ガザの美容室|動画配信情報・感想・評価・解説

ガザの美容室
2015年製作/84分/パレスチナ・フランス・カタール合作 予告動画を検索
ロシア出身のクリスティンは、パレスチナ人の自治区・ガザへ嫁ぎ美容室をオープンする。経営は好調だったが、反社会組織の構成員であるアハメドの嫌がらせに悩まされている。ある時、大通りの方から銃声が聞こえた。またもアハメドの嫌がらせかと思いきや、非常事態を告げるサイレンが鳴り響くのだった。

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キャスト・スタッフ

監督
脚本
原作
-
出演
音楽
製作

「ガザの美容室」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「ガザの美容室」は2018年の6月23日に、タルザン・ナサールとアラブ・ナサールによって劇場公開されました。

イスラエルとパレスチナ人との激戦区・ガザで生まれ育った、双子の映画監督が共同でメガホンを取っています。

パレスチナ・フランス・カタールと国境を越えた3カ国による、合同製作によって2015年に完成に漕ぎ着けました。

第68回のカンヌ国際映画祭では批評家週間に正式出品されていて、国内外を問わずに高い評価を集めています。

監督たちが幼少の頃に体験した出来事や関わってきた人物、実際に起きた事件からインスパイアされたストリートです。

中東の紛争地域にひっそりと店を構える小さな美容室に閉じ込められた、女性たちの切実な目線から世界に平和を訴えかけていきます。

あらすじ

ロシア出身のクリスティンは、パレスチナ人の自治地域・ガザへ嫁いだ後にこの地で美容室をオープンしました。

お店自体は地元の女性客で賑わっていて好調でしたが、反社会的勢力の構成員・アハメドの嫌がらせに悩まされています。

違法な薬物や軍からの横流しで手に入れた武器をちらつかせてストリートチルドレンを支配し、アルバイト店員としてここで働くウィダドも彼には逆らえません。

近頃では何処からか調達してきたライオンをけしかけてくるなど、迷惑行為はエスカレートしていく一方です。

この日も満杯に入った予約の対応にクリスティンとウィダドが追われていると、大通りの向こうから銃声が聞こえてきます。

またもやアハメドのいたずらかと思いきや、非常事態を告げるサイレンが鳴り響きクリスティンと客は店の中に閉じ込められてしまうのでした。

非日常を生きる女性たちを熱演

故国から遠く離れた場所で美容師として働くヒロイン・クリスティンを、ヴィクトリア・バリツカが好演しています。

時には悪漢による営業妨害に悩まされながらも、時には戦争という生命の危機に怯えながらも屈しない強い意志が魅力的でした。

エフィティカール役を務めるヒアム・アッバスは、イスラエル映画界に止まることなく世界で活躍している女優さんです。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のアメリカ映画「ブレードランナー2049」や、ジャン・ベッケル監督のフランス映画「画家と庭師とカンパーニュ」等。

2007年にトム・マッカーシー監督が発表した「扉をたたく人」では、ニューヨークに生きるシリア系難民の母親を演じていたのが忘れられません。

本作では夫がいながらにして若い男性とのロマンスに、年甲斐もなくときめいてしまう中年女性の滑稽さを見事に表現しています。

多種多様な女性客の背景に迫る

華やかなファッションに身を包みながら最先端のヘアスタイルを追い求めていく女性たちの姿が華やかでした。

それと同時に彼女たちが家庭の中やパートナーとの間に抱えている、一筋縄ではいかない事情も徐々に浮かび上がっていきます。

敬虔なイスラム教徒のゼイナブはヒジャブと呼ばれている大きなスカーフで身体全体を覆っていて、散髪の時を除いては肌を見せることはありません。

厚く覆われたヴェールの向こうからは、彼女が歩んできたストイックな人生を垣間見ることが出来るでしょう。

ゼイナブにこのお店を紹介したのはサフィアでしたが、口さがなく異性との関係も派手でまるっきり正反対な性格です。

男女交際や婚姻にまつわる考え方も実に多種多様で、今現在のパレスチナ社会の縮図のようで興味が涌いていきます。

密室内から外の世界を見つめ直す

「あくまでも政治的な映画には終わらせたくない」というのは、本作の監督を務めているナサール兄弟の言葉です。

タイトルの原題は「degrade」とは「戦況の悪化」という直訳の他に、髪型のレイヤードスタイルとも取れて意味深ですね。

混乱を極める政界の腐敗や深まっていく一方な人種・宗教間の対立、失われていく地域社会や家族の繋がり。

全てにおいて男性主導のもとで行われてきたという、パレスチナのこれまでの歴史に思いを巡らせてしまいました。

女性たちが息を殺している美容室の薄い外壁の向こう側で、激しい銃撃戦が繰り広げられていることが全てを物語っています。

我慢に我慢を強いられてきた彼女たちのリアルな本音には、遠く離れた国に住んでいても胸に突き刺さるはずです。

人間の罪悪を背負わされた1匹のライオン

パレスチナのカリスマ・アラファト議長の「われわれはライオンを失った」という言葉を覚えている方は多いのではないでしょうか。

正にパレスチナ人にとっては権力の象徴で、本作品の中でも無法者のアハメドが恋人を脅すために店頭にライオンを放ちます。

動物園を襲撃して檻を抉じ開けて盗み出してきたようで、ライオンの方からすると堪ったものではありません。

人間の身勝手な権力争いに利用されてしまう獣に、超大国の思惑で翻弄されていく小国の苦悩にも繋がるものがありました。

激しい銃撃戦が収束した後の美容室の前の広場に横たわっている、物言わぬ1頭のライオンが何とも後味が悪いです。

過酷な状況でも営業続行

店内の灯りがやたらとチカチカしているのは、この地域ならではの電力供給事情や不安定なインフラのせいなのでしょう。

遂には停電に見舞われて順番待ちのお客さんからは非難の雨あられですが、クリスティンは慌てふためくことはありません。

小さな自家発電装置を起動させて、専用の業者からは燃料を取り寄せて営業を続けてしまうほどの逞しさでした。

出産から子育てに家事全般に忙しく、夫や彼氏からのDVに離婚調停といった様々な問題を抱えている常連さんばかりです。

そんな女性たちからはこの店は憩いの場として求められていて、如何なるハプニングが起ころうとも店は閉めないというクリスティンの決意が感動的です。

戦乱の国の息苦しさ

冷房装置の効きていないお店の中は如何にも暑苦しそうですが、従業員も客も誰ひとりとして窓を開けようとはしません。

イスラエル軍からの空爆ばかりではなく、同胞の自爆テロの危険と常に隣合わせの彼女たちにとっては当然のことなのでしょう。

そんな閉ざされた表のシャッターを必死になって叩くのは、これまで散々とこの美容室に迷惑をかけてきたアハメドです。

自分たちが助かるためにアハメドを見殺しにするのか、命の大切には男女の区別はないと彼に対して救いの手を差し伸べるのか。

瀕死の重症を負ったアハメドと泣き叫ぶ女性陣の板ばさみとなってしまったクリスティンは、難しい選択を迫られることになります。

こんな人におすすめ

クリスティンやウィダドの前では強がっておきながら、いざというときには形振り構わずに彼女たちに助けを求めるアハメドが情けないです。

そんな見栄っ張りな男たちの「強がり」こそが、今の時代における世界各地での分断や武力衝突の火種となっているのかもしれません。

アメリカ南部の小さな田舎町を映した「マグノリアの花たち」から、漁村の女性たちの憩いの場を描く「パーマネント野ばら」まで。

世界各国の美容室を舞台にした作品と見比べてみると、より一層この映画を楽しむことができると思います。

中東に生きる女性たちの流行の髪型も多数登場しますので、美容師を目指している皆さんも是非ともご覧ください。

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