エレニの帰郷|動画配信情報・感想・評価・解説

エレニの帰郷
2008年製作/127分/ギリシャ・ドイツ・カナダ・ロシア合作 予告動画を検索

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キャスト・スタッフ

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原作
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出演
音楽
製作

「エレニの帰郷」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「エレニの帰郷」はテオ・アンゲロプロス監督によって、2008年にギリシャ・ドイツ・カナダ・ロシアの4カ国で合同製作されました。

テッサロニキ国際映画祭でワールドプレミア上映された後に、日本でもフランス映画社の配給によって2014年の1月25日に劇場公開されています。

日本語字幕を担当しているのは「マシアス・ギリの失脚」を始めとする著作の他、ギリシャ現代詩の翻訳家でもある池澤夏樹です。

2009年ベルリン国際映画祭に正式出品された他、2013年には東京国際映画祭での特別招待作品に選ばれました。

「シテール島への船出」や「ユリシーズの瞳」など、神話から民族紛争までを題材にしてきた巨匠の遺作になります。

母親への愛をスクリーンに焼き付けていく映画監督の思いが、時を飛び越えて多くの人に届けられていくヒューマンドラマです。

あらすじ

映画監督として活躍してきたAでしたが、次回作は余りにも難解なテーマのためになかなか完成にまで漕ぎ着けることが出来ません。

既にラストシーンを撮り終えてはいましたが、完璧主義のAは納得がいかないために製作を中断してしまいました。

いつものようにスタジオに籠りっきりになって作業に没頭していると、久しぶりにAの娘から連絡が舞い込んできます。

大学をドロップアウトしてからの娘は知人の家を頼って転々としている自堕落な生活ぶりで、実家にはまるで寄り付きません。

受話器越しに聴こえてくる声の調子にただならぬ気配を察知したAは、娘が市内に間借りしているアパートへ向かいます。

部屋の中にかつてAの母親・エレニが父のスピロスに送った手紙が残されていて、意外な真実を知ることになるのでした。

ベテラン作家の集大成を演じる

仕事も上手くいかずにプライベートでも何かにつけて悩み事が絶えない、主人公のA役はウィレム・デフォーです。

ジュリアン・シュナベール監督による最新作「永遠の門 」ではゴッホ役で、生前に全く評価されることのなかった画家の苦悩を体現していました。

本作での孤高の映画作家の生きざまに重なるものがあり、若き日のアンゲロプロス監督自身も反映されています。

半世紀に渡る放浪を続けていくAの母・エレニ役は、京都国際映画祭や深田晃司監督の2015年作「さようなら」など日本とも縁のあるイレーヌ・ジャコブです。

数多くの壁にぶち当たり人生の荒波に呑み込まれながらも、全てを受け流すような淡々とした表情が魅力的ですね。

エレニへの終生変わらない純愛を貫き通した、ヤコブの役をスイスを代表する名優ブルーノ・ガンツが演じていきます。

終盤でのシュプレー川に飛び込むシーンは、代表作「ベルリン・天使の詩」での大天使ダミエルを思い出してしまうかもしれません。

未完の大作の中核を堂々と構成

本作品は2004年に発表された「エレニの旅」の続編でもあり、「二十世紀三部作」と大々的に銘打たれてスタートしたシリーズの第2弾です。

前作では戦災孤児としての受難や望まぬ結婚話に翻弄されながらも、自由を求めていくエレニの戦いにスポットライトが当てられていました。

今作ではあくまでもエレニは旧世代を象徴する過去の人であり、新しく台頭してきたAたちの引き立て役でしかありません。

テオ・アンゲロプロスが2012年に撮影中の事故に巻き込まれて、突如として帰らぬ人となってしまったのが惜しまれます。

没後から7年後の今となっては次回作でもありシリーズを締めくくる完結編でもある、「The Other Sea」というタイトルだけが残されたままです。

劇中では語られることのなかった登場キャラクターたちが、その後に歩んでいった道のりに想いを巡らせてみて下さい。

現代から過去への旅

コロセウムや神殿が古代の佇まいのままで残っている、1999年のローマを上空から捉えたオープニングショットが壮観です。

郊外には1930年代にムッソリーニが音頭を取って建設された、イタリア初の本格的な映画撮影所として有名なチネチッタがあります。

大規模な屋外型セットや最新タイプの編集機材がところ狭しと並んでいて、スタジオ巡りをしているような気分でした。

撮影所の電話が突如として鳴り響くことによって、舞台は20世紀末のイタリアから1953年のロシアへと移行していきます。

町中至るところでスターリンの追悼セレモニーが行われている中で、レトロな車両の路面電車から颯爽と現れるのは女子大生姿のエレニです。

極寒の地・シベリアへと流刑にされてもへこたれることなく、更なる新天地を求めてニューヨークを目指します。

ベルリンの壁が崩壊するまではくぐり抜けることを許されなかったブランデンブルグ門を、物語の終着点に選んでいるのも心憎いです。

動き始めた映画と巻き戻される時間

創作活動に行き詰まりを覚えている、主人公Aの気だるい日常生活の描写からストーリーは幕を開けていきます。

理想が高すぎて周囲のスタッフを振り回してしまう鬼才ぶりや、スポンサーや配給会社からは撮影再開をせかされる場面がほろ苦いです。

肝心の結末部分を後回しにして映画音楽だけでも仕上げてサントラを売り込もうとする、やっつけ仕事には笑わされました。

いい年をして根なし草のように放浪を続けている娘とも、父親として真正面から向き合うことが出来ないのが不甲斐ないです。

留守番電話に記録された娘からのSOSを1度は消去しようとしたAが、ほんの気まぐれから再生ボタンを押すことで時間の流れが遡っていきます。

何者にも捕らわれない彼女

知識欲に燃えていた女子大学生時代のエレニが収容所へ入れられてしまうシーンには、独裁制に虐げられていた人々の怒りが込められています。

国家権力によって汚名を着せられても屈することなく、塀の外へと飛び出していくチャンスを伺うエレニが勇ましいです。

厳しい寒さと深い孤独に閉ざされた収容所内でめぐり逢った、ヤコブとの間に築き上げていく不思議な一体感が心に残りました。

思想・信条的な理由や政治的に急進的な考え方から自由を奪われてしまったエレニ、ユダヤ人として謂れのない差別を受け続けてきたヤコブ。

しばしのロマンスの唐突な終わりと共にエレニは海を渡ってアメリカへ、ヤコブは陸路からイスラエルとそれぞれの道を行きます。

切ない再会と残酷な歳月

放浪を続けて流れ着いた先のニューヨーク郊外で、エレニがAの父親・スピロスと再会を果たす一幕がドラマチックでした。

既に家庭を持って幸せな暮らしを送っているスピロスに対して、エレニは言葉をかけることが出来ないのがほろ苦いです。

若く美しかったエレニも苦労が絶えずに、年齢を重ねていくにつれて肉体的な衰えを感じ始めていき遂には病に冒されて変わり果てた姿には胸が痛みます。

その一方ではエレニからAへ、更にはAから彼の娘へと確かに受け継がれていく記憶と生命には心を揺さぶられました。

こんな人におすすめ

西暦が1999年から2000年へと切り替わる瞬間に、多くの国と地域を股にかけたエレニの旅路もエンディングを迎えます。

激動の20世紀の中で繰り返された分断と争い事を振り返りつつも、来るべき21世紀に小さな希望を抱いているようで感動的です。

「旅芸人の記録」など1970年代にアンゲロプロス叙事詩の虜となった世代の皆さんは、是非ともご覧になって下さい。

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