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「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」をサクっと解説
ライター/ジョセフ
作品概要
「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」はジェームズ・マンゴールド監督によって、2006年の2月18日に劇場公開されています。
ハーパーワン出版からジョニー・キャッシュによって2003年10月7日に刊行されている、「Cash:The Autobiography」を映像化したものです。
パーソナリティー障がいをいち早く取り上げた「17歳のカルテ」や、無法者と牧場主との攻防が息詰まる「3時10分、決断のとき」など。
社会派ドラマから西部劇までの創作活動を続けている、1963年生まれでニューヨーク出身の映画作家がメガホンを取りました。
実在するカントリーミュージシャンと、彼への一途な愛を貫き通したひとりの女性との日々を綴った伝記映画です。
あらすじ
カントリーミュージックの世界で一躍成功したジョニー・キャッシュでしたが、次第に違法な薬物へと溺れていました。
長らく疎遠となっている父親・レイとの関係は、兄のジャックが突然の事故によって亡くなって以来あまり上手くいっていません。
最初の妻・ヴィヴィアンとの結婚生活は、仕事ひと筋で家庭を省みることのないジョニーの生活が原因となって破綻します。
そんな踏んだり蹴ったりのジョニーが出会ったのか、シングルマザーとしてふたりの娘を育てているジューン・カーターです。
彼女の純真無垢な歌声とその心に触れていくうちに、自暴自棄に陥っていたジョニーも少しずつ自身の人生と向き合っていきます。
プライベートでもジューンに惹かれていくジョニーは、幾度となく拒絶されてもアプローチを繰り返していくのでした。
男女の愛と親子のしがらみを熱演
数多くの名曲と破天荒なエピソードを残した歌手、ジョニー・キャッシュの不屈の生きざまをホアキン・フェニックスが力演していきます。
表舞台でのスターとしての輝きばかりではなく、知られざる苦悩や弱い一面も滲み出ているのが良かったです。
そんなジョニーへの終生変わらぬ愛を貫き通した、ジューン・カーターの役にリース・ウィザースプーンが扮していました。
本作品での記憶に残る名演によって、長年の念願だったアカデミー賞主演女優賞に輝いているのも納得ですね。
ジョニーにとっては愛憎半ばする父親レイ・キャッシュを、ロバート・パトリックが威厳たっぷりと演じていきます。
「ターミネーター2」での液体人間や海外ドラマ「X-ファイル」でのドゲット捜査官など、冷血サイボーグのイメージが強い俳優さんです。
今作では昔かたぎな家長として虚勢を張りながらも、時おり人間らしい弱さや迷いを見せていて味わいがありました。
演技だけでなく歌声でも魅力
劇中に流れる曲は吹き替え録音を使用することなく、全てを主演のふたりだけで生歌でチャレンジしていきます。
ステージ上での息の合った掛け合いと、それぞれの持ち味がぶつかり合っていくデュエットシーンは必見です。
僅か3カ月のリハーサルでホアキンはジョニーの歌い方を、リースはジューンのステージパフォーマンスを身に付けてしまうほどの呑み込みの早さでした。
多忙な撮影期間中にも、専属のボイストレーナーと付きっきりでレッスンに励んだという入れ込みようには頭が下がりますね。
その努力が実を結んで2007年度のグラミー賞では、最優秀編集サウンドトラック・アルバム賞を獲得しました。
ジョニーのバリトン・ボイスとジューンの清涼感のあふれるデュエットを、観客席にいるかのような気分で堪能して下さい。
壁と線を越えていく応援ソング
ジョニーにとってのレコードデビュー曲1955年にリリースされた、「フォルサム・プリズン・ブルース」です。
高い塀に囲まれた男の哀歌は、外の世界で生きているはずの我々が抱く息苦しさにも繋がるものがありました。
映画の冒頭ではジョニーが1968年にカリフォルニア州のレプレサで敢行した、刑務所慰問コンサートの模様が映し出されていきます。
ステージの上では黒ずくめのバンドマンたちが演奏し、臨時に設置された客席から囚人たちが手拍子を打ちならす様子は圧巻です。
タイトル曲になっている「アイ・ウォーク・ザ・ライン」には、決して越えてはいけない一線について考えさせられます。
ジョニー自身があちら側へと引き込まれそうになった時にも、心の中で常にこの歌詞の中に込められているメッセージが鳴り響いていたからこそ踏み止まれたのかもしれません。
記憶の中のラジオ
連邦失業救済局で肉体労働に明け暮れているレイ・キャッシュが、顔いっぱいに浮かべている鬱屈とした表情から物語は幕を開けていきます。
アルコールで辛い現実から目を背けつつ家族には八つ当たりばかりの、すっかり荒れ果てた様子が痛々しいです。
そんな父親に振り回されながらも、古ぼけた1台のラジオから聴こえてくる音楽に耳をそばだてるひとりの少年が健気でした。
少年にとっては遥かな憧れの存在でしかなかったカーター・ファミリーが、自分たちの一家が深く関わってくるとは夢にも思っていません。
音楽だけを心の拠り所にしていた幼き日のジョニーが、後に多くの観衆たちの心を自分の歌声で湧かせていくのも不思議な巡り合わせでした。
大人の階段を上るかつての少年
夢見がちな少年からみるみるうちに青年へと成長を遂げて、現実の世界に足を踏み入れていくジョニーが逞しいです。
お付き合いをしていたヴィヴィアンとの結婚を経て、細やかな家庭を築き上げていく姿も微笑ましく映ります。
空軍に入隊したりセールスマンとして働き始めながらも、未だに進むべき道のりが分からないモラトリアム青年としての一面も持ち合わせていました。
勤務時間中にギターを片手に作曲をしてみたり、週末にはレコード会社のオーディションに応募してみたりと未練たらたらで笑わされます。
お洒落で高級感のあるダークスーツに黒のカッターシャツを大胆に合わせた独特なファッションも、しっくりと似合うような渋味のある男性になっていました。
不完全なふたりが奏でるハーモニー
熱狂的なファンの女の子に追いかけられ大きな家に住みながらも、ジョニーの横顔は何処か空虚で寂しげでした。
そんな心の空白を満たすことになるのが、全米各地を回っていた時に知り合いになったカーター・ファミリーです。
弟の自分を差し置いて父の愛を一身に受けた亡き兄にこだわり続けいるジョニー、自分よりも歌が上手い姉にコンプレックスを覚えているジューン。
大人に成りきることが出来ないふたりの男女が、お互いに足りないものを埋め合うかのような姿が心に残ります。
こんな人におすすめ
一度は全てを失ってステージを去ったジョニーが、カムバックを果たす場面で物語は大詰めを迎えていきます。
これまではライブツアーでのパートナーでしかなかったジューンとの関係が、劇的な変化を遂げていくサプライズも用意されていました。
長年に渡ってわだかまりを抱き続けていた父とも、ようやく対等に向き合っていくクライマックスが感動的です。
旧き良き時代へのノスタルジーに満ちあふれた音楽には、慌ただしい日常を忘れさせてくれるような不思議なパワーが込められていました。
いま現在のヒットチャートや流行りのミュージシャンに違和感を感じている皆さんは、是非ともこの1本をご覧になって下さい。
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