北の桜守|動画配信情報・感想・評価・解説

北の桜守
2018年製作/126分/日本 予告動画を検索

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キャスト・スタッフ

監督
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原作
-
出演
音楽
製作

「北の桜守」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「北の桜守」は滝田洋二郎監督によって、2018年の3月10日に劇場公開されているヒューマンドラマです。

原田美枝子の短編小説を実写化した「愛しのハーフ・ムーン」や、アカデミー賞外国語映画賞に輝いた「おくりびと」など。

ラブストーリーから人情ものまでの幅広いジャンルでの創作活動を続けている、実力派の映画作家がメガホンを取りました。

2005年の「北の零年」、2012年の「北のカナリアたち」に続いて東映が制作して吉永小百合の主演で送る北海道シリーズ第3弾作品になります。

第42回日本アカデミー賞では、優秀作品賞から優秀主演女優賞までの全12部門受賞を達成している作品です。

歴史の荒波に立ち向かっていった、ひとりの母親の波乱万丈な生きざまが映し出されていきます。

あらすじ

1905年のポーツマス条約締結によって日本の領土となっていた南樺太の江須取で、江蓮一家は製材所を営みながら静かに暮らしていました。

1945年の日本の無条件降伏以降ソ連軍の攻撃は激しさを増していく中、ふたりの息子の身を案じていた母親のてつが決意したのは樺太の脱出です。

第二次世界大戦の終結もない当時では多くの兵隊たちが外地から帰還していないこともあって、次々と一般の市民がターゲットになっていきます。

必死の思いで子供たちを守り抜いたてつが、オホーツク海を越えて命からがらたどり着いた先は北海道北東部の網走です。

1971年、ふたりの息子のひとりである修二郎は逞しく成長してアメリカに渡って社長として成功を収めまています。

15年ぶりに網走に戻った修二郎は変わり果てたてつと再会し、失われた時間を埋め合わせるかのようにふたりで北海道各地を巡る旅にでるのでした。

母の温かさを体現するのは日本を代表する名女優

ヒロインの江連てつを演じているのは、昭和の時代から日本映画界をリードし続けてきた吉永小百合です。

この映画が実に120本目の主演作品であるという、その積み重ねてきたキャリアには感嘆させられますね。

美しくも何処かその佇まいが儚げなのは、自分自身が生き残ったことに対して負い目を抱えているからなのかもしれません。

てつの息子・せいたろうと修二郎に扮している、阪本颯希と土屋慶太のふたりの子役の繊細な演技にも好感が持てました。

怯えた表情を見せる子供たちを、寒さから庇う母親の優しさには心温まるものがあります。

成長した修二郎の役を務めているのは堺雅人で、長らく疎遠になっていた母を戸惑いながらも受け入れていく過程を情緒豊かに表現していました。

桜を守り続けてきた人たち

「桜守」と呼ばれている人たちのことを聞いたことがありませんか?害虫駆除や剪定作業によって桜の木の育成をサポートのは、林業従事者や樹木医ばかりではありません。

地元の人たちや一般のボランティアによって、お花見のシーズンだけではなく季節を通して地道な活動を続けてきました。

そんな名もない無数の桜のお医者さんに捧げられたような、優しさ溢れる映画に仕上がっています。

本作品に登場するのは寒冷な気候に強く遅咲きとして有名な、エゾヤマザクラです。

映画の冒頭では江蓮一家が日本から持ってきた桜の種を、樺太の地で育てている場面もあります。

離れ離れになった家族が再びひとつになる場所も、満月の夜に雪景色を背景にしてどっしりと聳え立つ桜の下で美しいワンシーンでした。

冬の厳しさを癒すメロディー

重いテーマを扱っていて時には悲惨なエピソードも語られていく本作ですが、随所に鳴り響く音楽によって不思議と悲壮感はありません。

メインテーマはシンガーソングライターの小椋佳が作曲した「花、蘭の時」で、出演者によるコーラスシーンも用意されています。

ロックバンドの99RadioService、アイドルグループで活躍していた仙石みなみ、音楽ユニットとして活動している田崎あさひと長谷川萌美。

ジャンルを超えたミュージシャンたちとのコラボレーション企画も効果的です。

シリアスな人間ドラマの中に舞台パートが挿入されていたり、歴史ものでありながらミュージカルにも挑戦していたりと斬新なアイデアも盛り込まれていて楽しめますよ。

終わらない戦禍と失われていく人命

第二次世界大戦が終わってからも南樺太で繰り広げられた、激しい地上戦の模様から物語は幕を開けていきます。

大勢の避難民を載せた漁船が、巨大な戦艦からの魚雷攻撃によって沈んでいくシーンには圧倒されました。

真っ先に逃げ出したのはお偉いさんたちや軍隊の指導者たちで、取り残されてしまったのはお年寄りや女性・子供たちなど銃後の人々です。

戦時中は国家権力への絶対的な忠誠を力尽くで押し付けながらも、戦況が不利になった途端の変わり身の速さにはあきれ果ててしまいます。

戦友を密告してまで助かろうとする、極限状況下に置かれた兵士のエピソードも驚きです。

それとは対照的に江蓮てつのように、自らの命をかけて愛する子供たちを守り抜こうとする一途な気持ちには胸を打たれました。

同じ日本人でありながら分かち合うことが出来ない痛み

それまでは日本であったはずの南樺太が、ある日突然に外国となってしまう故郷喪失への想いが伝わってきました。

辛うじて生き延びた江連一家は流れ着いた先の北海道で新しい生活をスタートさせますが、そこで待ち受けているのは想像を絶するほどの苦しい食糧事情や経済的な困窮です。

外地からの引き揚げ者に時折浴びせられる、謂れのない差別や偏見についても考えさせられます。

同じ日本国民でありながらも、哀しみや苦しみを分かち合うことが出来ないジレンマが何とももどかしいです。

この時の過去の過ちは、今の時代に残されている北方領土問題や沖縄県内の外国基地問題にも繋がるものがありました。

蘇る記憶と明かされる真実

てつの次男・修二郎が、母の期待に応えて逞しく成長していく姿が微笑ましかったです。

アメリカへ渡って事業の立ち上げ、裕福な家庭で生まれ育った女性との結婚ととんとん拍子に成功していきます。

その一方では戦時中の辛い思い出や、戦後間もないころの母の苦労を忘れていくようで寂しく感じてしまいました。

そんな修二郎が心変わりをするきっかけは、てつに浮上した認知症疑惑です。

久しぶりの再会と親子水入らずの旅行を通して、修二郎が社会的な成功以上に大切なものに気付いていく様子が感動的でした。

てつの奇行は認知症ではなく戦争によるPTSDだと判明して、修二郎自身も失っていた幼少期の記憶を取り戻していく意外な展開に引き込まれていきます。

こんな人におすすめ

戦争による理不尽な暴力の犠牲となって、失われていった数多くの生命が痛切です。

多くの亡くなっていった肉親や仲間たちの無念さを背負って自分たちが生き続けていくことを誓う、桜の木の下での修二郎とてつの決意には強く心を揺さぶられました。

「北の」シリーズを締めくくるのに相応しい大団円を描きながら、新たな「桜」シリーズの始まりを告げるようなクライマックスも心憎いですね。

2014年に長谷川孝治の舞台劇を大林宣彦監督が映像化した「野のなななのか」から、実際に起こった事件からインスパイアされた村山三男監督の「樺太1945年夏 氷雪の門」まで。

樺太の歴史をテーマにした映画に興味のある方たちは、是非ともご覧になって下さい。

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