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キャスト・スタッフ
「ブラッド・ファーザー」をサクっと解説
ライター/ジョセフ
作品概要
「ブラッド・ファーザー」は2017年の6月3日に劇場公開されている、ジャン=フランソワ・リシェ監督によるアクションドラマです。
名女優サリー・フィールドの息子で脚本家としても活躍している、ピーター・クレイグの小説「Blood Father」がもとになっています。
フランスに実在したひとり犯罪者の数奇な運命に迫る「ジャック・メスリーヌ」から、コルシカ島の豊かな自然と中年男性の悲哀をテーマにした「避暑地で魔が差して」まで。
冒険ドラマからロマンティックコメディーまでの幅広いジャンルでの創作活動を続けている、1966年生まれでパリ出身の映画作家がメガホンを取りました。
愛憎半ばする親子の関係性と、麻薬カルテルと繰り広げる壮絶な戦いを描いた作品です。
あらすじ
仮釈放中の身のジョン・リンクは、刺青師として働きながらトレーラーハウスで細々と生活しています。
アルコール依存性が原因で人間関係は破綻してしまい、 話相手は親友のカーヴィしかいません。
久しぶりにかかってきた電話は、3年前に当時14才で失踪した娘のリディアからでした。
現在お付き合いをしているジョナが麻薬密売組織に所属していて、強盗事件に巻き込まれたようです。
ふたりで押し入った先の家主を殺害するように命じられたリディアは、手渡された拳銃を咄嗟にジョナに向けて発砲してしまいました。
組織の構成員から追われるようになった彼女は、長らく疎遠にしていた父親に助けを求めています。
慌ててジョンが車で迎えに行くと、 違法な薬物に溺れて変わり果てた姿のリディアと再会を果たすのでした。
熱すぎる父親を演じるのは私生活でも波乱万丈な俳優
主人公のジョン・リンクを演じているのは、肉体派俳優のメル・ギブソンです。
近未来のオーストラリアを舞台に暴走族と闘う「マッドマックス」が代表作ですが、プライベートでは何かとスキャンダルが絶えません。
近頃ではアルコール依存症患者の支援センターに通所してリハビリに励んでいるようで、正に本作品のジョンの人生と重ね合わせてしまいました。
ジョンの娘・リディアには、エリン・モリアーティが扮しています。
映画の序盤こそ父親への生理的な嫌悪感を露にしていますが、中盤以降に微妙な心変わりをしていく様子に注目してみて下さい。
ジョンの唯一無二の理解者・カーヴィ役を務めているのは、個性派の役者さん・ウィリアム・H・メイシーです。
一度見ると忘れられない顔立ちで、憎まれ役や情けないキャラクターにはピッタリですね。
アウトローとしての生きざまを貫き通す
世間一般の価値観や常識には決して捉われることのない、ジョン・リンクの独自の美学と自由気ままなライフスタイルには魅了されてしまいました。
1台の古ぼけたキャンピングトレーラーの他には、土地も財産も所有していません。
トレーラーパークには同じような仲間たちが集まっていて、小さな地域コミュニティーが自然と形成されているのも面白かったです。
タトゥーを彫る仕事は如何にも経済的に不安定ですが、老後の生活にもまったく不安を感じていません。
一見すると人生を投げているようにも思えるジョンが時おり口にする知的な言葉からは、哲学的で深いメッセージが込められています。
物質的な豊かさを追い求めている現代社会への、痛烈な批判を感じてしまうはずです。
何時からでも何度でもやり直す人たち
かつてはお酒に溺れていたジョン・リンクが、如何にして2年もの間断酒を続けているのかその秘訣が語られていきます。
アルコホーリクス・アノニマスという、アルコール依存患者のための支援団体の活動内容がリアルに映し出されていました。
あくまでも自助グループであるために、患者自身やその家族・恋人・友人などが自主的に運営している様子が特徴的です。
日本でも飲酒運転などが社会問題になり自治体の支援活動が始まっていますが、アメリカでは1930年代から地道な取り組みが続いているのは驚きですね。
ジョンが通っているリハビリの会は特別な会員制度もなく、入会手続きや会費も必要ありません。
ただ「お酒を辞めたい」という切実な願いだけで集まった人たちが、それぞれの気持ちをありのままに打ち明けるミーティングの風景は心に残ります。
親子のつかの間の水入らずと迫りくる危機
裏社会の仲間から付きまとわれているリディアを、しつこく問いただすことなく自宅に匿ってあげるジョンの度量の大きさには感心させられました。
久しぶりの親子の対面には会話も少なく、気まずい沈黙が漂っているばかりです。
自身がアルコールをきっぱりと断ち切ったように、娘の薬物乱用対しても厳しく諌める父親らしい一面も垣間見ることが出来ます。
失敗だらけだった自分のような人生を、リディアだけには送って欲しくないという親心なのかもしれません。
夜遅くに襲撃にやって来たジョナの仲間たちをあっさりと撃退してしまうほどの、老いてもなお衰えることのない肉体的な強さと意志力が格好良かったです。
身の危険を感じたジョンとリディアはトレーラーハウスを脱出して、組織に雇われた殺し屋から追われるようになっていきます。
昔の悪友との面会と死の淵から甦った悪漢
現金強奪事件から刑務所内での大暴れまで、若き日のジョンが残した数多くの破天荒なエピソードには圧倒されました。
かつては罪を犯して服役していたジョンですが、厳しい取り調べにも仲間の名前を白状することはありません。
そんな彼の男気溢れる人柄に、犯罪者時代のライバルアルトゥーロ・リオスが魅せられてしまうのも当然でしょう。
いま現在でも塀の中にいるアルトゥールと、防弾ガラス越しに対面するシーンにはホロリとさせられます。
多くを語ることなく視線を交錯させるだけで全てを分かり合えるふたりからは、敵対関係でも友情でもない不思議な絆で結ばれているはずです。
アルトゥーロの情報網からはジョナの生存を知ったジョンですが、時を同じくしてリディアは拉致されてしまいます。
最終決戦と父としての決断
リディアの命と引き換えに取り引き現場に現れたジョンからは、「マッドマックス」に登場する叩き上げのパトロール隊員を彷彿とさせるものがありました。
腕っぷしの強さと度胸ばかりではなく、乗ってきたオートバイを自爆させたり地雷や手榴弾などのトラップを予め仕掛けておくなどの策士ぶりが心憎いです。
卑劣なジョナの手下たちが次から次へと吹き飛んでいくシーンと、生き残ったジョナと一騎打ちで繰り広げられる壮絶な銃撃戦が手に汗握ります。
バトルでは勝利を収めてリディアを何とか奪還しますが、飛び交う銃弾から娘を守るために盾となったジョンの姿が痛々しいです。
騒ぎを聞きつけて駆け付けた警察に、リディアは無事に保護されてジョナは逮捕されます。
こんな人におすすめ
麻薬依存患者用の更正施設で社会復帰に励むリディアが、亡き父への感謝の思いを告白するシーンで本作品は幕を閉じます。
「バウンティ/愛と反乱の航海」でのフレッチャー・クリスチャン役や、「青春グラフィティ」でのスカロップ役など。
若き日のメル・ギブソンの活躍に熱狂した世代に見て頂きたい1本です。
自暴自棄に陥っていたジョン・リンクが、娘を守り抜く戦いを通して再び人生と向き合っていく姿からは勇気を貰えます。
仕事が忙しく家庭では年頃の娘さんといまいちコミュニケーションがとれない、そんなお父さんは是非ともこの映画をご覧下さい。
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