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キャスト・スタッフ
「ダークタワー」をサクっと解説
ライター/ジョセフ
作品概要
「ダークタワー」は2017年にイマジン・エンターテインメントとウィードロードピクチャーズによって合同製作された後に、2018年の1月28日から全国ロードショーされています。
デンマーク王室の醜聞を暴き出す「ロイアル・アフェア」や、天才ハッカーと敏腕ジャーナリストが恐るべき事件を解き明かす「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」など。
史実をリサーチしたドラマからベストセラーの実写化にまで挑む、ニコライ・アーセル監督がメガホンを取っています。
スティーヴン・キングによって1982年からドナルド・M・グラントから出版されている、「The Dark Tower」が映像化されました。
全7冊に及ぶ長篇シリーズが、アキヴァ・ゴールズマンとジェフ・ピンクナーによって95分の脚本に纏められています。
現実のニューヨークと夢の中を行き来しながら、世界を崩壊の危機から救う塔の秘密へと迫っていくファンタジードラマです。
あらすじ
11歳のジェイク・チェンバーズはある日の夜に、黒い服を着た男が巨大なタワーを崩して宇宙を滅ぼす不思議な夢を見ました。
母親のローリーや義理の父・ロンに相談してみると、精神分析医のホッチキスのクリニックへと連れていかれます。
ホッチキス医師の診断では前年に亡くなった実父・エルマーの死によるトラウマとして片付けられてしまい、ろくに相手にされません。
更にはジェイクが住んでいるニューヨーク市内のアパートから程近い、矯正キャンプでリハビリさせられることになります。
キャンプの職員としてジェイクを迎えにやって来たのは、悪夢の中で目撃した人間の皮膚を被ったモンスターです。
身の危険を感じて収用される前に脱走したジェイクは、中間世界と呼ばれる異次元への扉を開けて迷い込んでいくのでした。
ふたつの世界を繋ぐ名演
尊敬していた消防士の父親を失い深い哀しみに包まれている、ジェイク・チェンバース役はトム・テイラーです。
イギリス・サリー州出身の2001年生まれの俳優さんで、若干14歳にして重要キャラクターに大抜擢されています。
映画の序盤でのあどけなさの残る表情から、見る見るうちに逞しく成長を遂げていく様子を見守ってあげて下さい。
ジェイクが夢見る黒衣の男・ウォルター・パディツク役を、マシュー・マコノヒーが怪しげなムードを漂わせながら演じていました。
ウォルターの目論見を阻止すべく奔走していく、ローランド・デスチェイン役にイドリス・エルバが扮しています。
「マイティ・ソー」シリーズのようなヒーローものから、「プロメテウス」等SFアドベンチャーでお馴染みですね。
今作でも人類の命運を託された最後の希望「ガンスリンガー」として、ダイナミックな名演を披露していました。
奇跡のスケッチ
遥か宇宙の彼方に聳え立ち、強大な闇のパワーからありとあらゆる生命体を守り抜いているという塔が神秘的でした。
そんな大事な塔を神をも恐れることなく破壊すべく、過酷な人体実験を繰り返す黒服を身に纏ったウォルター・パディツクがひときわ異彩を放っています。
ウォルターによって捕らえられた子供たちの悲痛な叫び声を、時空を越えて受け止めるのがジェイク・チェンバースです。
パッと見るとスケッチブックにお絵描きをしているようにしか思えませんが、その正確無比な描写力にビックリですね。
「終末の日」が刻一刻と差し迫っていることを訴えながらも、誰ひとりとして本気にしてくれないのが焦れったいです。
創世記の頃に周囲の人たちから嘲られながらも、雑音にも屈することなく神々の怒りに備えて方舟を造り続けていたノアのような気分なのでしょうか。
父を越える息子たち
火災現場で殉職をしたジェイクの父・エルマー、志半ばにして闇の力の前に破れ去ったローランドの父・スティーヴン。
ほぼ同時期に父を失ったジェイクとローランドの間には、少しずつ共闘関係と厚い友情が芽生え始めていきます。
ジェイクにとっていま現在の父と呼べるのは、ローリーの交際相手・ロンであり直線的な血の繋がりはありません。
なかなか義理の息子に対して心を開こうとしないロンに対して、ローリーが「自分の子のように扱って」と諭す場面もありました。
血縁関係を越えた親子の絆を築き上げることが出来るのかも、ストーリーの根底に流れている大きなテーマです。
痛切な父の死を乗り越えたふたりの逞しく成長を遂げた姿と、立ちはだかる更なる試練にも注目してみてください。
息苦しい少年の揺れ動く心
大都会ニューヨークの片隅で、頻発する地震をただひたすらやり過ごすジェイク・チェンバーズの不安気な眼差しがオープニングを飾ります。
東海岸のこの街ではマグニチュード5を記録して、その余波は西海岸から大平洋を越えて日本にまで押し寄せているほどです。
ここ数日間を振り返ってみてもかなりの震度に見舞われたために、ベッドサイドに立て掛けておいた父の遺影が床の上にひっくり返ってしまうのが不吉でした。
通っている近所の学校では変わり者として敬遠されていて、話しかけてくるのは同じアパートに住むティミーしかいません。
夫と死別して以来何かにつけて過保護気味な母親のローリーと、いまいち馴染めない再婚相手のロンとの間に板挟みにされた息苦しさも伝わってきました。
見えない恐怖
何食わぬ顔をして人間に成り済ましている侵略者たちの化けの皮が、純真無垢なジェイクの瞳によって剥がされていきます。
慌ただしく大通りを行き交うニューヨークの住民たちの殆んどは、今度の異常事態を察知することが出来ません。
路地裏のゴミ捨て場で食糧を漁っている初老のホームレスにだけが、しっかりと真実を見据えているのが皮肉です。
そんなジェイクが学校側からも親からも「不適格者」の烙印をおされて、クリニックの入院施設へと送られてしまう展開には胸が痛みました。
社会全体を覆っている異質な存在をあっさりと排除してしまう風潮は、海を越えた自由の国でも同じなのかもしれません。
ジェイクにとっては唯一無二の理解者であるティミーが、「サイコ・キャンプ」と揶揄する施設の実態が気になります。
解き放たれていく心と体
現実のニューヨークの中では思うように振る舞うことが出来なかったジェイクが、異世界を縦横無尽に駆け回っていく後半の展開にはスカッとしました。
摩天楼が建ち並んだ無機質な都会の眺めと、古代文明の空中都市を思わせるような解放感とのコントラストも浮かび上がっています。
最新鋭のテクノロジーを結集させた武器を使いこなすウォルターと、古き良き時代のガンマンを彷彿とさせるローランドとの対決がスリリングです。
憎しみと復讐心にとり憑かれていたローランドが、ジェイクとの旅によって人間らしさを取り戻していく様子にも心温まります。
こんな人におすすめ
それぞれのプライドと理想がぶつかり合う最終バトルの決着と、紙一重で命運を分けた1発の銃弾がドラマチックです。
ふたつの世界の共存共栄を暗示させるようなエンディングには、分断が加速していく今の時代への鋭いメッセージが込められていました。
ファンタジー文学や映像作品に造詣が深い方たちや、ロールプレイング・ゲームが好きな皆さんは是非みて下さい。
みんなのレビュー
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