悲しい色やねん|動画配信情報・感想・評価・解説

悲しい色やねん
1988年製作/102分/日本 予告動画を検索

動画配信

U-NEXT(ユーネクスト) U-NEXTで検索
31日間無料

TSUTAYA TV(ツタヤTV) TSUTAYA TVで検索
30日間無料

キャスト・スタッフ

監督
脚本
原作
出演
音楽
製作
-

「悲しい色やねん」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「悲しい色やねん」は森田芳光監督によって、1988年の12月10日に劇場公開されているヒューマンドラマになります。

小林信彦によって文芸雑誌「小説新潮」の昭和63年1月号に発表されている、ハードボイルド文学を映像化したものです。

芸にも恋愛にも中途半端な二つ目の日常を追った「の・ようなもの」や、破天荒な家庭教師が落ちこぼれの中学生を鍛え上げていく「家族ゲーム」等。

落語の舞台裏から教育問題までを取り上げてきた、1950年生まれで茅ヶ崎市出身の映画作家がメガホンを取りました。

若干50ページの短編小説が、森田監督のオリジナル書き下ろし脚本によって102分の長編シナリオへと拡張されています。

制作予算の諸事情によって東京のスタジオで撮影されたパートと、大阪での現地ロケを組み合わせて完成まで漕ぎ着けました。

ひょんなことからエリート銀行マンから反社会的勢力のボスへと転職した青年の、悪戦苦闘の日々をテーマにした人情譚です。

あらすじ

長年に渡って夕張組を率いてきた夕張寿美雄ですが、近頃では肉体的な衰えに悩まされていて寄る年波には勝てません。

ある日突然に組のしのぎも子分たちもほっぽり出して、これまでの人生の懺悔と称して四国八十八箇所のお遍路へ旅立ちました。

道中でトイレを借りようと1軒の家を訪ねたところ、たまたま抗争中の三池組の構成員と鉢合わせをしてしまいます。

乱闘騒ぎを起こした挙げ句に何とか手打ちに持ち込もうとしますが、三池組の代表・三池太から提示された条件は寿美雄の引退と組の解散です。

夕張組が解散した途端に路頭に迷い始めていく舎弟たちのことが、寿美雄の息子・トオルは気の毒でなりません。

勤め先の大手銀行に退職届けを出したトオルは、元組員を集めて夕張組を合法化した会社組織を立ち上げていくのでした。

あの俳優のフレッシュな姿に亡き名優たちも

エリート街道から裏社会へと数奇な運命を突き進んでいく、主人公の夕張トオルを演じているのは中村トオルです。

撮影当時はまだ20代の前半で、同年には「ビー・バップ・ハイスクール」シリーズを締めくくるべく学ラン姿にも挑んでいました。

トオルと愛憎半ばする桐山恵役に扮した高嶋政宏とは同じ1965年生まれで、ふたりの若さが漲った熱演は必見ですよ。

男たちを手玉に取る悪女・堂上マコ役の藤谷美和子や、今作でデビューした御殿場ミキ役の石田ゆり子も初々しいです。

カジノのディーラー・保名おどり役で華麗なるチップさばきやカード配りを披露している、森尾由美の好演も光っています。

夕張寿美雄役の高島忠夫や三池組のナンバー2・関部守役の江波杏子に代表されるような、ベテラン勢も負けてはいません。

江波は2018年10月に高島父は2019年6月と相次いでこの世を去っているだけに、名優たちの共演にも一抹の哀愁があります。

旧きと新しきがせめぎ合う

時おり挿入されていく道頓堀川の淀んだ流れや、梅田や北新地周辺のわい雑なネオンの光が味わい深かったです。

大阪国際空港と神戸空港に次ぐ代理店3の関西空港の建設が始まったせいか、昔ながらの飲食店や日本家屋が取り壊されていく過渡期でもあります。

不当な要求行為に対する対抗措置や事務所の使用制限などを細かく定めた、暴対法が制定されるのは1991年からです。

そのためこの映画の中では住宅街のど真ん中に紋章を掲げた、組の事務所や本部ビルが堂々と立ち並んでいました。

親が極道者として名を馳せたトオルが一部上場のお堅い都市銀行に就職できたのも、採用担当者が今ほど身辺調査にうるさくなかったからでしょう。

異質な存在を排除するのではなく共存共栄を目指していた寛容性あふれるこの地方独特な風潮が、今となっては懐かしいです。

悲しい海と男女にぴったりな名曲

本作品のテーマソングは上田正樹が1982年10月21日にCBSソニーからリリースした、シングル曲「悲しい色やね」です。

「サウス・トゥ・サウス」というR&Bバンドを1974年から結成して活躍していた歌手ですが、ソロデビューした1977年以降はヒット曲に恵まれません。

レコードレーベルの移籍もあり自身のスキャンダルもあった不遇の時代に発表したのが、このバラード曲でした。

本作品ではサラリーマンの色源役で、俳優としてのカメオ出演が用意されていますので見逃さないでください。

劇中ではトオルと堂上マコが密会するのがベイエリア・南港で、歌詞の中に登場する「大阪の海」とはこの辺り一帯のことです。

トオルと恵がふたりっきりで向かい合い、お互いへの想いを拳に込めてぶつけ合う後半の決闘シーンでもバックミュージックとして流れています。

全ての決着がついて画面が真っ黒になった瞬間に響きわたる、「たったひとつの青春」というフレーズは涙なしに聴くことが出来ません。

罪滅ぼしの遍路が血塗れに

若い頃はさぞかし世間をお騒がせしたであろう、夕張組組長・寿美雄の菅笠を被って脚絆を身に纏った巡礼姿がオープニングを飾ります。

飯干晃一のノンフィクション書籍を深作欣二監督が実写化した、「仁義なき戦い」でお馴染みのあの広島戦争で大暴れをしたという逸話の持ち主です。

そんな無頼漢でさえ年齢を重ねるに連れて丸くなっていき、罪の意識に苛まれてしまうことがあるのでしょうか。

罪を洗い清めるために始めたはずの行脚が、血を血で洗う大抗争の引き金となってしまうのが何とも皮肉でした。

永遠のライバルとの直接対決

トオルとは幼い子供の頃からの親友である、三池組の後継ぎ・桐山恵の心の奥底の葛藤が深く掘り下げられていきます。

そもそもは空手の道場の同門生になったことがきっかけでしたが、背が高く腕っぷしも強かったトオルには桐山は敵いません。

一流大学で好成績を収めて卒業したトオルは銀行員として、学業の方でも大きく水をあけられた桐山は任侠道へ。

まるっきり対極的な道のりを歩んでいたはずのふたりの運命が、奇しくも交錯することとなったのがトオルの2代目襲名です。

ようやくトオルと対等なスタートラインに立つことが出来た桐山の、燃えるような対抗心に感情移入してみて下さい。

決戦の地へ

映画冒頭での救急車によるカーチェイスや、クライマックスでの堂上病院を舞台にした銃撃戦などアクションシーンも盛り込まれています。

背後で糸を引いていた一連の事件の意外な黒幕のお出ましとともに、撃ち込まれる1発の非情な弾丸が迫力満点です。

潔く自らの罪を認めて死を受け入れる者、最後まで責任転嫁と言い逃れを繰り返す者、忠義を尽くす者、裏切る者。

紙一重でそれぞれの命運を分けた二者択一と、壮絶なクライマックスでトオルが下した決断には胸を打たれました。

こんな人におすすめ

辛うじて旧き良き時代を止めていた、1980年代後半の大阪に思い入れのある皆さまにはご覧になって頂きたい作品です。

原作は1987年の12月20日に新潮社から刊行されている、文庫版オリジナル短編集「悲しい色やねん」に初めて収録されました。

小説家である「私」が大阪のホテルに滞在中に出会った、とある売れない芸人から聞かされた打ち明け話というドキュメンタリータッチの語り口です。

結末部分も映画版とは大きく変更されていますので、興味が涌いてきた方は是非とも手に取ってみてください。

みんなのレビュー

【投稿されたコメントをシェア】
秀逸なコメントをSNSに投稿して
悲しい色やねん」を
布教しちゃってください!
【コメント募集中】
悲しい色やねん」の
おすすめのポイントを
自由に紹介してください!