教誨師|動画配信情報・感想・評価・解説

教誨師
2018年製作/114分/日本 予告動画を検索
プロテスタントの牧師・佐伯保は、2か月ほど前から月2回の教誨師のボランティアを始めている。担当しているのは、とある留置所の死刑確定者だ。佐伯は6人のくせ者たちに戸惑いながらも少しずつやりがいを見出していく。そして、ひとりの死刑執行日が迫ってくるのだった。

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「教誨師」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「教誨師」は2018年の10月6日に劇場公開されている、佐向大監督によるヒューマンドラマになります。

ミュージシャン志望の自堕落な若者が狂言誘拐へと巻き込まれていく顛末に迫る「ランニング・オン・エンプティ」から、ふたりの若者の自由気ままな旅をテーマにした「楽園」まで。

コメディードラマからロードムービーまでを幅広く手掛けてきた、1971年生まれ横須賀市出身の映画作家がメガホンを取りました。

2018年2月21日に急逝した大杉漣にとっては最後の主演作であり、生涯で唯一プロデューサーを務めた作品です。

ひとりの新米教誨師と6人の死刑囚が拘置所内で心通わせていく様子が、静かなタッチの映像から描かれています。

あらすじ

佐伯保の職業はプロテスタントの牧師ですが、月2回の教誨師のボランティアを始めたのは2カ月ほど前からでした。

現在はとある拘置所で死刑確定者を担当していますが、どうしても身構えてしまい腹を割って会話をすることが出来ません。

豪放磊落な吉田睦夫、寡黙な鈴木貴裕、温厚な小川一、最年長の進藤正一、年若い高宮真司、口うるさい野口今日子。

6人のくせ者揃いの死刑囚に戸惑いながらも、佐伯は教誨師としてのやりがいを少しずつ見出だしていく毎日です。

そんな佐伯自身にも決して周りの人たちには打ち明けることの出来ない、大きな秘密を抱えて生きています。

自らの過去と6人の罪と向き合い始めていた佐伯でしたが、ひとりの死刑執行日が着々と迫ってくるのでした。

死と向き合った名俳優

6人の死刑囚たちと真正面から向き合っていく主人公・佐伯保の役に、大杉漣が俳優生活の集大成とも言えるような凄みで挑んでいます。

重いテーマを果敢に扱っていく意欲作ながらも、その人間的な魅力が溢れていて不思議と取っ付きにくさはありません。

元暴力団の組長を怪演している光石研や、物言わぬ謎めいた死刑囚を演じている古舘寛治などいい味を出していました。

舞台やテレビドラマを中心にして活動を続けてきた玉置玲央が、映画初出演にしてキーパーソンに抜擢されています。

生まれながらにして冷血な殺人者の役に徹していて、その言葉の応酬に圧倒されてしまうのは主人公の佐伯だけではないでしょう。

映画序盤では高圧的な振る舞いを崩さなかったのが、終盤では僅かながら人間らしい感情が涌いている名演技に注目して下さい。

一歩間違えてあちら側に行った人たち

死刑囚をひとまとめに凶悪な犯罪者として描くことなく、それぞれのバックグラウンドを深く掘り下げていきます。

反社会的勢力の親分からふたりの子供を育てていたごく普通のお父さん、読み書きさえままならないホームレス。

自らの理想とする社会を創り上げるために大量殺人犯とかした青年や、紅一点の美容師までいて千差万別です。

決して心を開くことなく無言を貫く者もいれば、死刑囚とは思えないほど饒舌でお節介焼きな人物までいました。

突如として未解決事件を告白し始めて、サスペンスドラマのように早変わりしてしまう展開には驚かされます。

罪の意識が浅いのか深いのか、情状酌量の余地ないのか死刑は妥当なのか、取り調べ段階での自白は信用できるのか冤罪はなかったのか。

小さな躓きからあっという間に転落してしまった彼ら彼女らの生きざまを知ると、塀の外にいる我々もまかり間違えば彼らと同じように道を踏み外してしまうような気がしてしまうはずです。

知られざる教誨師の実態に迫る

教誨師という日常からかけ離れた特殊な取り組みに携わっている人たちの、その切実な苦労に触れることが出来ました。

具体的な活動内容は拘置所で執行を待つ死刑囚や刑務所で刑期を務めている受刑者たちとの面談で、宗教的な教誨に限りません。

死刑囚にとっては唯一肉親以外で面会が許された民間人でもあり、雑談やプライベートな悩み事まで聞いてくれます。

一方の教誨師からすると無報酬で引き受ける大役で、面会を重ねた死刑囚の刑執行にも立ち会わなければなりません。

死刑が確定すると刑務所ではなく拘置所の独居房で残された時間を過ごすことになり、月2回の教誨の時間は貴重な外部との接触なのでしょう。

いつかは絞首台に立つことになる死刑囚の過酷な運命を見届けるには、並々ならぬ覚悟が求められるはずです。

密室の中で光を浴びて佇む

オープニングで紅葉のシーズンを迎えていることが何となく分かる程度で、回想シーンを除いて外の風景が映し出されることはありません。

面会室に置かれた卓上型の小さなカレンダーを見ることで、辛うじて季節の移り変わりを確認することが出来ます。

1枚ずつめくるごとにバランスが悪くなっていくようで、12月が近づくに連れて倒れ易くなっているのが芸が細かいです。

窓際に座った佐伯の背後からは僅かに陽が射し込んでいて、後光を浴びているかのような神秘的な佇まいでした。

この部屋で佐伯と対峙することになるのは、いずれも人生において取り返しのつかない過ちに手を染めた者ばかりです。

静寂の教誨師と異変を察知した死刑囚

全編を通して静かな哀しみが漂っているのは、狂言回しである佐伯が6人の話に口を挟まずに耳を傾けているからかもしれません。

死刑囚を非難することもなく見下すこともなく、最大限の敬意を払って聖書の教えを紐解いて魂の救済を試みます。

例え教誨師と死刑囚との間に束の間の信頼関係が芽生えたとしても、法務大臣のハンコひとつであっさりと消え去ってしまうのが残酷な現実です。

遂にはひとりの死刑囚に刑が執行されることが決まりましたが、その名前は教誨師には直前まで知らされることはありません。

勘の鋭い死刑囚は刑務官の微妙な変化を鋭く察知してしまい、特に午前9時から午前11時にかけての呼び出し時間は緊張感が走ります。

現実の世界へ向けた確かなメッセージと静かな哀悼

2016年7月に相模原市で発生した事件の犯人を暗示させるような、高宮真司の身勝手な独白には憤りを感じました。

現実の社会に満ちた不寛容さや殺伐として時代の閉塞感を、拘置所内だけで巧みに表現していて考えさせられます。

あくまでも自らの犯行を正当化し続ける高宮に対して、遂には法の裁きが執行されることになるクライマックスが圧巻です。

処刑台へと送られていく高宮が最期に残したひと言と、その言葉の重さを噛み締める佐伯の姿が心に残りました。

二度と同じような事件が起きないようにという真摯な願いとと共に、被害者へのレクイエムを捧げつつ物語は幕を閉じていきます。

こんな人におすすめ

厳罰化を望む遺族のためと犯罪発生率を抑制するためにも死刑制度はこれからも維持すべきなのか、人道的な観点から海外の多くの先進国のように廃止すべきなのか。

物語の中ではその明確な答えが示されることはなく、特定の思想や主義を一方的に押し付けることもありません。

本作品の鑑賞を通して司法制度が抱えている問題点や矛盾について、様々な立場や幅広い年齢層から意見が出てくることが何よりです。

名俳優にして愛すべきバイプレイヤーでもある、大杉漣との最期の別れが惜しまれるような映画でもあります。

一般映画初出演となった「ガキ帝国」や1982年の隠れた名作「ウィークエンド・シャッフル」等、初期の大杉作品に慣れ親しんだ皆さまは是非みて下さい。

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