ふきげんな過去|動画配信情報・感想・評価・解説

ふきげんな過去
2016年製作/120分/日本 予告動画を検索

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キャスト・スタッフ

監督
脚本
原作
-
出演
音楽
製作

「ふきげんな過去」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「ふきげんな過去」は前田史郎監督によって、2016年の6月25日に劇場公開されているヒューマンドラマです。

15年ぶりの再会から当て所ない旅へと繰り出していく「ジ、エクストリーム、スキヤキ」や、和菓子への並々ならぬ思い入れを込めた「豆大福ものがたり」など。

自作の映像化から短編映画の脚本執筆までを続けている、1977年生まれで東京都出身の劇作家・小説家が長編第2弾を発表しました。

第19回の上海国際映画祭ではパノラマ部門に正式出品された他、第8回のTAMA映画賞でも最優秀新進監督賞に輝いています。

品川区フィルムコミッションの全面的なバックアップを取り付けて、都内各地での現地ロケを敢行しました。

刺激のない日々に飽き飽きとしていた18歳の少女と、自由気ままに生きる彼女の伯母との交流を描いた作品です。

あらすじ

東京の下町で小さな食堂を営んでいる父親のタイチと、タイチの妻・サトエに祖母を加えた4人で果子は暮らしています。

実の母親は娘を出産して間もなく行方不明となっていて、サトエと果子との間には、直接的な血縁関係はありません。

何となく通っている地元の高校も夏休みシーズンに入ったばかりで、これまで以上に果子は暇と時間を持て余していました。

そんなある日のこと18年もの長期間に渡って失踪していた、サトエの姉・未来子がふらりとその姿を見せます。

とある事件や組織と深く関わって海外や日本国内を転々としていたという他には、未来子はこれまでのことを話したがりません。

伯母に当たる年上女性との同居生活に戸惑いながらも、決まりきった果子の日常は少しずつ動き始めていくのでした。

謎めいた微笑みと仏頂面

多くの謎を抱えながらも決して多くを語ることこはない、ヒロインの未来子を小泉今日子が好演していました。

ある日突然に実家に舞い戻ってきて周りの人たちを振り回していく、はた迷惑の塊のような性格も憎むことが出来ません。

時おり披露するミステリアスな微笑みや意味深なセリフに、根なし草のような生きざまも魅力あふれています。

未来子と共にひと夏のささやかな冒険へと誘われていく、女子高校生・果子の役を務めているのは二階堂ふみです。

全編を通して喜怒哀楽はおろかニコリともしない難解な役どころを、あっさりとこなしてしまうのは流石ですね。

表向きには未来子の姪として微妙な距離感を保ちつつも、全てをお見通しのような鋭い眼差しにはドキリとさせられます。

都会のオアシス

このストーリーの舞台に設定されている、北品川のノスタルジックな街並みや行き交う人々の多様性が味わい深かったです。

果子の両親が切り盛りしている、「エジプト風豆料理」なる得たいの知れないお店も無数に軒を連ねていました。

地域住民たちから愛されている個人経営の海苔屋や文房具からは、この一帯がコンビニチェーンの出店計画に荒らされていないことが分かります。

周辺では東京オリンピックに向けた建築ラッシュの慌ただしさが増していて、遥か後方にはとうきょうスカイツリーが聳え立っていました。

乱立する高層ビルの谷間に昔ながらの日本家屋が、立ち退きに反対するかのように生き延びているようで巧ましかったです。

新しいものを貪欲に取り入れつつも、積み重ねてきた歴史の重みを大切にするこの土地ならではの風土に共感できるでしょう。

外界への扉を開く

路地裏にひっそりと店を構えている喫茶店は、果子にとっては外の世界と繋がるための重要なスポットです。

おもむろにドアベルを鳴らして店内へと一歩足を踏み入れた瞬間に、女の子から大人の女性へと変化する果子の顔つきが色っぽいですね。

自宅では寝っ転がってマンガや雑誌を読んでいるくせに、窓際の席に座って一丁前に海外の翻訳小説と睨めっこしています。

果子のお目当ては豆からこだわり抜いた淹れたてのコーヒーでも、ケーキやドーナツなどのスイーツでもありません。

ハンサムなルックスに何処か危険なムードを漂わせている、ひとりの若い男性の常連客を遠くから眺めることです。

この青年が幼い頃に巻き込まれたという「康則ちゃん誘拐事件」について詳しく知りたい方は、中郡英男が2008年6月に集英社クリエイティブから刊行した「誘拐捜査 吉展ちゃん事件」を読んでみて下さい。

川辺でワニを待つ

いかにも地方都市といった街の外れを流れる川のほとりで、果子が浮かべている不機嫌な表情のアップから幕を開けていきます。

その昔に赤ちゃんがワニに呑み込まれてしまったという、まことしやかに囁かれる都市伝説も気になってしまいました。

これといってやることもなく、嫌々ながらも家業の豆の皮剥きを手伝わされてしまうシーンがユーモアたっぷりです。

エアコンが故障中のために扇風機が一日中回り続けている、家の中のじめじめとした空気感が伝わってきました。

そんな気だるい雰囲気と時間の流れが止まったかのような場所に現れる、未来子の美しくも儚げなシルエットはおよそ似つかわしくありません。

感動の対面もなく

長らく生き別れになっていた家族が涙を流しながら抱き合って喜ぶような、お約束の場面は用意されていません。

むしろ困惑したかのような父・タイチと、ようやく「母」の役割りから解放されてほっとしたようなサトエの反応の方が理解できました。

長きに渡った不在を詫びることもなく、当たり前のように果子たちの日常へと転がり込んでくる未来の厚かましさには呆れてしまいます。

破天荒過ぎる自称「伯母」に振り回されながらも、同じ毎日の繰り返しにうんざりしていた果子が生き生きとしていく変わり様が印象的です。

些細なことがきっかけになって和室で取っ組み合いのケンカを繰り広げてしまう場面にも、身近な人の愛に餓えている果子の素顔がチラリと見えました。

全てを吹き飛ばす夜の爆弾

小学生にしてはいやに大人びた従姉妹のカナもパーティーに加入して、夜の川を3人でボートで遡っていく場面が神秘的でした。

かつては過激派グループに所属して、爆弾作りのスペシャリストだったという未来子の話はどこまでが本当か分かりません。

確かなことはいくつになっても夢を追いかけていく揺るぎない意志と、何よりも自由を愛する純真無垢な心だけです。

真夜中の静けさとこれまでの鬱憤を吹き飛ばしていくかのような、未来子の手作り爆弾の爆破音が痛快無比です。

翌朝にはカナは全身包帯でぐるぐる巻きになってしまいますが、悪びれる素振りもみせずに未来子は放浪の旅へと繰り出していきます。

こんな人におすすめ

誰しもが諦めかけたその時に絶妙のタイミングで川底から水しぶきを上げて飛び出してくる、予想外の珍客には驚かされました。

余りにも退屈な日常を抜け出した果子が、大人への階段を駆け上がっていくかのような余韻を残しながら本作品は静かに幕を閉じていきます。

未来子に纏わる謎は解き明かされることはなく、カナの小さな身体に残された傷跡はそう簡単には消え去ることはありません。

相も変わらず苦虫を噛みつぶしたような果子の顔に、一瞬だけよぎった晴れ晴れとした笑みが微笑ましかったです。

長い休みにも関わらずやりたいことがなかなか見つからない、中高生の皆さまは是非ともこの1本をご覧になってください。

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