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「ザ・バンク 堕ちた巨像」をサクっと解説
ライター/ジョセフ
作品概要
「ザ・バンク 堕ちた巨像」はトム・ティクヴァ監督によって、2009年の4月4日に劇場公開されている社会派サスペンスです。
20分間で10万マルクを用意するためひとりの女性が3度奔走する「ラン・ローラ・ラン」や、スクリーンから嗅覚を追及した「パフューム ある人殺しの物語」等。
実験的な作品からベストセラーの映像化まで挑み続けている、1965年生まれでドイツ出身の映画プロデューサーがメガホンを取りました。
1980年代に実際に発生した事件からインスパイアされていて、脚本家のエリック・ウォーレン・シンガーによって脚色されています。
2009年の2月5日に開催された第59回ベルリン国際映画祭では、オープニングセレモニーを飾っている作品です。
世界的なメガバンクの不正資金流用を巡る陰謀に、インターポール捜査官と女性検事が力を合わせて立ち向かっていきます。
あらすじ
ルクセンブルクに本店を置く世界第5位の取引金額を誇るメガバンク「IBBC」に、突如として汚職の疑惑が浮上しました。
欧州最大の軍事メーカーとして有名なカルビーニ・ディフェンス社へ、ミサイル誘導装置を買い付けるための不正資金が流れています。
内部告発を受けてインターポールが調査に乗り出し始めていき、関係者の証言を得るためにベルリンへ送り込まれたのはルイ・サリンジャー捜査官です。
一足違いで情報提供者は殺害されてしまい、IBBCと繋がりのあるドイツ警察の妨害によって思うように動けません。
以前から本件に関して合同捜査を行ってきた、エレノア・ホイットマン検事補をニューヨークから呼び寄せます。
ふたりはIBBCの頭取と面会約束を取り付けてルクセンブルクへと向かいますが、思わぬ罠が待ち受けているのでした。
豪華な俳優たちをギャラを惜しむことなく起用
愚直なまでに真実を追い求めていくインターポール捜査官、ルイ・サリンジャー役をクライヴ・オーウェンが熱演しています。
時には不当な圧力や揉み消しに打ちのめされそうになりながらも、決して諦めることのない姿勢が格好よかったです。
米国ニューヨーク地方検事局で検事補の地位に就いている、エレノア・ホイットマン役にナオミ・ワッツが抜擢されました。
司法省の顔色ばかりを伺っている弱腰な上司とは大違いで、勇気と正義感に満ち溢れているヒロインを体現していきます。
経済界を陰から牛耳る大物、ジョナス・スカルセンを威圧感たっぷりと演じているのはウルリク・トムセンです。
スチール製の義足を埋め込んだスナイパーを怪演している無名の役者さん、ブライアン・F・オバーンにも注目して下さい。
巨万の富を巡る旅
ヨーロッパ各国の主要都市からアメリカまで、世界経済を動かす核心地へと近づいていくスリルを味わうことが出来ます。
スタート地点に設定されているのはベルリン中央駅で、全面ガラス張りの改札口に虹が架かっていて美しいです。
IBBC銀行本部があるのはルクセンブルクで、アルテリッツェ河畔に聳え立つタワーマンションのような外観に圧倒されました。
イタリア・ミラノでは首相選挙を間近に控えているために、政治集会やデモなどでものものしい雰囲気が漂っています。
終盤戦の舞台となるのはトルコのイスタンブールで、イスラム教文化が根付いた街並みと歴史的建造物が味わい深いです。
旧くからアジアとヨーロッパの貿易の中継地点として栄えてきた都市でもあり、決戦の地としても申し分ありません。
美術の聖地でバトル
ベルリン旧国立美術館ではふたりの男性が密会していて、イタリアの次期首相候補をターゲットにした計画を話し合っています。
レンガと鉄で建てられた館内に展示されているフリードリヒやメンツェルの名画の静謐さと、悪巧みの生々しさとのコンテストが効果的です。
ソロモン・R・グッゲンハイム財団が運営するニューヨークの美術館で繰り広げられていく、壮絶な撃ち合いは見ごたえがあります。
実在する美術館をそっくりそのまま再現した、等身大のレプリカセットまで造ってしまうスケールの大きさにビックリですね。
中央に造られた巨大な吹き抜け構造が壮観で、高低差と死角を利用した銃撃戦を否応なしに盛り上げていました。
螺旋状の通路を猛スピードで駆け抜けていく疾走感と、無数の弾丸が飛び交う中で生まれる奇妙な友情も必見です。
小さな穴が巨大な抜け穴へ繋がる
主人公ルイ・サリンジャーの目の前で次から次へと告発者たちの口が封じられていく、波乱含みなオープニングです。
ペンライトを片手に入念に遺体をチェックして、被害者の首の後ろに空いていた小さな銃弾痕でさえ見逃しません。
やたらと怯えた表情を浮かべながら「心臓マヒ」を強調している、現地の監察医の不審な態度が気になりました。
事件の背後に見え隠れしている、国境を跨いだマネーロンダリングへと斬り込んでいく姿が勇ましく映ります。
ルイと強力なタッグを組むことになるのは、以前にマンハッタンの銀行で行われていた資金洗浄を調査していたエレノア・ホイットマン検事です。
「出口がなければ内側深くに道を見つける」というセリフ通りに、八方塞がりの中でも少しずつ突破口が開けていきます。
軍事マネーを告発
発展途上国への紐付き融資や国家権力と金融機関の癒着を始めとする、タイムリーな話題がふんだんに盛り込まれています。
武器取引によって金銭的な利益を得るだけではなく、政治的に支配していく巧妙なからくりにはビックリでした。
潤沢な資金力は大統領の政策や将軍のクーデターを操るほどで、各国の地元警察でさえも逆らうことは出来ません。
遂には国外退去へと追い込まれていくルイたちでしたが、空港の金属探知機から意外な手掛かりを掴むシーンが印象深いです。
事件の背後に時おり見え隠れしている義足の暗殺者が、各地に残していく薬莢と僅かな足跡が何とも不気味でした。
それぞれのプライドを貫き通す
ニューヨーク市警やFBIに代表されるような、アメリカ国内の様々な捜査機関の思惑が交錯していく展開が手に汗握ります。
あくまでもインターポールは情報提供や捜査協力の立場に徹しているために、直接的に容疑者を逮捕することは出来ません。
後一歩踏み込んでいけないルイのジレンマと共に、夫と幼い子供の身の安全を気遣うエレノアを葛藤にも胸が痛みました。
もはや失うものは何もないルイに対して、守るべき家族のあるエレノアとの間にも微妙な距離感が生じていきます。
自身が所属している組織のシステムや上下関係に押し潰されそうになりながらも、最後までそれぞれの正義を貫き通したルイとエレノアが感動的です。
こんな人におすすめ
一連の事件の黒幕は最後まで表舞台に姿を現すこともなく、その罪を糾弾されることもありません。
スカルセン頭取が非業の最期を遂げることによって、僅かながら希望の光が射し込んでくるようなクライマックスでした。
前半は経済ドラマのような知的で静かな語り口で進行していき、次第に事件の真相究明に引き込まれていきます。
中盤以降は観光スポット巡りや海外旅行の気分を味わえたり、有名な美術館で芸術鑑賞を楽しむことも可能です。
サスペンスものがお好きな皆さんばかりではなく、美術館巡りや旅行を趣味にしている方も是非ご覧ください。
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