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キャスト・スタッフ
「世界の涯ての鼓動」をサクっと解説
ライター/ジョセフ
作品概要
「世界の涯ての鼓動」はヴィム・ヴェンダース監督によって、2019年の8月2日に劇場公開されているアドベンチャードラマです。
スコットランドの小説家、J・M・レッドガードによって発行されている長編小説「Submergence」が映像化されました。
「都会のアリス」や「ゴールキーパーの不安」など、メガホンを取ったのはラブストーリーからサスペンスまでの幅広い創作活動を続けているベテラン作家です。
2016年4月クランクインを迎えていてベルリンでの主要撮影の他、マドリッドやジブチでの現地ロケを敢行しました。
2017年トロント国際映画祭でワールドプレミアム上映された後に、サミュエル・ゴールデン・フィルムズ社によって配給されています。
極秘任務を帯びて紛争地帯への潜入に挑むエージェントと、世界各地の深海で実地調査を続けている女性とが心通わせていく感動作です。
あらすじ
ダニー・フリンダーズは父親の仕事の都合で幼い頃から、ロンドン、シドニー、ストックホルムを転々としていました。
やがてダニーの興味対象は海の生き物へと移っていき、海洋学の勉強にも必死で取り組むようになっていきます。
生物学者にとっては憧れの雑誌「ネイチャー」の表紙にも載ったこともあり、新進気鋭の研究者として特集が組まれるほどです。
今回の研究内容はグリーンランドの海に棲息する希少な生物のサンプル採取で、潜水艇でかなり深く潜らなければなりません。
乗船までの思わぬ自由時間を利用してフランス・ノルマンディーへと休暇にやってきたダニーに、話しかけてきたのはミステリアスな青年・ジェームズです。
ダニーとジェームズはそれぞれが訳ありな過去を打ち明けていくうちに、自然とお互いに心惹かれていくのでした。
危険な恋のダイブを演じるふたり
危険すぎるミッションへと果敢に立ち向かっていく主人公の、ジェームズ・モア役を演じているのはジェームズ・マカヴォイです。
MI-6に所属しているという設定と役名と芸名に「ジェームズ」が重なっているだけに、どうしても「007」を連想してしまいますね。
「X-MEN」シリーズに代表されるようなヒーローエンターテイメントでの活躍が光っていますが、今作ではアクションはおとなしめでした。
運命的なめぐり逢いをジェームズと果たすことになる、ヒロインのダニー・フリンダーズ役に扮しているのはアリシア・ヴィキャンデルです。
端正なルックスばかりではなく海洋研究者としての深い知性をたたえた、眼差しと横顔が魅力あふれていました。
勤務時間中は学者らしく白い上っ張りを羽織ってメガネをかけた地味なスタイルですが、プライベートではワイルドな出で立ちに早変わりしていきます。
ふたりで最果てまで
「パリ、テキサス」や「ベルリン、天使の詩」を始めとする、ロードムービーの名手・ヴェンダース監督らしく風景を鮮やかに切り取っていきます。
スタート地点となるのは第2次世界大戦下で連合軍の反撃のきっかけとなった、フランスのノルマンディー海岸です。
波打ち際を微妙な距離感を保って歩いていたダニーを、突如としてジェームズが抱き上げて海の中に放り込んでしまいます。
このシーンを境にしてふたりは急接近することになり、浜辺の先に佇むホテルも祝福ムードでいっぱいでした。
後ろ髪を引かれつつもジェームズと別れたダニーが向かう先は、人工的で無機質な文明に汚されていないグリーンランドです。
愛する人との再会を渇望するジェームズは、たどり着いたアフリカ大陸の東端で自分自身の無力さを痛感させられることになります。
ダニーは海抜3000メートルの海の底で、ジェームズはケニアとの国境沿いでそれぞれが目の当たりにする死の景色が衝撃的です。
恋人たちの力を合わせて
ダニーは未知の海域から絶滅危惧種の標本を持ち帰る、ジェームズはソマリアで進行中のテロ計画を阻止する。
一見するとまるっきり無関係にも思えるふたりの目的にも、時おりシンクロする部分があるのを見逃さないで下さい。
ダニーの最大の目標は環境破壊や生態系の乱れを、先進国に訴えることです。
対するジェームズもアフリカの僻地で今現在も起きている悲惨な現状に、無関心になっている西欧へ強い憤りを覚えています。
ひとりの言葉や力では動かせない現実も、ふたりになれば世界を変えるほどの大きな流れになることを信じたいですね。
海の側から始まる物語
遥かかなたにイングランドを臨むフランス北西部の海岸地帯で、ふたりの男女が出会う瞬間からストーリーは幕を開けていきます。
女性の方は自身の海洋生物学者という職業を早々と明かしますが、男性の方はそう簡単には正体を告げる訳にはいきません。
表向きにはボランティア活動員と誤魔化しながらも、諜報員としてのただ者ではない雰囲気を醸し出しています。
幾多の修羅場を生き抜いてきたジェームズからすると、好きな人と平穏無事な暮らしを送ることなど夢のまた夢です。
ダニーと一緒に過ごすことが出来たのはたったの5日間だけですが、凝縮された時間の貴重さが伝わってきました。
孤独を宿命づけられてきた男の心の奥底に初めて芽生えていく、他の誰かを愛する気持ちが微笑ましかったです。
仕事が手につかないほどの恋
一向に連絡が返ってこないジェームズに対して、ただひたすらに会いたい思いを募らせていくダニーの姿が切なく映ります。
普段は仕事をパーフェクトにこなしている彼女が、実験中にフラスコを落として割ってしまうシーンが痛々しいです。
海底を目指して生命の起源を解き明かすという壮大な使命を担いながらも、意中の相手が気になって仕方ない女性らしい一面も持ち合わせていました。
数日間の刹那的な逢瀬への未練をキッパリと振り切るかのように、潜水服に身を包んで潜航していくダニーが勇ましいです。
人喰い牢の中でも屈しない男
薄暗い洞窟のような牢屋の壁に空いた小さな穴から、外に向かって手を差し伸べるジェームズの姿が衝撃的でした。
付近を通りかかった地元の子どもたちがお小遣い稼ぎと引き換えに渡してくれるピーナッツは、捕虜の悪辣な食糧事情を考えると大事な栄養源です。
幾度となく生命の危機に晒されながらも、ジェームズが頑なに改宗しなかった理由についても考えさせられます。
イギリス人のイスラム教への生理的な嫌悪感というよりも、思想・信条を押し付けてくる者たちへの怒りの方が強かったはずです。
銃口の前に立たされて死を覚悟してジェームズに上空から舞い降りてきた、予想外の救いの手には驚かされました。
こんな人におすすめ
危険水域で潜水艦が停電してしまったダニーは非常電力が発動して、武装勢力によって拘束されて処刑寸前だったジェームズはアメリカ空軍の援護射撃によって。
絶体絶命の窮地に追い込まれていたふたりに、突然に幸運が転がり込んでくることによって本作品は大詰めを迎えます。
地球の反対側にいるはずのダニーとジェームズが、一瞬だけお互いの姿を視界に捉えるワンシーンが幻想的です。
果たしてふたりは無事に再会することが出来たのか、全ての答えを観客に委ねるかのようなラストも心に残りました。
大切な人と離れて生活をしている皆さまや、遠距離恋愛中のカップルは是非ともこの1本をご覧になってください。
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