狂覗|動画配信情報・感想・評価・解説

狂覗
2017年製作/81分/日本 予告動画を検索
都内の豊玉第三中学の校長室で教師・上西譲が何者かに暴行を受ける。現場に残されたノートパソコンには、上西が女子生徒を盗撮した映像が残っていたため警察沙汰にはできない。校長から調査を任された森は、臨時教師の谷野と協力して、生徒がいない時間に持ち物検査を実施する。その中で、陰でクラスを支配する一人の女子生徒が浮かび上がってくるのだった。

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キャスト・スタッフ

監督
脚本
原作
-
出演
音楽
製作

「狂覗」をサクっと解説

ライター/ジョセフ

見たい映画はDVDや動画配信サービスではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。これからも素晴らしい映画との出会いを大切にしていきたいと思います。

作品概要

「狂覗」は藤井秀剛監督によって2017年の7月24日に劇場公開されています。

もとになっているのは劇作家の宮沢章夫によって、1998年の10月10日に白泉社から刊行されている戯曲「14歳の国」です。

舞台劇としては同年の10月7日に青山円形劇場で、山西惇の主演によって初公演が行われました。

たった1個のジェラルミンケースから転落していく男の悲哀を描いた「マネーざんす 監金」や、児童虐待問題とDNAの突然変異を組み合わせた異色作「超擬態人間」等。

短編映画やミュージックビデオの製作も手掛ける、1974年生まれ東京都出身の映像作家が満を持して送ります。

中学校の教師が生徒に無断で荷物検査を行ったという、実話をヒントにしたサスペンススリラーです。

あらすじ

都内某所にある豊玉第三中学校の校長室で発生したのは、教師の上西譲が何者かに手酷い暴行を受ける事件です。

現場に残されていたノートパソコンには上西が女子生徒を盗撮した映像が残されていたために、警察に通報する訳にはいきません。

校長は取り敢えずは上西を保健室に運んで手当をした後に、学年主任の森由紀夫を呼び出して犯人探しを命じました。

同校の2ーBのクラスの中に犯人がいることを掴んだ森由紀夫は、かつての教え子でつい最近まで休職中だった臨時教師の谷野十に協力を求めます。

生徒が体育で出払っている間に抜き打ち検査を始めた森ですが、谷野は自分のことを引き立ててくれた恩義があるために止めることが出来ません。

生徒のカバンから次々と不審物が発見される中で、このクラスを支配するひとりの女子生徒の影が浮かび上がってくるのでした。

夭逝の俳優がスクリーンに焼き付けた名演

主人公の谷野十を演じているのは1989年2月9日生まれの京都府出身で、主に劇団で活動していた杉山樹志という俳優さんです。

映画主演はもちろん本作品が初めてとなりますが抜群の存在感で、鮮烈なスクリーンデビューを果たしました。

俳優として迫真の演技を披露しているのに加えて、プロデューサー補佐として製作業務全般にも携わっています。

更なる活躍が期待されている中で突如として帰らぬ人となってしまったのは、映画公開から1カ月ほどした2017年の8月中旬のことでまだ28歳の若さでした。

8月17日のツイッターへの「「狂嗣」という作品が少しでも多くの人の心の中に残って欲しい」という書き込みが、最期の言葉になってしまったのが残念でなりません。

俳優としてもスタッフとしても現場を支える

「CFA」と名付けられた、テレビドラマの脇役やエキストラなど無名の役者たちを支援する独自の制度を聞いたことはありませんか?

この映画でも企画段階からの予算不足をカバーするために、殆んどの出演者たちが製作スタッフを兼任しています。

森由紀夫役の田中大貴は、出演していない時はマイクを持って録音を手伝ったりカチンコを鳴らしたりと大忙しです。

片山絵里子役の坂井貴子は自分の出番がない時には、スタッフのスケジュールを管理と並行して衣装決めをしなければなりません。

管直樹役の桂弘は俳優としてだけではなく、昆虫のオブジェ作りなどで美術スタッフとしても大いに貢献しました。

手作り感満載のセットはメジャー作品と比べると安っぽく感じてしまうかもしれませんが、インディペンデントならではの良さを味わってみて下さい。

逆さまから見ると浮かび上がる真実

校長先生の名前が舛添五月で教頭が小沢四郎、学年主任は森由紀夫で2ーB担任は片山絵里子、管直樹に辻本清美まで。

登場キャラクターの名字と下の名前をバラバラにして組み合わせてみると、実在する有名人の名前に早変わりします。

2-Bの黒板には薄く「Shine」と刻まれていますが、この言葉が意味するものは英単語の「太陽の光」ではありません。

「万田美弥里」という一見すると年若い母親が付けたキラキラネームにも思える名前にも、思わぬ仕掛けがあります。

漢字表記をカタカナに直してから逆さまに読み上げてみると、その隠されているメッセージに気がつくでしょう。

禁断の手荷物検査

もぬけの殻となった教室にいるのは5人の教師で、机の上には綺麗に畳まれた制服と通学カバンが載っているだけでした。

廊下と教室とを隔てる壁には間もなく開催される文化祭のために飾り付けがされていますが、ここにも然り気無く伏線が張り巡らされているので注目して下さい。

窓際のカーテンはそよ風に揺らめいていて、校庭からは体育の授業らしき微かな歓声と笛の音が聞こえてきて長閑です。

荷物検査といっても生徒本人の立ち会いもなく無断で行われているようで、プライバシーも倫理観も有った物ではありません。

お菓子や化粧品などの可愛らしい小物から、カプセル錠剤や手錠などおよそ中学生活と結びつかない疑惑の品まで千差万別です。

学年でも1・2を争うほど成績優秀で容姿端麗な女子中学生のカバンから出てきた、1枚の紙切れが何とも不気味でした。

生徒も先生も問題あり

渦中のクラス・2ーBでは表向きには大人しく優等生タイプの生徒が多くて、登校拒否やイジメ等の問題も報告されていません。

密かに厳然たるスクールカーストが存在していて、少しでも他人を出し抜いて優位に立とうという駆け引きが繰り広げられています。

同じ年頃の少年少女たち40数人を狭い部屋に押し込んで置けば、何かしら問題が起きるのは当然とも言えるでしょう。

夢だったプロの絵描きを挫折して仕方なく美術教師を続けている橋本瑞穂、かつて受け持ちの生徒の飛び降りを目の当たりにした谷野。

女子生徒と不適切な関係が取り沙汰されている管直樹、クラス全員から授業をボイコットされている片山絵里子。

生徒の隠し事を暴くつもりが、教師たちの深い心の闇があからさまになっていく中盤以降の展開に引き込まれていきます。

子供でもなく大人でもない

「14歳に満たない者の行為はこれを罰っしない」というセリフが、全編を通して重苦しいムードを放っていました。

物語のカギを握る万田美弥里のノートに書き付けられていた言葉であり、刑法第41条に明記されている「責任無能力者」でもあります。

原作は1997年に神戸市内で当時14歳の男子中学生が起こした事件からインスパイアされていて、加害者と同じ1982年生まれの方は特に覚えているのではないでしょうか。

全ては子供と大人の狭間で揺れ動く多感な少年少女たちが悪いのか、それとも大人に成りきれない大人が悪いのか。

その問いかけに対する明確な答えが見つからないままで、物語は悲劇的なクライマックスへと近づいていきます。

こんな人におすすめ

やたらと饒舌な関西弁の語り口が特徴的な森由紀夫は、ここまでは如何にも熱血教師といったリーダーシップを発揮してきました。

一度は過去の事件トラウマから教職に別れを告げたはずの谷野を、非常勤講師として呼び戻したのもこの先生です。

一方では生徒の生活指導も3年余りに渡って続けていますが、近頃では結果が出せずにプレッシャーに感じています。

次第に剥がれ落ちていく理想の教師というその威厳と、最後に待ち受けている思わぬどんでん返しが驚きです。

幻想的な描写にブラックユーモアたっぷりとした語り口の中にも、教育現場の切実な現状を訴えかけてくるものがありました。

今現在学校の先生に就いている方たちばかりではなく、将来教育者を志している大学生の皆さんもご覧になって下さい。

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