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キャスト・スタッフ
「グッドモーニングショー」をサクっと解説
ライター/ジョセフ
作品概要
「グッドモーニングショー」はフジテレビジョンと東宝によって合同製作されて、2016年の10月8日から全国ロードショーされているコメディードラマになります。
事故死した妻のために生化学者が禁断の実験に手を染めていく「パラサイト・イヴ」や、所轄の刑事が巨大組織の不条理へと立ち向かっていく「踊る大捜査線 THE MOVIE」など。
SFアドベンチャーから人気テレビシリーズの劇場版までを手掛けている、君塚良一監督がメガホンを取っています。
第40回のモントリオール国際映画祭では、ワールドコンペティション部門作品としてプレミアム上映されました。
朝の生放送番組を担当する冴えないキャスターが、立て籠り事件の現場への突撃リポートを敢行する娯楽作です。
あらすじ
澄田真吾は数年までは硬派な報道番組でメインキャスターを務めていて、プライベートでも順風満帆な人生を送っていました。
澄田がバッシングの矢面に立たされるきっかけとなったのは、甚大な被害を受けた被災地の現地リポートを担当した時です。
頬に泥を塗りたりながらカメラに向かって笑いかける澄田の顔面アップが、全国に一斉に放送されてしまいます。
視聴者からは「不謹慎」というクレームが殺到して、それっきり報道関係の仕事が舞い込んでくることはありません。
いま現在では「グッドモーニングショー」というワイドショーの司会をしていた澄田は、ある時に警察から呼び出しを受けます。
テレビ局にほど近い喫茶店に立て籠っている犯人の要求によって、澄田は前代未聞の潜入取材に挑むことになるのでした。
人気の役者たちを適材適所に配置
キャスターとしても落ち目を迎えていて私生活でも何かにつけて気詰まりな、主人公の澄田真吾役は中井貴一です。
中年期に特有な得たいの知れない不安に追いかけられているような毎日を、コミカルな演技で体現していました。
澄田とは単なる同僚以上の不適切な関係性を熱望する、サブ・キャスターの小川圭子役には長澤まさみが起用されています。
ちょっぴり露出度が高すぎる赤いワンピースを身に纏った姿と、本番中にも関わらず澄田に送る意味深な目線が色っぽいです。
小川に対して生理的な嫌悪感を露にしていく、お堅いスポーツキャスターの三木沙也役には志田未来が扮していました。
「誰も守ってくれない」では加害者遺族の少女、「遺体 明日への十日間」では震災に立ち向かう市職員と君塚作品の常連さんですね。
猟銃を握りしめて大暴走を繰り広げていく、立て籠り犯・西谷颯太役にキャスティングされている濱田岳の怪演も見逃せません。
舞台裏までリアルに
放送作家として萩本欽一の下でキャリアを積んできた君塚監督だけあって、随所にリアリティーが追及されています。
世の中がまだ寝静まっている午前3時に起床して、始発電車も動いていない街中をタクシーに乗り込んで出勤するほどのハードワークです。
この日の朝に突如として番組の打ち切りを告げられてしまうなど、生き馬の目を抜くようなテレビ業界の厳しさが伝わってきますね。
放送直前まで打ち合わせとリハーサルを繰り返す、慌ただしい舞台裏と複雑な人間関係も垣間見ることが出来ます。
社会的に重要な政治家に纏わる汚職疑惑を全面に押し出すのか、視聴率を優先して人気タレントの恋愛スクープを大々的に取り上げるのか。
テレビ局内における報道フロアとバラエティー製作担当者との、お互いへの反感や熾烈な縄張り争いは必見です。
目まぐるしく移り変わる視点
否応なしに危険な現場へと向かうこととなった澄田に取り付けられた、隠しカメラからの映像が臨場感を盛り上げていきます。
スタジオから澄田の無事を祈り続けている、キャスター仲間の小川や三木の優しさには心温まるものがあるはずです。
澄田の息子も父親の勇姿を視聴者としてテレビの前から見守っていき、妻・明美の胸の内にも微妙な心境の変化が訪れていきます。
それとは対照的にハプニングが起こることを期待してしまうのが、他人の不幸に対して無責任かつ無関心な一般大衆です。
同じ出来事でも視点を変えて別の角度から見つめ直してみると、新たな側面が浮かび上がってくるのが面白いですね。
澄田が番組降板のきっかけとなった顔に泥を塗った映像にも、別テイクが用意されていて意外な真実が明かされていきます。
グッドモーニングショーの熱心な視聴者になった気分で、事件の顛末と澄田に待ち受けている運命を見届けて下さい。
輝きを失ったキャスター
華やかにライトアップされた東京タワーのシルエットが浮かび上がった、東京都内の夜景がオープニングを飾ります。
自立式鉄塔として半世紀に渡って日本一の高さを誇ってきましたが、スカイツリーに抜かれてからはいまいち影が薄いです。
新しく台頭してきた若手キャスターたちに次から次へと追い抜かれて、後がない澄田真吾の焦燥感に重ね合わせてしまいました。
かつてはアナウンサーとして魅力的だった妻の明美とも上手くいってなく、家庭内でも居場所がないのが切ないです。
やたらと思い込みが激しい共演者の小川圭子や、虎視眈々と澄田の後がまを狙っている三木沙也によって不吉なムードが高まっていきます。
朝から穏やかでない話題
いま話題のスイーツや今日の運勢をランキングした占いコーナーなど、いつもの朝の時間帯にお馴染みの情報が流れていきます。
別れた恋人から受け取ったプレゼントは綺麗さっぱりと捨て去るのか、それとも未練がましく手元に取っておくのか。
どうでもいいような視聴者アンケートにも、過剰に反応して狼狽えてしまう澄田の情緒不安定さがユーモラスです。
海の向こうで盗塁の記録を塗り替えたメジャーリーガーを持ち出して、「男はベースも女心も盗む」などとこじつける小川にも呆れてしまいました。
喫茶店立て籠り事件の詳細が緊急速報で飛び込んでくることによって、番組開始以来例を見ないほどの独占生中継がスタートします。
見えない男が白日のもとに晒される
社会に対する不平不満を一方的に並べ立てる、犯人・西谷颯太の独白にはウンザリとさせられてしまいました。
その一方では澄田がこの場所に呼ばれることとなった意外な理由と、過去の浅からぬ因縁には考えさせられます。
誰からも「見えない」存在だった西谷が、初めて世間の注目を集めたのが逮捕の瞬間だったのが何とも皮肉です。
犯行の正統性を延々と主張する西谷を見ていた澄田が、自分自身の過ちに気付く瞬間が圧巻でした。
こんな人におすすめ
「私たちはケーキと一緒」という、本番終了と同時に小川が思わずポロリと溢したセリフが味わい深かったです。
現れては消えていく新商品のようでもあり、消費者を満足させるためだけに存在しているような虚しさを感じてしまいました。
事件解決とともにお茶の間のテレビの前に座っている人たちはすぐに空腹感を覚えて、次のケーキを求めてリモコンをいじる様子が目に浮かんできます。
中年の危機に加えて夫婦の危機も何とか乗り切った澄田が、クライマックスで踏み出した小さな1歩には勇気を貰えるはずです。
仕事でも家族との関係にも行き詰まりを覚えている、ミドルエイジの皆さまは是非ともこの1本をご覧になって下さい。
みんなのレビュー
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