幸福なラザロ|動画配信情報・感想・評価・解説

幸福なラザロ
2018年製作/127分/イタリア 予告動画を検索
小さな村・インヴィオラータで暮らす青年・ラザロたちは、侯爵夫人から小作農制度の廃止を知らされずに暮らしていた。夫人がこの村の住人を騙していることが許せない息子のタンクレディは、ラザロと手を組み、懲らしめることに。遊び半分だった二人の行動がいつしか警察が出動する騒ぎになり…。

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キャスト・スタッフ

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音楽
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製作

「幸福なラザロ」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「幸福なラザロ」は2019年の4月19日に、アリーチェ・ロルケバル監督によって劇場公開されています。

養蜂業を営む一家の日常を捉えた「夏をゆく人々」や、少女の純真無垢な目を通して宗教の欺瞞に迫る「Heavenly Body」まで。

叙情的な作品から社会的なテーマまで手広く取り上げている、1982年生まれでトスカーナ地方出身の新鋭による長編第3弾です。

第71回のカンヌ国際映画祭では脚本賞に、第54回のシカゴ国際映画祭ではゴールド・ヒューゴ賞に輝きました。

実際にイタリアで起こった詐欺事件からインスパイアされたストーリーになり、とある青年が辿っていく数奇な運命に迫ったヒューマンドラマです。

あらすじ

イタリア半島の山岳地帯に佇む小さな村・インヴィオラータでは、中央政府によって廃止された小作農制度が未だに続いていました。

この村に祖母のふたりっきりで暮らしている青年・ラザロは、元来のおとなし過ぎるせいか、何かと邪険に扱われてばかりです。

そんなある日のこと、この地域一帯を支配下に収めているデ・ルーナ侯爵夫人が息子のタンクレディと見回りにやって来ます。

母親がこの村の住人を騙していることに反感を抱いていたタンクレディは、ラザロと結託して高額の身代金を騙し取り懲らしめてやるつもりです。

ふたりで遊び半分で脅迫状を送り付けたりしているうちに、いつしか警察が出動する大騒ぎにまで発展してしまいます。

警察官の何気ないひと言によって侯爵夫人の嘘が明らかとなり、村人たちは外の世界へと踏み出していくのでした。

静かなる無名の俳優と名監督から愛される女優さん

村社会と都会を渡り歩きながら打ちのめされていく主人公ラザロを、アドリアーノ・タルディオーロが言葉少なに演じていきます。

イタリア内陸部のオルヴィエートの出身の1998年生まれになり、高校在学中に応募したオーディションで1000人以上の候補者の中から選び出されました。

世の中の不条理を全てひとりで背負っているかのような苦悩に満ちた表情は、これまでに演技経験が全くないとは到底信じられません。

現在はラツィオ州の北部にあるヴィテルボ大学へ通っているごく普通の大学生だそうで、スクリーンへのカムバックが楽しみですね。

汚れを知らないラザロに対して痛烈な洗練を施す、アントニア役に扮しているアルバ・ロルバケルも魅力的です。

「ボローニャの夕暮れ」ではプピ・アヴァティ監督から、「ミラノ、愛に生きる」ではルカ・グァダニーノ監督とイタリア映画界の名匠から重宝されています。

海の向こうにも存在する搾取に光を当てる

物語の時代背景こそ20世紀後半のイタリアに設定されていますが、21世紀の日本に生きる我々とも無関係ではありません。

小作人を何食わぬ顔で欺き通しているデ・ルーナ侯爵夫人の厚顔無恥な強欲さには、今の時代における悪質なブラック企業の経営者にも繋がるものがありました。

タバコ農園で低賃金重労働を強いられる村人の姿が、物流センターでルーティンワークに没頭するワーキングプアに重なります。

侯爵夫人や現場監督官によって村人たちが虐げられて、その村人たちの怒りや不満の矛先がラザロへと向けられて。

貧しさ故に犯罪行為へと走ってしまうアントニアの息子や夫たちには、社会の枠からこぼれ落ちてしまった人々へのセイフティネットの必要性を感じます。

権力者から労働者への搾取や格差を産み出すシステムが罷り通るのは、いつの時代どこの国や地方でも同じなはずです。

つらい現実を生き抜くための癒し

過酷な現実の合間にも、所々でユーモアや爽やかな情景が挿入されていき束の間の安らぎを得ることが出来ました。

インヴィオラータで行われる結婚式には、豪華なディナーや飾り立てたウエディングドレスも必要ありません。

幼い頃から家族同然の付き合いのある地元の仲間たちが大勢で集まって、花嫁への手作りの音楽をプレゼントします。

新郎から新婦へのシンプルなプロポーズが無事に済んだ後は、葡萄酒の回し飲みありドンチャン騒ぎありと朝まで終わりません。

美術スタッフとして加わっているのはエミータ・フリガートで、侯爵夫人のお屋敷から村外れにあるラザロの隠れ家までを雰囲気たっぷりに作り込んでいます。

アンテナが付いたガラケーやカセットテープのウォークマンなど、小道具にも懐かしさとこだわりがあって面白いです。

虐げられた人たちの逆襲

雨季になると激しい水害に襲われて外部との交通手段が遮断されて、夏になると太陽の光が容赦なく照りつけて日照りや食糧難に悩まされて。

厳しい気候と閉鎖的な風習に包まれている、文明の進歩から置き去りにされたかのような渓谷沿いの集落が印象的でした。

周りの人たちから理不尽な仕打ちを受けているラザロですが、感情を爆発させることも抵抗することもありません。

他者を攻撃することだけで頭がいっぱいになっている、現代の閉塞感とは凡そ無縁な存在で見ているだけで清々しいです。

そんなラザロの純真さに引き寄せられていくかのように、村には訳ありな人たちが次から次へと集まってきます。

毒蛇の息子と打ち解ける

「毒蛇」の異名を持ったデ・ルーナ侯爵夫人には他人を寄せ付けない威圧感が、彼女の息子・タンクレディには寄る辺の無さが。

およそ人里離れた田舎には似つかわしくない、ミステリアスな雰囲気を親子ともども漂わせていました。

お互いの孤独を埋め合うかのように惹かれ合っていく、ラザロとタンクレディの厚い友情が微笑ましく映ります。

母親の注意を惹きたいがために自らの誘拐を演出してしまう、大人になりきることが出来ないタンクレディの内面もいじらしいです。

この狂言誘拐に言われるままに手を貸すこととなったラザロは、不注意から崖の下へと滑り落ちていき長く不可思議な眠りにつくことになります。

変わっていく周囲と変わらないラザロ

谷底に転落して気絶していたラザロが、オオカミの息吹きを顔面に受けて意識を取り戻すシーンが神秘的でした。

村人たちに見捨てられて廃虚と化した故郷・インヴィオラータを背景にして、あの頃の変わらないままで立ち尽くすラザロのシルエットが脳裏に焼き付きます。

かつては思うままに権威を振るっていた侯爵一家は、時代の流れと共にすっかり没落して見る影もありません。

ラザロと一緒に生き生きと遊び回っていた若さ溢れるタンクレディも、今では中年期にさしかかった冴えない風貌の男性です。

映画前半での豊かな自然に囲まれた美しさが夢のように消えていき、物語の舞台は無機質な都会へと移ります。

こんな人におすすめ

すっかり近代化された街並みの中を行く宛もなくさ迷い歩いていくラザロの後ろ姿が、浦島太郎のようで哀れでした。

消えたはずのオオカミが何処からともなく帰ってくることによって、本作品はクライマックスへと導かれていきます。

銀行強盗の濡れ衣を着せられた挙げ句に、群衆からの暴行を受けて床に横たわっているラザロが痛々しいです。

その一方では人間によって繰り返されていく愚行を全てお見通しのような、悠然と立ち去るオオカミには忘れ難いものがありました。

北イタリアの水田地帯に生きる女性たちを描いたジュゼッペ・デ・サンティス監督の「にがい米」や、今年の冬に公開予定のアミール・ナデリ監督の「山〈モンテ〉」等。

イタリアの農村部や共同自治体を舞台にした作品に興味がある皆さんは、是非ともこの1本をご覧になってください。

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