運命は踊る|動画配信情報・感想・評価・解説

運命は踊る
2017年製作/113分/イスラエル・ドイツ・フランス・スイス合作 予告動画を検索
砂漠に設置されている検問所の警備に就いていたヨナタンの前に、4人のパレスチナ人が乗った車が通りかかる。ドライバーの身分証を返却した瞬間に起こった予想外のトラブルによって人生の分岐点に直面し、重大な決断を迫られるのだった。

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キャスト・スタッフ

監督
脚本
原作
-
出演
音楽
製作

「運命は踊る」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「運命は踊る」は2018年の9月29日に劇場公開されている、サミュエル・マオス監督によるヒューマンドラマです。

自国のレバノンへの侵攻制作を痛烈に批判した「レバノン」でデビューを果たした、イスラエル・テルアビブ出身の映画作家がメガホンを取りました。

長編第2弾として発表されている本作品はヴェネチア国際映画祭で最優秀賞監督賞に当たる銀獅子賞を獲得するなど、国内外を問わずに高い評価を集めています。

本国ではスポーツ・文化担当大臣や一部のお堅い政治家たちから、「有害な映画」のレッテルを貼られてしまった曰く付きの作品です。

原題の「FOXTROT」には4分の4拍子のリズムを刻む社交ダンスと、イスラエル軍のミリタリー・コードのふたつの意味がかけられています。

無限のループに踊らされていく親子3人の運命がテーマです。

あらすじ

テルアビブのアパートで静かに暮らしていたミハエルとダフナ夫妻のもとをやって来たのは、イスラエル軍に所属している息子の上官です。

息子のヨナタンは現在従軍していましたが、任務遂行中に亡くなったことを知らされました。

後日にヨナタンの戦死が誤報であったことが判明し、ミハエルは怒りを露にして息子を呼び戻すことを要求します。

一方その頃ヨナタンは砂漠の前哨基地に設置されている検問所の警備に就いていましたが、パレスチナ人の若者4人が乗った1台の車が通りかかります。

ドライバーから受け取った身分証明書を確かめて返却した瞬間に発生したのは、その場にいた誰もが予想もしなかったトラブルです。

人生の分岐点に直面したミハエル・ダフナ・ヨナタンの3人は、それぞれにとって重大な決断を迫られていくのでした。

ひとつのドラマを3人の俳優たちの熱演によって再現

母親のダフネ役に扮しているサラ・アドラーは、イスラエル映画以外でも見覚えのあるかもしれません。

フランスのジャン=リュック・ゴダール監督の「アワーミュージック」、アメリカのソフィア・コッポラ監督による「マリー・アントワネット」と海外でも活躍中です。

ミハエル役のリオル・アシュケナージが、息子を思う父親の心情に迫真の演技で迫っていて胸を打たれました。

戦場という非日常に投げ込まれながらも家族への愛を忘れることのないヨナタンを、ヨナタン・シレイが演じています。

ひとりの有名女優とふたりの無名俳優が、程よい距離感を保って物語の緊張感を引っ張っていました。

三者三葉に映し出されていく非日常の世界

息子を連れ戻そうとする父親・ミハエル、夫に対して不満がありながらもなかなか口にすることが出来ない妻のダフネ、初めての戦場で非日常を体験する息子のヨナタン。

それぞれの視点から交互に映し出されていき、徐々にシンクロしていく物語が味わい深かったです。

ミハエルとダフネが暮らしているイスラエル郊外のアパートでは、ヨナタンの生死に関する二転三転していて大騒ぎが繰り広げられています。

それとは対照的に遠く離れたヨナタンの赴任地では、ただただ静かに時間が流れていくだけでこれといったトラブルは発生していません。

ふたつの場面のコントラストと共に、時おり画面の隅っこをウロチョロしている1匹の可愛らしいラクダに注目してみて下さい。

中東の映画作家たちが作り出している独特な世界観と切実なテーマ

中盤辺りに登場前哨基地のシーンには、自爆テロへと向かう2人の若者を主人公にしたパレスチナの映画監督ハニ・アブ・アサドの「パラダイス・ナウ」を思い出してしまう方も多いかもしれません。

2006年にアカデミー賞の外国語部門にもノミネートされて、2007年には日本でも公開されています。

爆弾を巻き付けた青年の乗り込んだバスが青白い輝きに包まれていくラストは、一度みると決して忘れることは出来ないでしょう。

あの名作が発表されて本作品がイスラエル・ドイツ・フランス・スイスで合同制作されるまで10年余りが経過しましたが、今だに進展することのない中東和平について考えさせられるはずです。

不幸を届けるトラックの襲来

ミハエルとダフナの自宅に、トラックに乗った軍の関係者が訪ねてくるオープニングショットが印象深かったです。

愛する我が子の悲報を聞いて卒倒する母親と、マニュアル通りに手続きを行う訪問者とのコントラストがくっきりと現れていました。

息子・ヨナタンの死が間違いだったと知った時の、夫婦のリアクションの違いも浮かび上がっていきます。

喜びに打ち震えるダフネとは対照的に、ミハエルの眼差しには国家権力への不信感を垣間見ることができました。

国家権力がひた隠しにしている情報によって、ユダヤ人一家の平穏無事な暮らしが翻弄されていく様子が痛切です。

超大国と国際社会の思惑によって、刻一刻と戦況と情勢が変わっていく中東の小国の運命にも重なるものがあります。

イスラエル社会を分断する3つの世代

ミハエルやダフナはマオズ監督と同じく1960年代生まれになり、イスラエル社会の中では第二世代に当たります。

親は第二次世界大戦中のホロコーストを奇跡的に生還して、戦後にイスラエルへ流れ着いた第一世代です。

第一世代から勃発した戦争を第二世代が受け継いで、更にはヨナタンたち第三世代への負の遺産となってしまう深刻さに想いを巡らせてしまいました。

如何にも典型的な第一世代かと思われる年老いた男性が口にする、「我々の世代が犠牲を払ったからこそ、お前たちの平和がある。」という言葉が重くのしかかってきます。

この決め台詞を言われると、第二世代は何も言い返すことが出来ません。

自分たちの次の世代に負担を先送りする悪循環を終わらせるためにも、今こそ若い第三世代こそが一致団結して軍事行動以外の解決策を模索する必要があるはずです。

哀しみの果てのラストダンス

日本公開用に意訳されたタイトルには「踊る」の文字があり原題は「FOXTROT」ですが、一向にダンスのシーンは登場しません。

ようやくお待ちかねのダンスが披露される場面は、皮肉なことにミハエルとダフナにとっては1番かけがえのないものを失ってしまったクライマックスです。

フォックス・トロットは20世紀前半にニューヨークでダンスホールのマネージャーをしていた、ハリー・フォックスという俳優さんの名前が語源になっています。

前に大きく一歩踏み出す、もうひとつ前に一歩、右に移動、後ろに一歩戻る、もうひとつ後ろに一歩、左に移動。

結局もとの位置に戻ってしまうこのステップが何とも意味深でした。

哀しみに暮れながら踊り続ける夫を、妻が後ろからそっと抱きしめる瞬間にホロリとさせられます。

こんな人におすすめ

エンディングに登場する1台のトラックには、スタート地点へと戻されてしまうようなジレンマを感じてしまいました。

繰り返される悲劇と終わりのない戦いの中でも、現実の世界が一歩でも平和への道のりへと前進できることを願ってしまいます。

古くは1977年に発表されているメナヘム・ゴーラン監督の「サンダーボルト救出作戦」、ここ最近では2018年に日本でも公開されているオフィル・ラウル・グレイツァ監督による「彼が愛したケーキ職人」。

古今東西のイスラエル映画に造詣の深い皆さんは、是非ともこの1本をご覧になってください。

遠いところで今現在でも発生している衝突や紛争に対して、無関心になることなく現地の人たちの痛みや哀しみを共有できるはずです。

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