菊とギロチン|動画配信情報・感想・評価・解説

菊とギロチン
2018年製作/189分/日本 予告動画を検索
日露戦争に徴兵された中濱鐵は、任務中に政治的なビラを撒き除隊処分を受ける。戦争終結後も無為な暮らしをしていたところ、偶然出会った青年・古田大次郎と意気投合する。彼らは国家権力への挑戦のため「ギロチン社」を結成し、暗殺計画を練り上げていく。しかし、道中で一緒になった女力士たちのひたむきの生きざまによって、彼らの心は次第に変化していくのだった…。

動画配信

U-NEXT(ユーネクスト) U-NEXTで検索
31日間無料

TSUTAYA TV(ツタヤTV) TSUTAYA TVで検索
30日間無料

キャスト・スタッフ

監督
脚本
原作
-
出演
音楽
製作
-

「菊とギロチン」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「菊とギロチン」は2018年の7月7日に劇場公開された、瀬々敬久監督によるヒューマンドラマです。

幻のマンガ家・つげ忠男の作品集を実写化した実験的な「なりゆきな魂」から、珠玉のラブストーリー「8年越しの花嫁 奇跡の実話」まで。

メジャー作品からピンク映画まで幅広いジャンルを手掛けてきた、ベテランの映画作家がメガホンを取りました。

構想と資金集めに30年の再現を費やして、2016年の秋から2年間の撮影期間を経てクランクアップに漕ぎ着けています。

2018年度のキネマ旬報ベストテンの日本映画部門では第2位にランクインしていて、監督賞にも輝いた作品です。

実在するテロリスト集団と架空の女相撲の興行一座との、偶然の出会いとドラマチックな別れに迫っていきます。

あらすじ

日露戦争に徴兵された中濱鐵でしたが、軍隊の不条理なシステムや上官からの理不尽な命令には馴染むことが出来ません。

任務遂行中に政治的なビラをばら蒔いたことが原因で、重営倉送りとなった挙げ句に除隊処分を受けてしまいました。

戦争終結後も定職に就くこともなく無為な日々を送っていた際に、偶然にも出逢って意気投合した青年が古田大次郎です。

国家権力への挑戦のために同志を募って「ギロチン社」を結成し、大正天皇の摂政を務める裕仁宮の暗殺計画を練り上げていきます。

道中で一緒になったのが相撲の見せ物興行を行いながら、町から町へと旅を続けている若い女性たちの団体です。

女力士たちのひた向きな生きざまに微妙な心変わりをしていく中濱や古田でしたが、やがては彼らに悲劇が訪れるのでした。

無名の若手と実力派俳優たちとの共演

時代の荒波に立ち向かっていくヒロインの花菊たまよを演じているのは、1994年生まれで新潟県出身の木竜麻生です。

女相撲を通して自由に生きることの素晴らしさと、人間としての生命力を身に付けていく成長ぶりを見事に体現していました。

ギロチン社の一員にして破滅的な道のりを歩んでいく古田大次郎の役に、オーディションによって大抜擢されているのが寛一郎です。

父親の佐藤浩市は瀬々監督の代表作「64ーロクヨンー」で主演を務めているのも、何とも不思議な縁があります。

古田が暗殺しようとしていたターゲットこそが摂政宮の裕仁で、後の昭和天皇であるところに運命的なものを感じませんか?

中濱鐵役には東出昌大、花菊と同じ一座の力士・十勝川たまえ役には韓英恵が配役されていて無名のふたりの役者をしっかりとサポートしています。

戦いの中にもロマンスが

閉鎖的な農家で理不尽な暴力に耐えていた花菊は古田へ、行く宛もなくさ迷い歩いていた十勝川は中濱へ。

一座の力士たちとギロチン社のメンバーとの間に芽生え始めていく、仄かな恋愛感情が微笑ましく映りました。

それぞれの戦いと終わりのない冒険に明け暮れていた男女が、つかの間の青春を謳歌する群像劇としての面白さもあります。

口下手で引っ込み思案な古田は草食系男子、異性との関係が派手な中濱は今ならばプレイボーイと言えるのでしょうか。

男性に対しても臆することなくアプローチをしていく花菊と、一歩引いてパートナーを立てる十勝川のコントラストも効果的です。

古くから受け継がれてきた女たちの意志

意識不明に陥った市長に救命措置を行っていた女性に対して浴びせられた、「土俵から降りて」というあの言葉を思い出してしまいました。

2018年4月4日の京都でひと騒動が巻き起こった約3カ月後に、本作品が公開されたことに巡り合わせがありますね。

古くは18世紀の中頃にまでその起源を遡るほど奥深い、女相撲の歴史の移り変わりを垣間見ることが出来ます。

厳しいトレーニングの風景、行く先々で巻き起こるトラブル、仲間内での些細な諍い、土俵際での真剣な取り組み。

砂煙りの舞い上がる中で、自分自身の肉体を武器にしてぶつかり合う女性たちの姿には心を揺さぶられるはずです。

お堅い政府高官からは「俗悪」の烙印を捺されて取り締まりを受けるようになり、やがては廃れていくような予感も漂っていました。

木訥な青年たちが過激派組織に

寄生地主制によって土地に縛り付けられていた、大正時代の小作農民たちの悲惨な暮らしぶりには胸が痛みました。

その悲惨な現状を目の当たりにしたのが、軍隊を除隊後に放浪していた中濱鐵であり古田大次郎でもあります。

世界を自分たちの手で変革するために、たったふたりで農業従事者の権利向上のための団体を立ち上げていく姿が勇ましかったです。

そんな理想に燃える中濱と古田でしたが、現実とのギャップにあっさりと打ちのめされてしまうほろ苦い場面もありました。

地に足の着いていた彼らの考え方や行動が、次第にアナーキストへと暴走していく転換期を捉えていて興味深いです。

今の時代に重なり合う重苦しさ

日露戦争の勝利に酔いしれつつも、やがては第二次世界大戦へと向かっていく不穏な時代の流れがありました。

関東大震災直後に憲兵大尉に殺害された無政府主義者の大杉栄、デマによる騒乱の犠牲になった在日朝鮮人。

東日本大震災以降は広がっていく一方な被災地と都心部との距離感、韓国で高まっていく反日感情と北朝鮮の脅威。

他者への寛容性と個人の自由が失われていく当時のムードと、21世紀の日本との間に似たような雰囲気があるのは思い過ごしなのでしょうか。

ギロチン社や女相撲一座のような時代の閉塞感を打ち破るような、若者たちの勢力が現れるのは当分先のことになりそうです。

闘争の果てに彼らが夢見たものは

海外で逃走を続けていた中濱鐵は帰国後に逮捕されて、1926年の4月15日に29歳の若さで死刑執行を下されました。

兄貴分である中濱を奪われた古田大次郎は、爆弾事件という取り返しのつかない大惨事を招いてしまいます。

古田にとっては中濱こそが正義のヒーローであり、その不在の大きさには耐えられなかったのかもしれません。

自暴自棄になった末に古田もテロリストとして極刑を宣告されてしまいますが、控訴することはありませんでした。

自らの人生が終わりを迎えるその瞬間に、彼が奪ってしまった生命の重さと向き合ったことを願うばかりです。

こんな人におすすめ

亀田博と廣畑研二による共同執筆によって刊行されている「中濱鐵隠された大逆罪ー未公開公判陳述・獄中詩篇」から、古田大次郎の手記を死後に編纂して発表した「死の懺悔―或る死刑囚の遺書」まで。

中濱鐡や古田大次郎の数奇な生涯を綿密にリサーチした、ノンフィクション書籍にも俄然興味が湧いてきて読んでみたくなりました。

1974年に寡作で有名な長谷川和彦がシナリオを書き下ろして、鬼才・神代辰巳が監督を務めている「宵待草」。

2013年に寺十吾が中濱鐵役を演じていて、山田勇男監督によって制作された「シュトルム・ウント・ドランクッ」。

これまでにもギロチン社をモデルにした映画は幾つか発表されているので、この機会に見比べてみたいと思います。

信じていたはずの革命に裏切られて挫折感を味わっていく様子には、かつて学生運動に熱中した方たちには共感できるはずです。

闘うべき対象が見つからずに何かにつけて冷めてしまいがちな、今の若い世代の皆さんも是非ともご覧になって下さい。

みんなのレビュー

【投稿されたコメントをシェア】
秀逸なコメントをSNSに投稿して
菊とギロチン」を
布教しちゃってください!
【コメント募集中】
菊とギロチン」の
おすすめのポイントを
自由に紹介してください!