羊の木|動画配信情報・感想・評価・解説

羊の木
2018年製作/126分/日本 予告動画を検索
港町の市役所で働く月末は、極秘の国家プロジェクトに関わることに。彼の仕事はある6人の男女の世話係。彼らは打ち明けることのできない秘密を抱えている。ある時発生した死亡事故がきっかけで、徐々に6人への疑惑の目が向けられるようになってしまう。月末は石田と協力し、彼らへの差別や偏見を防ごうとするが…。

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キャスト・スタッフ

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原作
出演
音楽
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製作
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「羊の木」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「羊の木」は2018年の2月3日に劇場公開されている、吉田大八監督によるミステリードラマです。

都会から逃げ帰ってきた女優志望で自意識過剰な女性が巻き起こしていくトラブルを描いた「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」から、子供を連れて実家の漁村に出戻った母親をヒロインに迎えた「「パーマネント野ばら」まで。

地方都市の独特な閉塞感をテーマにして創作活動を続けている、個性派の映画作家がメガホンを取りました。

原作は山上たつひこといがらしみきおのふたりのベテラン漫画家による合作なり、全5巻で講談社のイブニングコミックスから刊行されています。

北陸地方の架空の港町で、6人の訳ありな男女の世話役を仰せつかった市職員の目線から映し出されていく物語です。

あらすじ

若者たちの都会への流出が著しい港町・魚深の市役所に勤務する月末一は、中央政府からの指示に従って黙々と日々の仕事をこなしていました。

ある時に極秘扱いの国家プロジェクトに関わることになり、月末に割り振られた業務は魚深に移住してきた6人の男女の世話係です。

知性的で礼儀正しく見える彼らには、他人には打ち明けることが出来ない大きな秘密を抱えています。

見知らぬ土地での慣れない生活に戸惑う彼らに月末は相手の気持ちを尊重して親切丁寧に接していき、次第に6人は地元の人たちの中に溶け込んでいきました。

そんなある日のこと港町で発生した死亡事故がきっかけになって、徐々に6人への疑惑の眼差しが厳しくなっていきます。

月末は幼馴染みの石田文と力を合わせて、彼らに対する謂れのない差別や偏見を防ごうと奔走します。

しかしながら6人のうちの2人が、取り返しのつかない事件を起こしてしまうのでした。

命がけでおもてなしをする公務員を怪演

魚深市の受け入れ窓口担当者・月末一を、錦戸亮が静かに演じていきます。

極力感情を表に出すことなく、ルーティンワークのごとく業務を処理するロボットのようなな佇まいが印象深かったです。

家族から同僚に幼馴染みばかりではなく、松田龍平が扮している元犯罪者の宮腰一郎に対しても1歩引いた態度で接する徹底ぶりには笑わされました。

杉山勝志役を務める北村一輝や、大野克美役にキャスティングされた田中泯など如何にも凶悪な面構えも顔を揃えています。

事件のカギを握る目黒厚役に抜擢されているのは深水三章です。

残念ながら本作品が遺作となってしまっただけに、その名脇役ぶりを心に焼き付きてください。

六者六葉の再出発と地方の温かさ

過去に取り返しのつかない過ちを犯した6人にそれぞれ仕事を与えて、適材適所に配置して更生させていく魚深市役所のシステムが興味深かったです。

刑務所の運営費用のコスト削減にも効果抜群で、過疎地域へ活性化にも繋がり正に一石二鳥と言えるでしょう。

塀の中のプログラムで身に付けた資格を活かして理髪師、クリーニング店で働きながら人と人との触れ合いを体験、介護職を通じて思わぬロマンス。

お互いが思いやりの心を持って助け合う地域コミュニティーの温かさは、地方ならではのものなのかもしれません。

人と人との結び付きが薄れていき秩序を乱す存在をあっさりと排除してしまう、都心部の問題点までもがさり気なく伝わってきました。

魚が美味しく若者が消えた海の町

ストーリーの舞台に設定している海辺の町、魚深市の観光プロモーションビデオを見ているような不思議な気分になりました。

架空の市でありながら、日本全国どこに行っても見受けられるような懐かしさも湧いていきます。

刺身定食や海鮮丼など、地元の食材を活かしたメニューの数々も実に美味しそうです。

ソフトクリームやフルーツパフェなどの、長年にわたって甘いものに飢えていた6人を満足させるスイーツも用意されています。

ドーナツ化が加速していく田舎町特有の、諦めにも似た気だるいムードにも味わいがありました。

高校時代の仲間たちとバンドを再結成した月末が訪れる、打ち捨てられた遺跡のような岩場も忘れがたいです。

お役所仕事に誇りを持つ男

突如として厄介ごとを押し付けられてしまった月末一でしたが、動じることなく淡々と日常業務をこなしていきます。

ある者とは会話のキャッチボールが続かずに気まずい雰囲気に、ある者とは短期間ですっかり打ち解けて。

6人はそれぞれが違ったリアクションを見せますが、月末の方は終始一貫してマニュアル通りに対応していて好感が持てました。

一見するとそのへりくだった態度の中にも、過去に罪を犯してしまった人たちを理解して心を通わせていこうとする彼なりのポリシーや仕事に取り組む姿勢を感じました。

罪を罰することばかりではなく、更生させて社会復帰をサポートする司法や行政の役割についても考えさせられます。

地元のお祭りで無礼講がヒートアップ

魚深市で毎年恒例となっているのろろ祭りに6人が招かれることによって、徐々に市内には不穏なムードが立ち込めていきます。

この町に古くから受け継がれているという、怪しげな伝説にも惹き込まれてしまいました。

生贄を求める貪欲な海の怪物・のろろ様と、仮釈放中という宙ぶらりんな状態を重ね合わせてしまうはずです。

市の外れには断崖絶壁の岬が聳え立っていて、打ち寄せる波からは否が応でも悲劇的な結末を思い浮かべてしまうでしょう。

普段は紳士的でおとなしかったはずの彼らが、宴会の席でお酒が入った途端に豹変するシーンはあっけに取られてしまいました。

祭りの当日に撮影された1枚の写真が、更なる大騒ぎを引き起こしていきます。

悲劇の終わりと更なる始まり

海の底に眠っていたのろろ像の頭部をクレーン車によって引き揚げることによって、更なる悲劇を予感させる幕切れでした。

6人の内の生き残った4人のメンバーは、その後は表向きには何事もなかったかのように魚深市に溶け込んでいきます。

宮腰のような暴走者が出現するような事態は本当に起こらないのか、このような国家プロジェクトは今この瞬間にも日本国内で密かに進行中なのか。

大きな謎は依然として解明されていないままで少しの後味の悪さは残りながらも、クライマックスで月末が浮かべている晴れ晴れとした表情が清々しいです。

全編を通して第2の人生を歩んでいく6人の後ろ姿を見ていた狂言回しでしかなかった月末が、今までの自分自身の生きざまを見つめ直して真の主人公となる瞬間が圧巻です。

こんな人におすすめ

もしも自分が住んでいる街や勤めている会社に受刑者がやって来たら、彼らの存在を受け入れて共存共栄が出来るのか。

そんな究極的な命題を突き付けられているようで衝撃的な映画でした。

終盤で悲劇の引き金を引いた宮腰を除いた5人は、その行動は理路整然としていてキャラクターの造型にも無理はありません。

犯罪者と一般の人々を対極的に捉えることなく、誰しもが罪を犯してしまう人間の心の弱さを描いていて共感できます。

これまでのほろ苦い思い出や煩わしい人間関係など全てのリセットボタンを押して、何処か遠く離れた知らない土地で暮らしてみたくなるはずです。

進学や就職によって新しい場所での生活をスタートしようとしている学生さんや新社会人は、是非ともこの1本をご覧になってください。

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