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キャスト・スタッフ
「記者たち 衝撃と畏怖の真実」をサクっと解説
ライター/ジョセフ
作品概要
「記者たち 衝撃と畏怖の真実」は2019年の3月29日に劇場公開されている、ロブ・ライナー監督によるヒューマンドラマです。
「スタンド・バイ・ミー」や「最高の人生の見つけ方」などの感動作から、「LBJ ケネディの意志を継いだ男」等の政治物まで。
数多くのヒット作品を世界に送り出してきた、1947年生まれのベテランの映画作家がメガホンを取っています。
ライナー監督自身もキーパーソンとなる支局長のジョン・ウォルコット役で、存在感のある演技を披露していました。
翻訳を担当しているのは齋藤敦子ですが、テレビでもお馴染みの池上彰が特別に字幕監修として加わっています。
ブッシュ政権下での実話をもとにして、アメリカ政府の欺瞞とメディアの報道姿勢に大胆に切り込んでいく作品です。
あらすじ
ニューヨーク市内が大混乱に陥った2001年9月11日、自転車で勤め先の新聞社ナイト・リッダーまで駆けつけたのはジョナサン・ランデーです。
この日を境にしてジョージ・W・ブッシュはテロとの戦いを推し進めていき、主要メディアも大統領の決定をこぞって支持してきました。
ナイト・リッダーのワシントンD.C.支局長を務めるジョン・ウォルコットだけは、この流れに安易に迎合することはありません。
ウォルコットの指示を受けたランデーは、ウォーレン・ストロベルとコンビを組んで独自の調査を開始します。
イラクは本当に大量破壊兵器を持っているのか、サダム・フセインと過激派組織アルカイダとの繋がりはあるのか。
政府の発表と関係者との証言に食い違いがあることに気がついたランデーたちでしたが、それと同時に政治的圧力や出どころ不明の脅迫文に悩まされていくのでした。
熱き記者に扮した個性豊かな俳優たち
実在する新聞記者のジョナサン・ランデーを、ウディ・ハレルソンが熱演しています。
ミロス・フォアマン監督の「ラリー・プリント」ではスキャンダラスな雑誌編集者を怪演していましたが、本作品では使命感に忠実なジャーナリストに成りきっていました。
ランデーと一緒に真実を追い求めていくウォーデン・ストロベル役に扮しているのは、ジェームズ・マーデンです。
ランデーの妻で東欧系移民のヴラトガの役でミラ・ジョヴォヴィッチ、ウォーレンの恋人役にはジェシカ・ビール。
美しきふたりの女優さんの共演も楽しむことが出来ますが、あくまでも熱い男たちの引き立て役でしかありません。
それぞれの真実と家族を描く
支局長、ふたりの記者、大物ジャーナリスト。
4人の目線から交互に映し出されていく、取材過程や記事の推敲がスリリングな味わいでした。
ナイト・リッダーが世の中の流れから取り残されていく中でも、4人の間に築き上げられた絆は決して揺らぐことはありません。
新聞記者やジャーナリストに限ることなく、実社会でのチームワークの大切さについて学べるはずです。
朝早くから夜中過ぎまで取材で慌ただしく駆け回っている記者たちも、家に帰ると良き父親であり良き夫です。
次第にナイト・リッダーへの圧力が強まっていく中で、それぞれの家族の身にも不穏な影が迫ることになります。
記者としてひとりの男として壁にぶつかった時に、どんな決断を下すのか注目してみて下さい。
戦場へと向かっていくひとりの青年
父親が経営しているニューヨークのバーを手伝っている、アダム・グリーンという名前の青年が時折登場していきます。
イラクの首都も知らなかったアダムが如何にしてアメリカ軍に入隊して戦地へ赴くのか、その過程がドラマチックです。
9・11発生当時、現場で懸命の救助活動にあたっている多くの消防士や警察官がグリーンの父の店に足を運んでいます。
彼らに無料でお酒や食事をサービスする父を目の当たりにして、自分のやるべきことを模索していくグリーンの姿が心に残りました。
愛する家族を守りたい、生まれ育った町の役に立ちたい。
そんな純粋な若者に待ち受けている、思わぬ落とし穴には驚かされるはずです。
衝撃と愛国心に覆われるニューヨーク
ニューヨークの世界貿易センタービルに2体の飛行機が突っ込んでいく、誰しもが鮮明に覚えているであろうあのニュース映像が冒頭で登場します。
如何なる衝撃的な事件を目の当たりにしても動じなかったはずのナイト・リッダー社の記者たちが、呆然としてテレビ画面を眺める横顔が印象的でした。
公共の交通機関がストップした中でも、サイクリングウェアを身に纏ってロードバイクに跨がって現れるランデーが勇ましいです。
多くの同僚たちが家族の安否を心配して帰宅を申し出る中でも、ランデーとその相棒のストロベルだけは動じることはありません。
国家を根底から揺るがすような大惨事に直面しても、いつも通りに自分たちに与えられた仕事をこなしていくふたりの図太さには圧倒されました。
それとは対照的にアメリカ社会は混乱に包まれていき、大手の新聞社やテレビ局には盲目的な愛国心が立ち込めていきます。
世代から世代へと受け継がれていく記者の心意気
ウォーターゲート事件の内幕を暴いてヒーローとなったふたりの新聞記者をの活躍を描いた映画「大統領の陰謀」。
学生時代に映画館に足を運んでこの作品を見たことがきっかけになって記者となったのが、ランデーでもありストロベルでもあります。
敵対勢力への妨害交錯や盗聴行為が次々と明るみに出て、遂にはニクソン大統領が失脚へと追い込まれたのが1974年。
ジョージ・W・ブッシュ大統領が大量破壊兵器の脅威を訴えて、多くのメディアをコントロールしていたのが2002年。
ふたつの時代の間には実に40年の歳月が流れていますが、報道の自由といった観点からはそれほど進歩の兆しは見られません。
ランデーやストロベルに憧れを抱いた次の世代が勇敢な記者となって、今以上に公正で開かれたメディアの在り方を模索していくことを願うばかりです。
名も無き戦士たちへのレクイエム
イラク戦争によって身体の自由を奪われたアダムと、ランデーたちが偶然の邂逅を果たすクライマックスが圧巻でした。
両者は二言三言の会話を交わすだけで、それぞれがこの場所へとたどり着くまでに費やした膨大な時間の流れの全てを察知します。
アダムたちが見つめる先には巨大な慰霊碑が聳え立っていて、一面に戦死した兵士の名前が刻み込まれていて痛切です。
戦争を仕掛けた張本人である政府高官たちは無傷でも、無数の名もない犠牲者の上にその権威が築き上げられていることを感じました。
ランデーから慰めの言葉を掛けられたアダムでしたが、返事を返すことも視線を交錯させることもありません。
夜の闇の中に消え失せていくその後ろ姿と車椅子が奏でる静かな音からは、終わりなき悲劇の予感がありました。
こんな人におすすめ
イラク戦争から本作品の全米公開までが17年、その間に費やした軍事予算が2兆ドル、アメリカ軍の死傷者が3万人。
その数字の非情さには、ただただ呆然とするしかありません。
取り返しのつかないほどの犠牲を払いながらも肝心の大量破壊兵器は発見されずに、当時の責任者たちがいつの間にか表舞台から姿を消してしまったことにも憤りを覚えます。
真実を闇に葬り去らないためにも、言論の自由を守り抜く大切さについて考えさせられました。
報道関係の仕事に興味を抱いている方たちやジャーナリストを志している皆さんは、是非ともこの1本をご覧ください。
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