名前|動画配信情報・感想・評価・解説

名前
2018年製作/114分/日本 予告動画を検索
正男は借金返済に追われ、住むところと家族を失ってしまう。縁もゆかりもない茨城県まで逃げてきた正男は、名前さえ捨てて生きることを決意するのだった。ある日、自暴自棄になった正男のもとに、女子高生の笑子から「お父さん」と声をかけられる。彼女との触れ合いを通して、次第に人間らしい感情を取り戻していく正男だったが、笑子に生き別れの父親がいることを知り…。

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キャスト・スタッフ

監督
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原作
-
出演
音楽
製作
-

「名前」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「名前」は2018年の6月30日に劇場公開されている、戸田彬弘監督によるヒューマンドラマです。

直木賞受賞作家の道尾秀介による原作をもとにして、「タンクトップファイター」などのテレビドラマの脚本で有名な守口悠介がオリジナルのシナリオを書き下ろしました。

奈良県のとある高校に通う8人の青春をテーマにした「花の袋」から、死後も強い絆で結ばれる姉妹を描いた「横たわる彼女」まで。

ミュージックビデオの制作や舞台演出に戯曲の執筆も手掛けている、新進気鋭の映像作家がメガホンを取っています。

茨城県南青年会議所と原作者の全面的なバックアップのもとで現地ロケを敢行して、2年間の撮影期間と編集作業を経て完成に漕ぎつけている作品です。

あらすじ

事業に行き詰まった中村正男は借金返済に追われているうちに、住むところも大切な家族も失ってしまいました。

縁もゆかりもない茨城県まで逃げてきた正男は、自分自身の名前さえ捨て去って身分を偽りながら生きることを決意します。

自暴自棄になった正男の日々の暮らしはあっという間に荒んでいき、彼の過去を知る人は今ではひとりも居ません。

そんな正男の隠れ家をある日突然に訪ねてきたのは、何処か見覚えのある不思議な女子高校生の葉山笑子です。

笑子に「お父さん」と呼び掛けられて戸惑いを隠すことが出来ない正男でしたが、彼女との触れ合いを通して人間らしい感情を取り戻していきます。

笑子に生き別れになった父親がいることを知った正男は、自らの隠した名前と消したはずの過去と向き合っていくのでした。

個性派名脇役と新星女優とのコラボレーション

主人公に抜擢されたのは、1993年の北野武監督作品「ソナチネ」以来数多くの日本映画で活躍してきた津田寛治です。

バイプレイヤーとしてのイメージが強烈な津田にとっては、2004年の「イズ・エー」以来実に14年ぶりの主演作になっています。

中年期に有りがちな倦怠感と悲哀で行き詰まっている中村正男の生きざまを、自然態のままで体現していました。

周りの人たちばかりではなく自分でさえ欺いていきる姿には、「トウキョウソナタ」で演じていた妻子にリストラを打ち明けられずにいるお父さんを連想してしまうでしょう。

ヒロインの笑子に扮している駒井蓮は無名の女優さんで、ロケ地で開催されたワークショップで発掘されています。

今しかない若さとエネルギーを身に纏った笑子に成りきったその姿を、スクリーンにまざまざと焼き付けていました。

素朴な町に生きる飾らない人たち

ストーリーの舞台に設定されている、茨城県の長閑な街並みと穏やかな時間の流れには癒しの効果が抜群です。

町の中心にはつくばエクスプレスが通って、駅周辺には最先端のショッピングセンターが出店していて賑わいがありました。

その一方では駅から離れたところには、手付かずの自然や昔ながらの風景が広がっていてノスタルジーに満ち溢れています。

古くから受け継がれてきた伝統と新しく台頭してきた価値観が、お互いに打ち消し合うことなく共存共栄していました。

正男が独り暮らしを送ってある、今ではすっかり見られなくなった雨戸と縁側のある一軒家の佇まいも心に残ります。

対極的なふたりの交流を描く

女子高校生と中年男性がひとつ屋根の下で暮らすという設定は、一方間違えるとスキャンダラスな予感があるかもしれません。

血の繋がりのないふたりが血縁関係を越えた絆で結ばれていく様子を、何処までもピュアな物語として上手くに纏め上げていて安心です。

正男の不規則な生活習慣と不健康な食生活を改善していく、栄養バランスのとれた笑子の手料理も美味しそうでした。

正男と笑子のサッパリ噛み合っていない会話やぎこちない振る舞いも、何時しか心地よく感じてしまうでしょう。

映画の序盤ではビールの空き缶やお摘まみの袋で散らかっていたテーブルが、中盤以降はすっかりと片付けられているところにも注目してみて下さい。

平凡な題名に込められた謎解き

一見するとボンヤリとしていて掴みどころのない本作の「名前」というタイトルには、思わぬ仕掛けと深いメッセージが込められているので注意してみて下さい。

「偽物の名前の方がみんな喜ぶんだよ」と正男が捏ねる意味不明な屁理屈も、後半への然り気無い伏線になっています。

ある時は海外で活躍する遣り手のビジネスマン、またある時は病弱な妻のために汗水流して工場で働く肉体労働者。

その場しのぎの口から出任せを延々と並べたてる、正男の節操の無さと無神経さにはあきれ果ててしまいました。

長年我慢に我慢を重ねて連れ添っていた正男の妻・香苗が、遂には愛想を付かして出て行ってしまったのも頷けますね。

勤め先のひとつである物流倉庫に、「父がお世話になっています」と能面のようの笑顔を張り付けた少女が訪ねてくることで事態は更にややこしくなっていきます。

動き始めた正男の日常と愛を求める笑子

ある日突然に迷い込んできた女子高生・笑子に振り回されていくことによって、死んだように生きていた正男の日常も俄に慌ただしくなっていきます。

放課後にはクラスメイトの理帆と夜遅くまで遊び歩いて、休日には付き合い始めたばかりの彼氏の翔矢とデート。

一見するとマイペースでお気楽な学校生活を送っているようにも思える笑子の、時折浮かべる気だるい眼差しが色っぽいです。

携帯電話のメモリーに赤の他人であるはずの正男の番号を、「お父さん」と入力して登録しているいじらしい一面もありました。

笑子の母親がシングルマザーとして女手ひとつで娘を育てるために、水商売に明け暮れていることも大きいのかもしれません。

実の母親から充分に貰えなかった愛情を、正男という仮の父親を通して受け取ろうとする姿が何とも切ないです。

迷いを振り切って走り出す笑子

偶然にも笑子がオルゴールと古ぼけた1通の手紙を見つけることによって、正男との間には微妙な緊張感が生まれていきます。

通っている学校では惰性で続けていた演劇部に久しぶりに顔を出して、本気で稽古に打ち込み始めていく様子が微笑ましかったです。

部員たちとも馴れ合いの関係で満足していたはずの笑子が、初めて心の奥底からお互いの気持ちをぶつけ合う場面も感動的でした。

言い争いの後で部室から飛び出してきた笑子が、躊躇うことなく正男の自宅のある方角へと駆け出していく姿には胸が熱くなります。

一途な笑子の思いを受け止めるためには、面倒なことからは逃げてきた正男自身も変わらなくてはなりません。

こんな人におすすめ

偽りのアイデンティティーを使って全く見知らぬ場所で生活を送ることが、何時しか主人公にとっては喜びへと変わっていく瞬間が圧巻でした。

学校に居場所のなかった若き日の津田寛治が、授業をサボって映画館に通っていたというほろ苦いエピソードにも繋がるものがあります。

スクリーンを通して自分とは違う人間の人生を擬似体験することこそが、映画の醍醐味なのではないでしょうか?

映画スターや舞台俳優ばかりではなく、誰しもが学校や会社の中で自分のポジションを保つために役を演じているはずです。

故郷への並々ならぬ愛情も込められている1本になり、長らく実家に帰っていない方や生まれ育った町から遠く離れた場所で生活を送っている皆さんは是非ご覧になって下さい。

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