命みじかし、恋せよ乙女|動画配信情報・感想・評価・解説

命みじかし、恋せよ乙女
2019年製作/117分/ドイツ 予告動画を検索
仕事を辞めてからアルコールの量が増え、家族から愛想の尽かされたカール。そんなカールのもとを突然訪ねてきた日本人女性のユウ。自由気ままなユウの振る舞いに翻弄されていくカールだが、徐々に心を許していく。そんなある日、ユウは行き先を告げることなくカールの家を出て行ってしまうのだった。

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キャスト・スタッフ

監督
脚本
原作
-
出演
音楽
製作

「命みじかし、恋せよ乙女」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「命みじかし、恋せよ乙女」はドーリス・デリエ監督によって、2018年に製作されているヒューマンドラマです。

本国のドイツで先行上映された後に、日本でもGAGA社の配給によって2019年の8月19日に劇場公開されています。

「MON-ZEN」や「アム・アイ・ビューティフル?」などメガホンを取っているのは、絵本作家からオペラの演出家まで多才な一面を持ち合わせている映画作家です。

デリエ監督が117分のオリジナルのシナリオを書き下ろして、樹木希林への熱烈な出演オファーが受諾されて誕生しました。

全てを失って孤独に生きてきたドイツ男性と、ひとりの日本人女性との間に不思議な絆が芽生えていくラブストーリーに仕上がっています。

あらすじ

仕事を辞めてからというものカールはめっきりアルコールの量が増えていき、妻と子供たちからは愛想を尽かされてしまいます。

ミュンヘン市内にある自宅アパートで無為な日々を送っていたカールを訪ねてきたのは、ユウと名乗る若い日本人の女性です。

半ば強引に家の中にまで入ってきたユウは、生前にお世話になったカールの父・ルディのゆかり地を巡る旅にカールも一連れ出そうとしました。

自由奔放で気まぐれなユウの振る舞いに翻弄されてばかりでしたが、少しずつカールは彼女に対して心を開いていきます。

そんなある日のことユウは行き先を告げることなく転がり込んでいたカールの家を出ていってしまい、それっきり姿を見せません。

再び彼女に会うことを胸に誓ったカールは、ユウの生まれ育った故郷である日本の神奈川へと足を踏み入れるのでした。

国境を越えた芸達者の共演

アルコールに溺れて仕事も家族さえも失った冴えない主人公、カールの役を演じているのはゴロ・オイラーです。

カールに人生をやり直すチャンスを与える幸運のヒロイン、ユウの役には入月絢がキャスティングされています。

本職は女優さんではなく海外で活躍する舞踏家で、劇中でカールがつま弾くギターの音色に合わせて踊る姿は必見です。

カールの父・ルディの役には、本作の前日譚に当たる「HANAMI」から引き続いてエルマー・ウェッパーが扮していました。

ユウの祖母役として存在感を発揮しているのは樹木希林で、撮影は亡くなる僅か2カ月前の2018年7月に行われています。

死者と生者の橋渡しという設定では、平川雄一朗監督「ツナグ」を思い出してしまう方も多いのではないでしょうか。

国境と記憶を繋ぐ旅

始まりはドイツ南東部バイエルン州最大の都市・ミュンヘンで、住宅街のど真ん中に聳える歴史的な建造物が目を引きます。

バイエルン州内にはルートヴィヒ狂王によって建てられたノイシュバンシュタイン城があり、冬を迎えて雪化粧した佇まいが美しいです。

城内には観光客向けのお土産ショップが設置されていて、ここで販売されているスノードームはキーアイテムになりますので覚えておいて下さい。

消え去ったユウの面影をカールが追い続けていくうちに、中盤から舞台はドイツから日本へと移行していきます。

物語の締めくくりのとして登場する神奈川県の老舗旅館、茅ケ崎館は樹木希林にとっても思い入れがある場所です。

小津安二郎監督の最後の作品「秋刀魚の味」のロケ地でもあり、当時の樹木はこの映画に出演した杉村春子の付き人でした。

昭和の邦画をリードし続けてきたベテラン監督の遺作から50年以上の時を越えて、平成を代表する名優のラスト出演となったのが感慨深いですね。

不吉な影が意味するもの

カールの目の前に幾度となく立ちはだかることとなる、謎めいた黒いシルエットの正体に引き込まれていきます。

部屋の中であれ外出先であれ神出鬼没ぶりを披露していきますが、一向にその出所が明かされることはありません。

思い余ってユウに打ち明けてみると、あっさりと「悪霊」という答えが返ってくるのがいかにも東洋的です。

あくまでも「ゴースト」という西洋的な価値観にこだわり抜いているカールとのシンメトリーが、独特な世界観を構成していました。

日本滞在中に旅館で浴衣に着替えたカールが、死者の装束を意味する「左前」に着てしまうシーンに注目して下さい。

左前に気付いた女将さんが右前に直してあげることによって、死の呪縛からの解放感を味わうことが出来るでしょう。

被り物の下に隠した寄る辺の無さ

パンダの着ぐるみを装着した異様な装いの主人公・カールが、オープニングからひと騒動巻き起こしていきます。

児童福祉局の接見禁止命令をあっさりと破って、娘・ミアのバースデーパーティーに闖入するほどの暴走ぶりです。

母親との死別にのってよほどのショックを受けたのか、自分自身の人生にも投げ遣りな様子には胸が痛みました。

極右政党に所属するカールの兄・クラウスの疑り深そうな眼差しに、寛容性が失われつつあるヨーロッパを垣間見えます。

クラウスの息子でありカールにとっては可愛い甥っ子でもある、ロベルトの息苦しさにも思いを巡らせてしまいました。

実家の売却や遺産相続を巡って妹のカロと揉めているために、カールの周りには心を許すことが出来る相手はいません。

ふたりだけの濃密な時間

止まっていたカールの時間を突如として動かすきっかけとなった、日本人女性・ユウが美しくも儚げに映ります。

少しずつ明かされていく今は亡きカールの父親・ルディと、彼女との思わぬ関係性にもビックリさせられました。

父のお葬式でもお互いに面識があるというユウの話でしたが、カール自身にはおぼろ気な記憶しかありません。

身体の一部を奪われて心の奥底にも深いトラウマを抱えていたカールと、何処までも純真無垢なユウとの触れ合いが幻想的です。

ふたり連れだって人混みの中を歩いている時も、周囲から浮き上がっているような不思議な感覚が涌いていきます。

心を伝えるものは

怠惰な毎日を送っていたカールが、見違えるように生き生きと立ち直っていく姿にはエールを送りたくなりました。

はるばる日本にたどり着いたカールと、ユウの祖母が音声翻訳機を使いながらコミュニケーションを図ろうする場面には心温まります。

小さくて無機質な機械でも使い方次第では、扱う人の素直な思いや人間らしい温もりを伝えることが出来るはずです。

この地で残酷な真実を知ってしまったカールが1度は絶望に包まれながらも、生きる希望を取り戻す終盤の展開に胸を打たれました。

こんな人におすすめ

この世を去ったユウと辛うじて現世に踏みとどまったカールが、束の間の邂逅を果たすことによってエンディングを迎えます。

数々の昭和歌謡曲を手掛けてきた中山晋平の作曲による、「ゴンドラの唄」を口ずさむ樹木希林がラストショットです。

歌詞の中に出てくる「命みじかし」のフレーズが、夜の日本庭園をバックにして哀愁たっぷりと鳴り響いていました。

「生きているんだから、幸せになる」という力強いメッセージからは、いつか終わりが来る人生を精一杯謳歌することを考えさせられます。

大森立嗣監督とタッグを組んだ「日日是好日」から、是枝裕和監督にパルムドールの恩恵をもたらした「万引き家族」まで。

稀代の名女優とのお別れを惜しみたい熱心な映画ファンの皆さまは、是非ともこの作品をご覧になってください。

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