、次回作の撮影が始まるあいだは時間だけが有り余っているそうです。

そんな中田監督自身の体験談を反映させたかのような、壮介の手持ちぶさたな様子がリアリティー溢れていました。

定年は迎えた壮介だけれども

大勢の部下や同僚たちに囲まれたまま花束を手渡される田代壮介のアップショットから、この映画は静かに幕を開けていきます。

顔面いっぱいにめでたく退社を迎える者としての笑顔を貼り付けていますが、心の奥底では喜びばかりではありません。

これまでに築き上げてきた会社という自分の居場所を、手放してしまうかのような壮介の未練がましさもの滲み出ていました。

せっかく自分だけの時間を手に入れながらも、やりたいことも行きたい場所も思いつかない壮介の後ろ姿が寂しげです。

壮介の妻・千草は自分が切り盛りする美容室にすっかり夢中になっていて、その生き生きとした表情とのコントラストが浮かび上がっていました。

まるで得体の知れない不安感と孤独感に追いかけられていくように、徐々に壮介は焦りを感じ始めていきます。

街中に溢れかえった終わった人たち

再就職先を探し回って奔走している壮介でしたが、元来のプライドの高さが邪魔してかなかなか決まりません。

壮介の自宅から歩いて数分くらいの距離にポツンと佇むごく普通の公園から、サラリーマン時代には見向きもしなかった街中の図書館まで。

就寝活動の合間に壮介が訪れる場所には、いずれも所在無さげな初老の男性たちがウロウロとしているのが印象深かったです。

来るべき高齢化社会や無縁社会の未来図を突き付けられているようで、暗澹たる気持ちになってしまいました。

壮介と同じく第2の人生に迷いっぱなしな旧友・二宮との再会や、長らく疎遠になっていた故郷・盛岡のエピソードが何ともほろ苦いです。

スポーツジムに通い始めてトレーニングの効果も現れれましたが、壮介はまだまだ満足することはありません。

壮介の老いらくの恋と結婚を超えた卒婚

俄かに受験勉強に励んで大学院を目指したりカルチャーセンターに入会して講義を受けたりと、壮介の迷走ぶりはエスカレートしていき止まることを知りません。

そんな浮わついた壮介の目の前に現れて翻弄していく、カルチャーセンターの事務員・浜田久里が実に魅力的です。

自分の娘ほど年齢が離れている女性に年甲斐もなくときめいてしまうのは、哀しい男の性なのかもしれません。

久里に入れ揚げ過ぎた田代が彼女を熱海まで追いかけていく修羅場も用意されていて、遂には熟年既婚の危機へと発展してしまうお約束の展開がユーモラスでした。

優柔不断ではた迷惑の塊のような壮介に対して、千草が宣言した「卒婚」というフレーズが心に響きます。

惰性的に夫婦を続けるのではなく離婚に踏み切るのでもない、新しい男女の関係性が見えてきて微笑ましかったです。

定年退職と生前葬の不思議な類似点

「定年は生前葬のようなもの」という、映画の中で壮介がポツリと呟くセリフには味わい深いものがありました。

死んだように同じ1週間を繰り返していく、初老の男性の後ろ姿には一抹の寂しさが漂っています。

会社での忙しい仕事があるからこそ、週末が待ち遠しくたまのゴールデンウイークや夏季休暇の有難さが実感できるのかもしれません。

バブル崩壊に伴って終身雇用制度も消え去って、個人が社会の中でたったひとりで荒波をくぐり抜けていかなければならない厳しい現状も伝わってきます。

退職後から幕を開けていく長い第2の人生を、自分のペースで楽しく過ごしていく方法を考えさせられました。

こんな人におすすめ

周りの人たちを巻き込んで不器用なりに突き進んでいく、壮介の滑稽ながらも真摯な生きざまには励まされました。

人生80年がいつの間にやら100年に、終身雇用や年金制度が崩壊して自分で用意しなければならない金額は2000万円。

そんなお先真っ暗な今の時代の老後を、軽く笑い飛ばしてしまうかのようなエネルギーには勇気を貰えるはずです。

会社勤めは終わっても自分の人生だけはまだまだ終わることが出来ない皆さんへの、有意義な毎日を送るためのささやかなヒントと温かいメッセージがたっぷりと込められています。

定年退職を迎えたシニア世代の方は、是非ともこの映画をご覧になってください。

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