スターリンの葬送狂騒曲|動画配信情報・感想・評価・解説

スターリンの葬送狂騒曲
2017年製作/107分/イギリス 予告動画を検索
ソ連の権力を握っていたスターリンが危篤状態になり、後釜を狙うフルシチョフだったが、ライバルであるベリヤに先を越されてしまう。スターリンの葬式が行われる中でも政治家や軍人は、どちらに味方するのか態度を示さなければならない。不利な状況に追い込まれるフルシチョフだったが、起死回生の秘策を発動させるのだった。

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「スターリンの葬送狂騒曲」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「スターリンの葬送狂騒曲」は2018年の8月3日に、アーマンド・イアヌッチ監督によって劇場公開されています。

もとになっているのはフェビアン・ニュリとティエリ・ロバンの合作による、フランスのベストセラーコミックです。

日本でも小学館集英社プロダクションから、大西愛子の翻訳によって刊行されました。

型破りなアメリカ副大統領を主人公にした「Veep/ヴィープ」シリーズから、アメリカとイギリスの外交事情をテーマにした「in the Loop」まで。

アカデミー賞のノミネート経験とエミー賞受賞歴のある、イギリスの個性派映画作家がメガホンを取っています。

第42回香港国際映画祭でのプレミアム上映作品になり、ロシア国内では政府によって公開禁止に追い込まれた問題作です。

あらすじ

1953年3月2日、ソ連の共産党書記長として権力を掌握し続けてきたヨシフ・スターリンが危篤状態に陥りました。

前々からスターリンの後釜に就くチャンスを伺っていたフルシチョフでしたが、ライバルのベリヤに先を越されてしまいます。

ふたりと肩を並べるほどの実績がありながらも、日和見主義のマレンコフはベリヤに忠誠を誓うようです。

権謀術数に長けた穏健派のフルシチョフにつくのか、力でライバルちを捩じ伏せてきた強硬派のベリヤに従うのか。

スターリンの葬式が大々的に行われる中でも、政治家や軍人たちはどちらに味方するのかその態度を明確にしなければなりません。

勢力図では圧倒的に不利な状況に追い詰められていきますが、フルシチョフには起死回生の秘策を発動させるのでした。

名優たちが繰り広げる究極の椅子取りゲーム

スターリンの後継者第1候補であるニキータ・フルシチョフを演じているのは、スティーヴ・ブシェミです。

全編を通して抜け目なく狡猾な立ち振舞いを見せながらも、何処か滑稽で哀れな生きざまを巧みに体現していました。

「007/慰めの報酬」など女スパイ役で洗練なイメージを焼き付けた、オルガ・キュリレンコも参戦しています。

むさ苦しい男たちによって繰り広げられていく骨肉のバトルの中でも、その美しくも怪しげな魅力は健在です。

権謀術数に長けたベリヤ役のサイモン・ラッセル・ビールや、腰巾着のようなマレンコフに成りきったジェフリー・タンバーの怪演も見逃せません。

マンガよりも映画よりも奇なる史実

原作のマンガもこの映画も、綿密なリサーチをもとにしたフィクションであるというから驚かされることでしょう。

スターリンのお気に入りだったマレンコフ、中央委員会で第一書記にまで上り詰めたブレジネフ、秘密警察を率いるベリヤ。

このビッグスリーに加えて、スターリンのふたりの子供からソビエト軍屈指の武闘派・ジューコフまでが入り乱れていきます。

手厚いおもてなしから色仕掛け、根回し工作に密告、同盟成立と見せかけて裏切りに密告、でっち上げも責任の擦り合いも。

ルール無用のバトル・ロワイアルと、時にシリアスな政治ドラマも盛り込まれていて引き込まれていくはずです。

スターリンの個人的な趣味を暴く

ラジオ・モスクワ放送局で開催されている音楽鑑賞会に招かれたスターリンが、オーケストラが演奏するモーツァルトの楽曲にじっくりと耳を傾けているシーンが印象的でした。

ヒトラーが19世紀のロマン派の作曲家、リヒャルト・ワグナーを偏愛したのと、同じような感覚なのでしょうか。

その穏やかで満ち足りた横顔からは、数多くの政敵をシベリア送りにしてきた冷血漢のイメージとは全く結び付きません。

別荘にプロジェクターまで持ち込んで、アメリカのジョン・フォード監督の西部劇を楽しんでいる内幕も垣間見ることかわできます。

表舞台では国民に向かってアメリカへの敵対心を煽りながらも、プライベートではカウボーイたちの活躍に夢中なギャップがユーモラスです。

酒池肉林の大宴会の果てに

オープニングの舞台となるのは、ソ連の政府首脳たちが集まってどドンチャン騒ぎを繰り広げているスターリンの別荘です。

ウォッカやスピリタス等、やたらとアルコール度数の高いお酒を一気飲みであおるフルシチョフやマレンコフ。

肝臓の健康には日頃から気を遣っているようで、ワインやビールなどの薄めの飲み物をチビチビと啜るスターリン。

非常に対極的な飲みっぷりの両者ですが、この後にスターリンの方が体調の急変に襲われてしまうところに運命の巡り合わせを感じました。

ソ連国内の優秀な医師はその殆んどがスターリンによって粛清されてしまったために、残っているのは口先だけは調子の良いいい加減な医者ばかりです。

適切な救命処置を受けることが出来ないままで亡くなってしまったのも、スターリンの自業自得と言えるでしょう。

お葬式の舞台裏で飛び交う様々な憶測

つつがなく進められていくスターリンの国葬行事の裏で、少しずつ過熱していく後継者争いがスリリングです。

生前にスターリンから睨まれていた宗教関係者が、嫌々ながらも葬儀に参列させられている様子が皮肉でした。

国葬委員長を無理矢理に押し付けられてあちこちを奔走してばかりのフルシチョフも、さっぱり威厳がありません。

スターリンの遺体にエンジェルメイクを施していた付き人が、「クラーク・ゲーブルみたい」と言い出す場面には笑わされます。

冷酷という点ではスターリンに負けていないベリヤ、優柔不断でベリヤの言うことには逆らえないマレンコフ。

ふたりのパワーバランスを利用してフルシチョフが反撃に転じることによって、ポストスターリンを決めるレースは終盤戦へと突入します。

最後に生き残った者は

派閥争いでベリヤに大きく差をつけられてしまったフルシチョフは、伸るか反るかのギャンブルに打ってでます。

無人列車の暴走から葬儀の真っ最中の軍事クーデターまで、その大胆不敵さと悪知恵には呆気にとられてしまいました。

フルシチョフがスターリンの娘・スヴェトラーナにそっと囁く、「都合の悪いものは全て燃やせ」というセリフが心に残ります。

歴史の改ざんであれ国家による検閲であれ、闇から闇へと葬り去てきた真実に思いを巡らせてしまいました。

反逆罪から性的暴行までの濡れ衣を着せられて、紙切れにサインひとつで銃殺されてしまったベリヤが哀れです。

遂には権力を手中に収めることになったフルシチョフですが、あれほど嫌悪していたスターリンそっくりの笑顔を浮かべているのが不気味ですね。

こんな人におすすめ

クライマックスで全国民に向かって演説するフルシチョフの背後には、レオニード・ブレジネフが亡霊のように佇んでいます。

スターリンの死去から11年後に失脚したフルシチョフにとって代わり、恐怖の粛清時代に逆行したことを多くの観客が思い出したはずです。

ゴルバチョフによるグラスノスチにペレストロイカ、ソビエトの崩壊から冷戦の終結といった激動の20世紀末。

クリミア半島の併合やジャーナリストの毒殺疑惑など、21世紀の今現在にスターリンの再来を予感してしまうのは気のせいなのでしょうか。

21世紀のドイツにナチスドイツの総統が甦らせた「帰ってきたヒトラー」から、アフリカの将軍様がニューヨークで行方不明になる「ディクテーター」まで。

世界各国の独裁者を主人公にしたブラックコメディーがお好きな皆さんは、是非ともこの1本をご覧になって下さい。

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