未来を乗り換えた男|動画配信情報・感想・評価・解説

未来を乗り換えた男
2018年製作/102分/ドイツ・フランス合作 予告動画を検索

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キャスト・スタッフ

監督
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原作
出演
音楽
製作

「未来を乗り換えた男」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「未来を乗り換えた男」はクリスティアン・ペッツォルト監督によって、2019年の1月12日に劇場公開されています。

ドイツの小説家アンナ・ゼーガースによって1944年に発表されている、自伝的文学「トランジット」を映像化したものです。

旧東ドイツの田舎町からの脱出にひとりの医師が挑む「東ベルリンから来た女」や、夫婦の破綻と再生を描いた「あの日のように抱きしめて」等。

歴史ものからヒューマンドラマまでを手掛けている、1960年生まれで西ドイツ出身の映画作家がメガホンを取りました。

他人の人生を乗っ取った青年と、死んだはずの夫を探して彷徨する女性との邂逅をテーマにしたサスペンスドラマです。

あらすじ

占領軍の執拗な追跡に悩まされていたドイツ人のゲオルクは、パリからマルセイユへの逃亡を考えていました。

1枚の手紙をこの地に滞在中の作家F・ヴァイデルのもとに届ける危険な任務と引き換えに、幾らかの纏まった報酬を受け取って逃走資金の代わりにするつもりです。

ヴァイデルが滞在しているホテル・リャドの6号室へと向かいますが、既に室内で自殺を図った後で息はありません。

ゲオルクは現場に残されていたパスポートと原稿用紙を持ち去って、ヴァイデルとして生きることを決意します。

ヴァイデルの妻・マリーは今では別の男性・リヒャルトとお付き合いをしていますが、夫が亡くなったことは知りません。

必死に夫の行方を追うマリーとヴァイデルに成り済ましたゲオルクが出会うことによって、思わぬ事態へと発展していくのでした。

乗り換え男を好演

主人公ゲオルクを演じているのは、1986年生まれでドイツ・フライブルク出身の俳優フランツ・ロゴフスキです。

どこか無国籍感の漂わせた顔立ちが、次第に名前と過去を捨てて別人に成り代わる難しい役どころにピッタリでした。

今作での演技力が評価されてベルリン映画祭ではシューティングスター賞に輝き、巨匠ミヒャエル・ハネケ監督の次回作に抜擢されたのも納得ですね。

意図せずしてゲオルクを翻弄してしまう美しくも儚げなヒロイン、マリーの役にパウラ・ベーアが扮しています。

混み合った貨物列車の車内や見知らぬ街の雑踏の中で、愛する人を探してうろつく後ろ姿とボンヤリとした眼差しが色っぽいです。

フランソワ・オゾン監督の2017年作「婚約者の恋人」では戦争でフィアンセを亡くした役に抜擢されていますので、見比べてみて下さい。

マリーの現在の恋人・リヒャルト役のゴーデハート・ギーズを始めとする、脇を固めている役者たちもいい味を出していました。

名作文学を大胆にアレンジ

原作ではナチスドイツから迫害を受けていたユダヤ人たちが、フランス・マルセイユから国外逃亡を企てる波乱に満ちた物語でした。

著者のゼーガース自身も第2次世界大戦下ではゲシュタポに逮捕されたり、戦後は世界各国を放浪したりドラマチックな生涯を送っています。

日本では中央公論社から1971年11月に刊行された「新集 世界の文学」の第42巻に収録されましたが、単行本化はされていません。

今まさに多くの人に読まれるべき1冊ですので、実写化を記念して是非とも新訳・新装丁で再版して頂きたいですね。

映画版ではドイツのファシズム政権によって支配されている、パラレルワールド的なフランスへ設定変更されています。

移民の受け入れ拒否や極右政権の誕生に代表されるような、いま現在のヨーロッパの世相が反映されていて面白いです。

正体不明の占領軍からの逃避行

ゲオルクがひたすらに逃げ続けている「占領軍」が、全編を通して得体の知れない不気味な気配を漂わせていました。

ある日突然に人々の平穏無事な日常生活を奪い去ってしまうような、理不尽かつ不可解な暴力性も秘められています。

戦時中に逆戻りしたかのようなパリ市内を脱出したゲオルクの取り敢えずの落ち着き先は、フランス南東部の工業都市・マルセイユです。

その対岸には広々とした地中海を臨む風光明媚な港町としても有名ですが、ここにも占領軍の足音が刻一刻と迫っていました。

あっさりとヨーロッパ全土に見切りを付けてしまったかのように、遥か海の向こう・メキシコへの憧れを募らせていきます。

宛て所なくさ迷い歩いていたゲオルクが、クライマックスで見つけた意外な安住の地には驚かされることでしょう。

パリのカフェでほろ苦いコーヒー

強権的な軍事政権に支配されたパリの街角に店を構えている、1軒の小さなカフェから物語は幕を開けていきます。

カウンター席で淹れ立てのコーヒーを飲んだり、窓際の席で昼間からワイングラスを傾けるお客さんでいっぱいです。

店内に何となく重苦しいムードが漂っているのは、パトカーや護送車がサイレンを鳴らしながら表通りを走り去っていくからでしょうか。

久しぶりに友人との再会を果たした主人公のゲオルクも、言葉を交わす時に神経質に周囲のテーブルを見渡していました。

いつ如何なる時にも国家権力による監視の目に晒されていて、すぐ側には密告者の影もちらついていて息苦しそうです。

友人からたくされた1枚の手紙が、八方塞がりだったゲオルクの新天地を切り開いていくチケット早変わりします。

別人として生きるスリル

マルセイユの案内所で地図を見ていたゲオルクが、初対面のマリーに軽く肩を叩かれるシーンが印象深かったです。

すぐに人違いだと気がついたマリーは失望の表情を露にしてその場を立ち去っていきますが、この偶然が後に大きな意味を持っていきます。

自分ではない他の誰かの人生を歩んでいこうとするゲオルクに、言い知れぬ背徳感だけでなく不思議な胸の高鳴りを感じてしました。

ヴァイデルの未発表原稿を読み漁り個人的な手紙も遠慮なく目を通しているために、いかなる質問にも答えることが出来ます。

遂には自分自身のアイデンティティーや過去でさえ捨て去ってしまい、ヴァイデルとの一体化を目指す瞬間が圧巻です。

死者に捉われた3人の生者

危険を承知で山を越えて国境沿いを強硬突破するのか、時間はかかるが安全策に徹して船の出航を気長に待つのか。

マルセイユからメキシコへと開けてきたふたつの抜け道のうち、果たしてどちらを選択するのか気になりました。

ゲオルクとマリーの間に第3の男・リヒャルトが割り込んでくるために、全員でメキシコへ向かう訳にもいきません。

死んだヴァイデルの亡霊に捉われているマリー、ヴァイデルの名前を騙るゲオルク、ヴァイデルの影に怯えるリヒャルト。

全編を通してすれ違い続けていた3人の運命が偶然にも重なり合うことによって、それぞれが静かに終着点へと向かっていきます。

こんな人におすすめ

エンドロールで鳴り響いているのは1970年代から1980年代にかけて活躍した、トーキング・ヘッズの代表曲「ロード・トゥ・ノーホエア」です。

6枚目のオリジナルアルバムとして1985年に発表された、「リトル・クリーチャーズ」のラストを飾る1曲として収録されています。

メキシコに渡る夢破れて今さらパリにも戻れない、何処にも行けない人たちの悲哀を吹き飛ばしてしまうようなお気楽さがありました。

フランス文学に造詣の深い読書家の皆さまや、旧き良き時代のフィルムノワールがお好きな方は是非みて下さい。

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